欧州委、ユーロの国際的役割強化へ戦略=ドル依存脱却
2021年01月20日 10時52分
【ブリュッセル時事】欧州連合(EU)欧州委員会は19日、通貨ユーロの国際的役割やEUの金融インフラ強化に向けた新たな戦略を公表した。ドル依存から脱却を図り、自律的なEUの外交、通商政策の確立にもつなげる狙いだ。
ドムブロフスキス上級副委員長は声明で、「より強靱(きょうじん)な経済を形作り、よそからの不公平で違法な行為に対してEUが自らを守れるようにする必要がある」と強調した。
国際的役割の強化では、第三国へのユーロ利用を働きかけ、ユーロ建て商品や指標の開発を支援。水素などのエネルギー分野での基準通貨としての地位も促進する。また、EU市場を「グリーン・ファイナンス」のハブ(拠点)として発展させるため、ユーロ建ての環境債の活用も進める。
特に新型コロナウイルス危機からの経済再建策の財源調達のため欧州委が発行する7500億ユーロ(約95兆円)のユーロ債発行は、「今後数年間にわたってEUの資本市場に多大な流動性と深さを加え、投資家にとってユーロをより魅力的なものにする」(欧州委)と指摘。7500億ユーロの30%は環境債で調達する方針だ。
さらにEUの排出量取引制度(ETS)の機能強化の可能性も検討するほか、欧州中央銀行(ECB)によるデジタル通貨「デジタルユーロ」導入をめぐる取り組みにも協力を続ける。
一方、イラン核合意から離脱したトランプ米政権が2018年に対イラン制裁を再発動した際の教訓を踏まえた対策も検討する。当時、制裁対象となってドル建て決済ができなくなることを恐れた多くの欧州企業がイラン貿易からの撤退を余儀なくされたが、こうした第三国の制裁影響を回避し決済などの金融サービスを維持するための手段構築を目指す。(了)