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広末ビットバンク社長:暗号資産、投資対象としての認知度が向上

2020年12月08日 08時11分

AFP時事
AFP時事

 暗号資産(仮想通貨)交換業者ビットバンク(東京都)社長で、「日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)」の会長を務める広末紀之氏は、7日までに時事通信社のインタビューに応じた。騰勢を強める暗号資産市場について、欧米の機関投資家や、大手決済業者などの市場参入が相次いでいる点を挙げ、「投資対象としての認知度が上がってきた」と指摘した。

 ―代表的なビットコインが約3年ぶりに200万円台を回復するなど、暗号資産の騰勢が目立っている。

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けた財政支出拡大や金融緩和の結果、金融市場には過剰流動性が発生し、その一部が暗号資産にも流れ込んでいる。法定通貨の大量発行による価値低下が招くインフレへの備えとして、金(ゴールド)とともに「デジタル・ゴールド」と呼ばれるビットコインをはじめとした暗号資産が買われている。

 加えて、2020年は大手ヘッジファンドや機関投資家が暗号資産に投資する動きが目立った。米ソフトウエア会社マイクロストラテジーも4億2500万ドル(約450億円)と、多額の暗号資産を購入した。さらに、米電子決済大手のペイパルが、アプリ上で暗号資産の売買や、約2600万の加盟店での支払いを可能にした。

 これまで「投機対象一種」に過ぎなかったものが、投資や決済実務に使われ始めた意味は大きい。

 ―巨額流出事件以来続いていた国内暗号資産ビジネスの沈滞ムードは払拭(ふっしょく)されたか。

 本格的とは言えないが、立ち直りつつある。5月の改正金融商品取引法の施行で、新サービスにも取り組めるようになった。ただ、日本国内で暗号資産を資産運用の対象として注目しているのは、まだ一部の個人だけだ。資産運用を本業とする機関投資家などに本格的に認識されるのは来年以降だろう。

 ―来年の暗号資産市況は。

 私見だが、世界経済が新型コロナの打撃から立ち直るには時間を要するだろう。少なくとも来年いっぱい中央銀行の金融緩和は続き、暗号資産市場にとって有利な環境が続くとみている。

 相場上昇をけん引しているビットコインは、発行上限があらかじめ決まっており、希少性が高く、可搬性や実用性の点でも優れている。現在の時価総額は約40兆円と、金の3%程度に過ぎないが、いずれ20~30%程度まで拡大してもおかしくないと思っている。

 中国のデジタル人民元をはじめとする、中央銀行デジタル通貨(CBDC)導入の取り組みや、社会のデジタル化も暗号資産には追い風になる。

 ◇DX、本格的な社会実装されるまでには時間

 ―米フェイスブックが主導してきた暗号資産プロジェクト「リブラ」が、米ドルを裏付け資産とする「ディエム」として、再スタートを切った。

 世界通貨を目指し批判を浴びたリブラに比べると、スケールダウンした印象は否めない。それでもフェイスブックの利用者数は、インドと中国の全人口を合わせた規模があり、これほど多くの人々が、国家ではなく民間団体によって発行される通貨を使うようになる意味は大きい。

 ディエムは日本の暗号資産業界にもポジティブな話だ。法律上の位置付けには議論の余地があるが、暗号資産技術を基礎としている以上、われわれ暗号資産事業者が扱うべきだろう。一般的な資金移動業者などが扱うには技術的なハードルが高すぎる。

 ―金融などの分野でデジタル技術を実社会に導入するデジタル・トランスフォーメーション(DX)の機運が高まってきた。

 金融の既存システムには利害関係者が多く、技術的には置き換えが可能でも、実際にはそう簡単には進まない。ブロックチェーン(分散型台帳)導入の議論や実証実験は活発に行われているが、本格的な社会実装には時間を要するだろう。

 暗号資産やその関連技術を浸透させるには、法規制などの環境整備が不可欠だ。セキュリティー・トークンのように、現行の金融法制下では取引コストの低さや効率の高さなどのメリットを生かせていない例もある。

 業界団体JCBAの会長として、来年は環境整備に向けて関係当局などへの働きかけを活発化させたい。税制面でも、暗号資産とその他金融商品のデリバティブ取引の申告分離課税や、所得金額からの繰り越し控除、年間20万円以内の少額非課税の実現を目指す。

 ―ビットバンクの取り組みは。

 まずは現物取引の国内市場シェアでナンバーワンを目指す。今年は新しい銘柄の追加や、投資家が暗号資産交換業者に手持ちの資産を貸して増やす「レンディング」サービスなど、現物取引サービスの拡充を図った。特にレンディングは、暗号資産ビジネスが金融として発展する上での基礎となるサービスであり、利用拡大に期待している。(了)

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