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〔マーケット見通し〕米雇用回復を起点に世界経済が拡大-日興アセット・神山氏

2021年07月14日 10時00分

神山直樹チーフ・ストラテジスト

 日興アセットマネジメントは、四半期ごとにまとめる経済見通し「グローバル・フォーサイト」の2021年夏号を発表した。神山直樹チーフ・ストラテジストは、世界経済の現状について「米国の雇用が回復し、消費が伸び、輸入が増える中で、日本や中国、ドイツなど輸出が拡大している」と概観した上で、株価については「利益や売上高の増加を伴って上昇しており、バブルとは言えない。今後も、業績拡大を確認しながら、緩やかに上昇するだろう」と分析した。

◆回復する米国経済

 米国雇用者数は、コロナショックで2200万人失われたものの、現在は残り500万~600万人の水準まで回復してきた。製造業に続いて非製造業にも回復は広がっており、今年12月には元の水準に戻ると予想している。

米国の小売売上高は、コロナショック前の水準を大幅に超えてきた。これはコロナ対策で支給された個人向け給付金が使われているためだ。まだ、貯蓄されている部分も多いので、2~3年のスパンで個人消費は伸びていくだろう。

 その結果、米国の輸入はコロナショック前を超える水準になり、日本やドイツ、中国などの輸出の伸びにつながっている。米国の財政支出により需要が拡大し、輸出国に恩恵が行き渡っている状況だ。

 今後のリスク要因としては、①米国の貯蓄率が下がらず、蓄えられた給付金が消費に回らない ②変異株の流行などで重症者が増加する ③米国の増税が、市場予想より早い段階で実施される-が考えられる。

 米国の消費者物価指数(CPI)が上昇している。ただ、コロナショックからの回復局面にあるため、一時的に高い値になっている可能性がある。先行きについて、「インフレ率が2%を超えて安定する」かどうか、まだ明白ではないと見ている。

◆これからの資産運用

 今後、経済の回復に伴って、金利が「正常化」していくことが予想される。ただ、それだからと言って投資戦略を変更する必要はないと考えている。各人の投資目的に合わせて、「リスクを抑制して元本を保全する」ことが目的であれば債券ファンドが良いだろうし、「世界経済の成長を享受しよう」と思えば株式ファンドが良いだろう。

 株式は、インフレに対して中立だ。企業に競争力があり、原料価格の上昇分を販売価格に転換できれば、売上高や利益はインフレの分だけ伸び、株価は上昇すると考えられる。

 一方、債券だが、金利が上昇すれば、債券価格は低下する。ただ、緩やかな金利上昇であれば、評価価格の低下も緩やかだ。また、償還まで保有すれば元本は確保される。さらに、償還された債券の資金で、最新の債券に買い替えれば、金利上昇に連動してクーポン(金利)収入は増加する。一時的な価格のブレはあっても、長期的に見れば、元本を保全するという投資目的を達成することが可能だろう。(了)

 

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