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〔円債投資ガイド〕ドルLIBOR公表停止の延期案=ニッセイ基礎研・福本氏(4日)

2020年12月04日 05時35分

 福本勇樹・ニッセイ基礎研究所主任研究員=2020年11月30日に、ICE(インターコンチネンタル取引所)が米ドルLIBORの運営に関して、1週間物と2カ月物については2021年12月末、1カ月物、3カ月物、6カ月物と12カ月物については2023年6月末に公表停止する案を提示した。

 2020年11月18日にICEは英ポンド、ユーロ、スイスフラン、円のLIBORに関して、2021年12月末の公表停止の意向について協議を始めるとしていた。この文書において米ドルLIBORについて言及がなかったことから廃止を延期するのではないかとする観測があった。

 まだ公表停止の時期が確定したわけではないものの、米ドルLIBORの廃止時期に関する市場期待を表していると指摘されていた「米ドル3カ月LIBORを支払う側が米ドル6カ月LIBORと交換する際に追加的に支払う2年物の固定金利(テナー・ベーシス・スワップ)」は、ICEによる公表停止の延長案を受けて6.3bpから4.9bpに縮小した。デリバティブ市場は米ドルLIBOR廃止の延期を織り込んだとみられる。

 米金融当局はICEによる公表停止案の提示と同時に、2021年12月末までに締結される新規取引については(1)LIBOR以外の金利指標を使用する、(2)LIBOR廃止後の取り扱いを明確に定義した契約文言(フォールバック)を含むべきとする声明を出している。廃止時期が延期されるにしても、米ドルLIBORに関連した取引を新規で取り組むことは推奨されていない。

 よって、今回の米ドルLIBORの公表廃止の延期に関する議論は、既存契約の取り扱いが中心になる。具体的には、廃止までの期間が伸びたことで、既に保有しているLIBORにリンクする金融商品を解約して、LIBORとは別の金利指標にリンクする金融商品を購入するような取引の必要性が減ることになる。それに起因して、LIBOR廃止に伴う米ドルLIBORに対する上昇圧力とSOFRなどの移行の候補となる金利指標への低下圧力はいくらか緩和されるとみられる。そのため、これらの金利間のスプレッドは米ドルLIBORの廃止に向けて徐々に縮小していく可能性が高いだろう。

 また、米ドルLIBORの公表停止の延期に関する議論を受けても、米ドルLIBORとSOFR間のスプレッドの変動幅は限定的であった。ISDA(国際スワップデリバティブズ協会)は、LIBOR廃止に伴う新金利指標への移行の際に、過去5年間の中央値の値を移行後の金利指標に足し上げることを支持している。廃止に向けて中央値を探る動きが中心となっており、スプレッドに大きな変動は生じにくいものと考えられる。(了)

 

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