コロナに揺れる株主総会

<2020年4月28日>

2020/04/24 13:56

〔証券情報〕コロナに揺れる株主総会=2段階開催、バーチャル型も

富士ソフトの株主総会で、インターネット上で議決権を行使する社員株主=13日、東京都千代田区
富士ソフトの株主総会で、インターネット上で議決権を行使する社員株主=13日、東京都千代田区

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、決算発表を延期する上場企業が相次いでいる。これに伴い、金融庁と関連団体は、3月期決算の上場企業が6月に集中開催する株主総会について、延期や2段階方式の実施を認める見解を表明した。感染防止のため、インターネットを活用したバーチャル型の総会も増える見通しで、企業は新たな対応に迫られている。

 「海外拠点のデータが入ってこない」「在宅勤務で作業が進まない」。企業の決算を取りまとめる現場からは、こうした声が上がる。東京証券取引所によると、4月2日以降、決算発表予定日が延期または未定となった企業は225社。監査法人による決算の監査業務も、残高や在庫の確認などが進まず、「通常より3割程度の遅れが生じている」(日本公認会計士協会)のが実情だ。

 こうした状況を踏まえ、東証や金融当局などは従来の制度を弾力的に運用する方針を表明。東証は2月、「期末日から45日以内」とされる決算の開示期日にとらわれず、確定時点での公表を容認すると発表。コロナの影響で一時的に業績が悪化した企業について、株式の上場廃止基準を緩和するなどの特例措置も講じた。

 金融庁は3月期決算企業の有価証券報告書の提出期限を6月末から9月末に一律延期。同庁や東証、経団連、日本公認会計士協会などで設置した連絡協議会は15日、株主総会について、延期のほか、決算などの承認を後日開く「継続会」で行う2段階方式が可能との見解を明らかにしている。

 その後、東芝は株主総会の開催を7月以降に延期すると発表。他にも延期や2段階開催を模索する動きが続くとみられる。

 感染終息が見通せない中、安全確保策として注目されるのが、株主がオンライン上で参加・出席できるバーチャル型の総会だ。

 会社法上、株主総会を開くには「場所」の確保が必要とされ、企業は例年、ホテルなどの広い部屋を借りて開いてきた。しかし、コロナ騒動を受けて、経済産業省は、株主が会場に出席していなくても問題ないとの見解を提示。株主に事前の議決権行使を求めたり、会議室などを会場にした上で、オンラインで株主の参加を求めたりする方法などを後押しする姿勢を明らかにした。

 ソフトウエア開発のアステリアなどが22日開いたバーチャル株主総会に関するオンラインセミナーには約200人の企業関係者らが登録。「6月総会に間に合うか」「40万人株主がいても実施できるか」などの質問が寄せられた。

 セミナーでは、アステリアとともにバーチャル型総会のサービスを提供するブイキューブの間下直晃社長が登壇。既に4、50社から問い合わせが寄せられていることを明らかにし、6月の集中日にバーチャル型総会を実施する場合は早めの対応が必要と呼び掛けた。また、総会での失敗は許されないとして、予備回線の準備や高齢の投資家の問い合わせに対応するコンタクトセンターの設置が必要などと実務上の留意点も示された。

 バーチャル型総会には、株主が視聴や意見表明などができる「参加型」と議決権行使も可能な「出席型」がある。出席型については、経産省が2月に指針を公表。3月に開かれた富士ソフトの総会が国内初のケースとみられ、実施例は少ない。

 ただ、株主総会に詳しい沢口実弁護士は「長い目で見れば、いずれバーチャルだけの総会が主流になる」と述べており、株主総会の在り方はコロナ後も変化していくと予想。大和総研の鈴木裕主任研究員も、遠方に住む株主の利便性を高めるだけでなく、感染症対策としても「(バーチャル型総会の)議論が加速してほしい」と強調した。

 株主総会をめぐっては、機関投資家の多くが事前に議決権行使を済ませ、出席者の多くは一般の個人株主というケースが多いのが実態。活発な質疑応答が行われているとは言い難いとの指摘もある。ある投資会社の幹部は、コロナ後を念頭に「企業は投資家層に応じた対話の拡充や質疑を充実させる工夫をしていく必要がある」と話している。(了)