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気候対策から「GX」へ=カーボン・ニュートラルの加速で-日本総研、三井住友DS

2021年07月07日 12時05分

新美陽大氏

 2020年は、気候変動対策がグリーン・トランスフォーメーション(GX)にパラダイム・シフトした年だった-。日本総研・創発戦略センターの新美陽大スペシャリストはこう振り返る。各国の首脳が、相次いで温室効果ガスの排出を実質ゼロにするカーボン・ニュートラルの実行を表明、一段と高い目標を掲げたためだ。「目標達成にはイノベーション(技術革新)が不可欠で、GXは新たな成長分野になる」(三井住友DSアセットマネジメントの村井利行プロダクトスペシャリスト)と注目が高まっている。両氏の話をまとめた。

◆各国が参加表明

-各国の動向は。

グリーン・トランスフォーメーションの拡大(クリックで表示)

 新美氏 2019年12月に欧州委員会が、脱炭素と経済の両立を図る成長戦略「欧州グリーン・ディール」を公表した。これを皮切りに、2020年は、英国、中国、日本など主要国がカーボン・ニュートラルの目標を公表した。12月には米国で環境を重視するバイデン民主党政権が誕生、21年4月には米国主催で気候変動サミットが開催された。

◆欧州主導で進むルールづくり

-実現に向けた動きは。

(出所、経済産業省「2050年カーボン・ニュートラルに伴うグリーン成長戦略〈大臣説明資料〉」より)(出所、経済産業省「2050年カーボン・ニュートラルに伴うグリーン成長戦略〈大臣説明資料〉」より)(クリックで表示)

 新美氏 カーボン・ニュートラルは、「規制的制度」と「促進的制度」が両輪になって、達成を目指していく。規制面では、欧州がルール作成の主導権を握り、例えば、「欧州タクソノミー(分類システム)」を設けて持続可能な経済活動を定義したり、「サステナブル・ファイナンス開示規則(SFDR)」を作成して企業や金融機関に情報公開を求めたりしている。

 

◆注力分野の見定めが重要に

-日本の動向は。

村井利行氏

 新美氏 促進面について、日本の状況を見ると、政府は昨年12月に「グリーン成長戦略」を発表し、カーボン・ニュートラルの達成に必要な14の成長分野が示された。6月には詳細版が公表されている。また、2兆円の「グリーンイノベーション基金」を造成し、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)を通じて、18のプロジェクトに投入する方針だ。「日本としてどの分野に注力して、世界をリードする技術に育てていくのか」を、政府だけでなく、民間も見定めて、資金を投入していくことが重要になる。

◆イノベーションで社会的課題を解決

-GXとは何か。

グリーン・トランスフォーメーション”GX”とは(クリックで表示)

 村井氏 GXとは、最先端技術を活用して、温室効果ガスの排出量の増加などの社会的課題を解決し、持続可能な社会を実現することだ。

 「環境」は以前から重要なテーマだったが、ここに来て、イノベーション(技術革新)によるパラダイム・シフトを起こさないと、目標が達成できない状況になっている。18世紀の「農業革命」、19世紀の「産業革命」、20世紀の「IT革命」に続き、21世紀は「エネルギー・環境革命」が第4の革命になるだろう。

◆拡大する環境ビジネス

-注目分野は

 村井氏 これまでと違うプレーヤーが伸びることで、新たな成長分野が生まれていくだろう。環境関連ビジネスの市場規模は、2050年には2000兆円を超える規模になるとする予想もある。

 注目分野は三つある。一つ目は「エネルギーのクリーン化」だ。太陽光や風力、水素を活用することで、化石燃料に頼らない発電へと転換していく。海外では洋上風力発電の大型化が進んでいる。また、電気を水素に変えて、貯蔵したり、運搬したりする技術も注目される。

 二つ目は「脱炭素技術の進化」だ。例えば、ガソリン車を電気自動車や燃料電池車に置き換える。その際、バッテリーなどの部品メーカーが重要なプレーヤーになるだろう。

 三つ目は「限られた資源の活用」だ。海洋プラスチックごみによる環境破壊は深刻な社会的課題であり、新しい循環型社会を作ることが重要だ。生分解性プラスチックや、植物由来のバイオマスプラスチックなどの技術開発が進んでいる。(了)

 

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