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〔円債投資ガイド〕LIBOR廃止の今後の論点=ニッセイ基礎研・福本氏(5日)

2021年02月05日 06時58分

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 福本勇樹・ニッセイ基礎研究所主任研究員=2021年1月25日に、LIBORを参照するデリバティブ取引に関するISDAのプロトコルが発効した。発効時点で80の国と地域で12,000以上の企業がプロトコルを遵守することになる。発効後もプロトコルに批准することができるため、今後も遵守する企業数は順次増えていくことになるだろう。

 プロトコルの発効により、新規でISDA Definitions(定義集)に基づいてLIBORに関連する取引を行う場合、ISDAの公表するフォールバックが契約に組み込まれることになる。また、取引当事者の双方がプロトコルを遵守していれば、既存取引についてもフォールバックが適用される。LIBORの公表主体や規制当局が公表停止(公表停止トリガー)や公表停止の予定(公表停止前トリガー)を発表するなどすれば、LIBORから別の金利指標に移行することになる。

 次の注目点は、公表停止トリガーや公表停止前トリガーがいつ発動されるのかに移るであろう。特に重要なのが、米ドルとそれ以外の通貨のLIBORでトリガーが発動される時期が同じになるのか、別々になるのかという論点である。

 これまで、2020年11月18日に、ICEは英ポンド、ユーロ、スイスフラン、日本円のLIBORに関して、2021年12月末の公表停止の意向について協議を始めるとしていた。さらに、2020年11月30日に、ICEが米ドルLIBORの運営に関して、1週間物と2カ月物については2021年12月末、相対的に取引額の大きいオーバーナイト物、1カ月物、3カ月物、6カ月物と12カ月物については2023年6月末に公表停止する案を提示した。

 これらの状況から、主要な米ドルLIBORの公表停止時期が他の通貨よりも後ろ倒しになると、それに伴って、米ドルLIBORのトリガー発動時期が米ドル以外の通貨と異なる可能性が出てくる。仮に、米ドルLIBORのみトリガー発動時期が後ろ倒しになる場合、外国債券のヘッジ手段でもある通貨スワップのような異なる通貨間でキャッシュフローを交換するようなデリバティブ取引において、片方の通貨のみにトリガーが発動されて、片方のキャッシュフローのみが別の金利指標に移行することになるかもしれない。その場合、取引当事者間で決済等のオペレーションに混乱が生じることが懸念される。そうした事情もあってか、2020年12月4日のISDAのウェビナーで、LIBOR間で公表停止時期が異なったとしても、すべての通貨において同時にトリガーを発動することがあり得るとFCAが言及していた。

 米ドルLIBORのみトリガー発動を延期させる判断は、通貨スワップ市場を中心に金融市場に大きな影響をもたらすものと考えられる。米ドルLIBORの公表時期をずらしても、トリガー発動時期を遅らせない判断が、金融市場の安定を考える上で、より良い選択になるものと思われる。(了)

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〔円債投資ガイド〕について
証券会社や運用会社などに所属する専門家による日本の債券市場を取り巻く環境や当面の市場見通しを解説する記事です。米国など海外の金融政策や政治問題、日銀の政策運営方針など債券市場に影響を与える要因を多角的に採り上げています。毎日配信します。

 

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