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〔インタビュー〕NFT、規制と育成の方向性示す=自民党検討PT座長の平衆院議員

2022年02月10日 07時23分

時事時事

 暗号資産(仮想通貨)の基盤技術ブロックチェーン(分散型台帳)を用いたデジタル資産の一種「NFT(非代替性トークン)」に関連したビジネスが、世界的に急速な広がりを見せている。自民党がデジタル社会推進本部内に立ち上げた「NFT検討プロジェクトチーム(PT)」で座長を務める平将明衆議院議員は、時事通信社の取材に応じ、日本における関連ビジネスの環境整備の後れに懸念を示し、「成長力強化のためにもNFTビジネスの規制と育成の方向性を明確に打ち出したい」と話した。

 ―PT座長として。

 NFTは日本に非常に大きな可能性をもたらすものだ。決済に使われる暗号資産や、基盤技術のブロックチェーンも含めて、システム全体を見渡した環境整備を急ぐ必要がある。技術革新や金融関連法など、この領域に詳しいメンバーが当PTに参加しており、SNSを通じて党外の専門家からも助言や協力を得ている。議論を深め、国の成長戦略に盛り込まれるよう目指したい。

 ―NFTの可能性について。

 日本にはサブカルチャーやポップカルチャーを中心に、豊富なコンテンツがある。著名な米大手IT企業の経営者も、日本の人気SFアニメの大ファンだという話だ。原画がNFT市場に出品されれば、高値落札が見込め、コンテンツの価値を最大化する手段になる。結果として日本のGDP成長も期待できるだろう。

 岸田政権が提唱する「成長と分配の好循環」の文脈でも、NFTは意義がある。ブロックチェーン技術では、NFT作品が転売されるたびに一定の手数料が作者に分配される仕組みを作ることが可能だからだ。

 今後は日本も、話題のデジタル技術「メタバース」なども視野に、分散型の「Web3.0」社会へと移行するのは間違いない。そうした潮流への対応を急ぐ必要がある。失敗すれば再び失われた10年になる。とはいえ現状は問題が山積している。

 ◇税制に課題、技術流出を懸念

 ―具体的には。

 たとえば暗号資産をめぐる税制だ。海外のブロックチェーンのスタートアップ企業は一般に「ガバナンストークン」と呼ばれる暗号資産を発行し、手元に置くことで運用や開発の方針を決めることができる。しかし、日本では発行したトークンが資金化されなくても時価評価され課税される。これでは起業できないと、優れた技術者やスタートアップ企業が、続々日本を離れ、シンガポールをはじめ海外へ流出している。早く「止血処置」をしなければ大変なことになる。

 流通市場の整備も必要だ。今は有能なクリエーターや知的財産権者が海外NFT市場に流れてしまっている。アート作品や人が集まる拠点整備が大事だ。

 さらに縦割り規制にも横串を通したい。新しいイノベーションに対し柔軟な対応が可能な英米法の国々と違い、大陸法の日本は古い法律の解釈を当てはめようとする。だからこそ、政治家は先回りして法規制をデザインする必要がある。

 ―目指すのはNFTの規制か育成か。

 PT座長を受諾した際、ツイッターで「規制のデザインを検討していく」と発言し、炎上しかけた。規制というものは単に緩和すればいいというだけではなく、成長のためのデザインをしっかり描かなければならない、というのが真意だ。成長力強化のためにもNFTビジネスの規制と育成の方向性を明確に打ち出したい。

 ―今後のPTの活動は。

 デジタル社会推進本部の承認を経て、例年5月ごろに発表される党の成長戦略への盛り込みを目指す。政府の成長戦略や骨太方針にPTの意見が反映され、税制についても年末の党税調で議論されるところまで持っていければと思う。

 ―党内の空気は。

 一段手前の「Web2.0」レベルのデジタル化が議論の中心で、正直なところNFTへの関心は高くない。暗号資産取引所マウントゴックスの盗難事件や、ICO詐欺などによる負のイメージも根強い。前途は決して楽ではないが、必要性を理解してくれる議員もいる。着実に支持を広げていきたい。(了)

 

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