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デジタル元の実証実験始まる=世界に先行、各国も注視

2020年10月12日 20時59分

 【北京時事】中国南部・広東省深セン市で12日、市民5万人が参加する「デジタル人民元」の大規模な実証実験が始まった。中国は中央銀行が発行するデジタル通貨の実用化に向けた取り組みで世界に先行しており、研究を急ぐ日米欧など各国も動向を注視している。

 中国人民銀行(中銀)は2014年にデジタル元の研究に着手。既に同市や江蘇省蘇州市などで限定的な実験を行っているが、今回は対象を初めて一般市民にまで拡大した。22年の北京冬季五輪を視野に導入を目指しているとされる。

 国営新華社通信などによると、約191万人の応募者から抽選で選ばれた市民は、デジタル元用のウォレット(財布)アプリをスマートフォンに入れた上で、200元(約3200円)分の通貨を受け取った。デジタル元は12日夕から約1週間、深セン市羅湖区内のスーパーや飲食店、ガソリンスタンドなど約3400店舗で使用可能。対象となる店舗では、デジタル元が使えることを示すプレートが表示されるなどした。

 今回の実験では、デジタル元のウォレット間での受け渡しや銀行口座への入金ができないほか、200元を超える部分は個人口座からの支払いとなる。人民銀は、最終的には現金と同様のやりとりが可能になると説明している。

 デジタル通貨をめぐっては、日銀が来年度早期に実証実験を始めると発表したほか、欧州中央銀行(ECB)も来年半ばにかけて通貨発行の可否を判断する方針を示すなど、世界的に関心が高まっている。14日に開催される20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議でもデジタル通貨が主要議題となる。

 一方、民間では米フェイスブックが暗号資産(仮想通貨)「リブラ」の発行を目指しているが、各国・地域当局の警戒感が根強く、計画は難航している。

 ◇デジタル人民元

 中国の中央銀行に当たる中国人民銀行が、主要国・地域の中銀として初めて発行を準備しているデジタル通貨。普及すれば、元を利用する国や企業などが増え、中国政府が進める巨大経済圏構想「一帯一路」を後押しする可能性もある。

 デジタル元は現金をデータ化した通貨そのもので、スマートフォンにウォレット(財布)と呼ばれる専用アプリがあれば、現金と同様に買い物などで使える。銀行口座が要らず、暗号資産(仮想通貨)「ビットコイン」のように価格が乱高下することもない。ただ、資金の流れの把握が容易になるため、政府当局による「監視経済」が進むとの懸念もある。(了)

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