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東証、理想追求で「本末転倒」=障害時の備え不十分―調査報告書
<2020年12月4日>
記者会見する、東証システム障害に関する調査委員会の久保利英明委員長(中央)ら=30日、東京都中央区
東証のシステム障害に関し、親会社の日本取引所グループ(JPX)<8697>の独立社外取締役による調査委員会は30日、報告書を公表した。報告書は障害発生時の備えが不十分だったと指摘。東証が株式の売買を停止させない理想を追求しすぎた結果、取引を円滑に再開できなかったのは「本末転倒だ」と断じた。
報告書は、売買停止の判断や売買再開の手続きなどについて、東証が事前に十分な検討をしていれば、「(今回の)障害による影響をより限定されたものにできた」と分析。売買の終日停止に陥ったことを踏まえ、対応手順の策定など「あらゆる面から必要十分な措置を講じる」よう求めた。
海外の主要取引所では、事故の際には受け付けた注文をいったん白紙にして取引を再開する「クリーンスタート」が常識となっている。しかし、導入には証券会社などに多額のシステム投資が必要で、二の足を踏む市場関係者も多い。
調査委の委員長を務めた久保利英明弁護士は30日の記者会見で、「世界と肩を並べて戦っていく市場になるには、証券会社や東証も単に利益だけを考えるわけにいかない」と述べ、関係者に意識改革を促した。
報告書は想定外のトラブルが起こり得るとの前提に立ち、「思考停止に陥らないことが肝要だ」と強調。株式市場を運営する東証とJPXは再発防止や障害時の事態深刻化の回避に向け十分な体制を構築できるか、実行力が問われる。(了)