〔上海外為〕人民元は7カ月半ぶりの安値近辺=米中対立リスクを警戒(25日)
2020年05月25日 15時52分
【上海ロイター時事】25日の上海外国為替市場の人民元は対米ドルで下落し、約7カ月半ぶり安値近辺で推移している。米中対立リスクが警戒される中、中国人民銀行(中央銀行)はこの日、人民元の対ドル基準値(中間値)を2008年以来の元安水準に設定した。
先週開幕した全国人民代表大会(全人代、国会に相当)では、香港に国家安全法の制定を義務付ける法案が提出された。オブライエン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は24日、中国のこうした動きは米国の制裁につながる可能性があるほか、香港の金融センターとしての地位を脅かすことになると警告。両国の関係が悪化するとの懸念が広がっている。
中国建設銀行は「中国と米国の現在の不安定な状況が短期的に変わる可能性は低い。そのため、中・長期的に人民元は一段と下振れ圧力に直面する」と指摘した。その上で、全人代開催中、人民元は狭いレンジ内で推移するとの見方を示した。
中国人民銀行は取引開始前にこの日の対ドル基準値(中間値)を1ドル=7.1209元に設定、前営業日の基準値(7.0939元)に比べて、270ポイント(0.38%)の元安水準で、2008年2月28日以来の元安水準となった。
一部の市場参加者は、基準値は予想通りの水準だったとし、人民元相場をある程度圧迫したと指摘した。
スポット市場の元相場は7.1335元で取引を開始し、中盤時点では7.1383元と、前営業日終値比73ポイントの元安水準。一時、7.1420元と、22日に付けた19年10月9日以来の安値(7.1446元)に迫った。
UBSの中国担当首席エコノミストのワン・タオ氏は、米中貿易交渉の第1段階合意が引き続き履行されていることを踏まえると、年内人民元は1ドル=7元近辺で推移すると予想。市場のセンチメントが人民元相場に影響を及ぼす可能性はあるものの、新型コロナウイルスの世界的流行を受けた渡航規制が家計のドル需要を抑え、中国の経常黒字を支えているとし、人民元が大幅に下落する可能性は低いと説明した。
その上で、米中間の利回り格差拡大を背景に中国の債券市場に海外から資金が流入し、人民元を下支えしていると指摘した。
オフショア人民元は中盤時点で7.1528元。(了)