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英、太平洋に重心移す=EU離脱からTPPへ

2021年02月01日 17時35分

環太平洋連携協定(TPP)参加国の旗の前で、参加申請の文書を手にするトラス英国際貿易相[英政府提供]環太平洋連携協定(TPP)参加国の旗の前で、参加申請の文書を手にするトラス英国際貿易相[英政府提供]

【ロンドン時事】英国が環太平洋連携協定(TPP)への参加を正式に申請する。昨年1月末の欧州連合(EU)離脱から丸1年。英政府は欧州からインド太平洋へと経済・外交の重心を移す姿勢を明確にした。

 「英国は太平洋のプレーヤーとなる用意ができている」。トラス国際貿易相は2月1日付のデーリー・テレグラフ紙への寄稿でこう強調した。ジョンソン政権にとっての悲願だったEU離脱を成し遂げ、昨年末には激変緩和の「移行期間」も終了。名実ともに自由を手にした後の一手がTPP参加申請だった。

 英政府は布石も打ってきた。昨年末までに日本やカナダ、メキシコ、ベトナムなどTPP参加国と優先的に2国間貿易協定を締結。11カ国の閣僚級とオンライン会合を開くなど、TPP参加に意欲的な韓国などと比べても積極的な姿勢が際立っていた。

 英国のインド太平洋重視は貿易だけではない。今年議長国を務める先進7カ国(G7)のサミットにはインドと韓国、オーストラリアの3カ国を招待。ジョンソン首相周辺は記者団に「民主的な価値観を共有するインド太平洋の重要な国として選んだ」と説明し、外交でもこの地域への関与を強めたい考えだ。

 背景には、高い成長力の取り込みなどの経済的な事情に加え、ロシアや中国を封じ込める狙いがある。英米貿易協議が難航する中、米国がTPP復帰を優先するとの読みもある。そこには、EU離脱後に国際的存在感を高めたいという大国意識が見え隠れする。

 しかし、英王立国際問題研究所(チャタムハウス)のロビン・ニブレット所長は「英国はミニチュアの大国として生まれ変わるのではなく、世界的課題を解決する仲介者となるべきだ」と指摘。日本や豪州との関係強化の必要性を訴えつつ、気候変動や景気回復などの課題で「英国が最も緊密に連携すべきはEUだ」とくぎを刺した。(了)

 

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