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21年度予算案、衆院選へ「菅カラー」重視=苦境克服見えず

<2020年12月25日>

2020/12/21 20:36

2021年度の予算案構成2021年度の予算案構成

 菅義偉首相が就任後初めて組んだ2021年度予算案は過去最大規模に膨らみ、新型コロナウイルス感染対策に加えて看板政策に掲げる地球温暖化防止やデジタル化に力点を置く内容となった。次期衆院選をにらんだものだが、コロナ感染は拡大に歯止めがかからず、内閣支持率は下落。政権への逆風を克服できるか見えていないのが現状だ。

 「感染拡大防止に万全の対応を行うとともに、次の成長の原動力となる『グリーン社会』の実現、デジタル化を着実に推進する予算だ」。加藤勝信官房長官は21日の記者会見で、予算編成に込めた意図についてこう説明した。

 50年までの温室効果ガス排出量実質ゼロや行政・社会のデジタル化推進は、首相が先月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)などの際に「国際公約」として表明した目標でもある。

 21年度予算案では、二酸化炭素削減に野心的な取り組みをした企業を対象に3年間で1兆円規模の低利融資制度を創設。デジタル化関連は府省庁共通のシステム整備に計2986億円を確保するなどした。「菅カラー」の政策を着実に進め、「国民のために働く内閣」として実績を示すことで政権の安定を図りたいとの思惑がにじむ。

 来秋までに行われる衆院選を見据えた与党の歳出圧力にも配慮した。コロナ対策用の予備費を5兆円積み、国民生活や経済を最優先にする姿勢を示した。首相は21日のTBS番組で「コロナ対策で結果を出すことが大事だ。やれることは全てやるという意識の中で先頭に立っていきたい」と強調した。

 自民党の二階俊博幹事長らが旗を振る国土強靱(きょうじん)化に関しても、前年度比約3000億円増の3兆7591億円の関連費を計上。自民党中堅は「満額回答だ」と笑みをこぼした。

繰り上げ閣議に臨む菅義偉首相(中央)ら=21日午前、首相官邸繰り上げ閣議に臨む菅義偉首相(中央)ら=21日午前、首相官邸

 一方、各種世論調査で内閣支持率の急落は顕著となっている。コロナ感染が過去最悪の水準にまで広がったことが要因とみられ、取り急ぎこの面で「結果」を出すことが求められている段階だ。

 国の観光支援事業「GoToトラベル」は28日から来月11日まで全国で一時停止となる。その後に再開するかどうかが一つの焦点だが、感染収束へ妙案は見えないまま。ある政府高官は「支持率回復はコロナ次第だ」と言葉少なに語った。(了)

 

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