「モーニングスター・アワード2025」の授賞式を開催=チャン・ユーツン社長「長期投資の視点を、高い透明性を持って提供」
2025年03月13日 07時00分

独立系大手投資調査会社のモーニングスターは、「モーニングスター・アワード2025」の授賞式を開催した。日本株式、世界株式、債券、REIT、アロケーションの5部門について、それぞれ最優秀ファンド1本と優秀ファンド2本を表彰した。運用会社アワードにはキャピタル・インターナショナル(本社東京、小泉徹也社長)が2年連続で選ばれた。
ファンド・アワードは、同社のリサーチチームが「長期にわたって投資家に貢献し、今後も競争力のあるリスク調整リターンを提供できる」と考え、投資家が分散投資を行う上でコアとなりうるファンドを選定した。
◆「アドバイザー向けツール」を提供へ=チャン・ユーツン社長

モーニングスター・ジャパンのチャン・ユーツン社長は、あいさつの中で、「当社は、グローバルなミッションである『Empowering Investor Success』の下、投資家の成功をサポートしている。これからも、長期投資の視点を、独立の第三者の立場から、高い透明性を持って提供していきたい」と述べた。
モーニングスター・ジャパンは、日本でのブランドの返還を受けて、2024年1月に発足した。昨年は「マネジャー(ファンド)・リサーチ」の発信を本格化した。今年はさらに「アドバイザー向けツール」の提供と「情報ポータルサイト」の開設を行う方針だ。
チャン・ユーツン社長は、日本のアドバイザーについて「米国と比較するとまだ未成熟で、金融商品を仲介するコミッション(売買手数料)ベースのビジネスモデルになっているところが多い。これをフィー(資産管理手数料)ベースのビジネスに切り替えていくことが必要だ」と指摘した。同社が提供する「アドバイザー向けツール」は、モーニングスターが開発したリスク許容度診断を元にポートフォリオを作成、その内容を可視化・分析し、リポートにできるという。
チャン・ユーツン社長は「こうしたサービスを提供することで、日本の投資市場を拡大し、『貯蓄から投資へ』の流れを促進することに貢献していきたい」と述べた。
◆ETFが拡大、プライベート市場が伸びる=米モーニングスターのウイング・チャン氏

米モーニングスター・リサーチ部門アジアパシフィック地域統括のウイング・チャン氏は「世界のファンド市場の動向」について講演した。
グローバルな資産運用業界は、プレーヤーの集中化が進んでおり、上位の運用会社が大きな市場シェアを占める動きになっているという。一方で、AUM(運用資産残高)は大きく拡大しており、成長を続けている。
手数料の引き下げが続いているものの、資産運用業界の収益は伸びている。その背景には、ETF(上場投信)の拡大がある。アジア地域での成長が目立つほか、米国ではアクティブETFが存在感を増している。
このほか、プライベート(非上場)アセットについては、日本でも非上場株を組み入れた公募投信が昨年、登場した。米国では、流動性が低いアセットに投資する「インターバル・ファンド」が大きく成長している。欧州では、スタートアップ企業を含む非上場株ファンドの市場が伸びている。
◆「15兆円、51%、14%」は?=元利マネジャーリサーチ部長

マネジャーリサーチ部長の元利大輔氏は、「3つの数字で読み解く、日本の投信市場のトレンド」をテーマにプレゼンテーションした。
一つ目の数字は「15兆円」だ。これは2024年の公募追加型株式投信(除くETF)の純資金流入額で、過去最高を記録した。24年12月末の純資産総額も140兆円を超え、こちらも過去最高だ。株式市場が好調なことに加えて、少額投資非課税制度(NISA)による投資拡大が後押ししている。NISAの累積買付額の政府目標は、2027年末までに56兆円だが、今1-3月期にも達成されると見ている。
二つ目は「51%」だ。これは2024年の純資金流入額に占める上位10ファンドの割合だ。全て株式に投資するファンドだ。モーニングスターは、個人投資家に長期・分散投資を提案している。分散の部分がやや置いてきぼりになっているので、今後は分散投資についてより知っていただけるように、情報発信していきたいと考えている。
三つ目は「14%」だ。これは、過去10年のパフォーマンスで、株式型のアクティブ・ファンドがインデックス・ファンドの平均を上回った割合だ。モーニングスターは世界各地で「アクティブ・パッシブ・バロメータ」という調査を行っている。カテゴリによってはアクティブ・ファンドが有利なケースもある。日本株ファンドは、海外先進国株ファンドよりも良い結果になった。ファンドマネジャーの運用能力や実績などを投資家に提供して、情報ギャップを埋めていきたいと考えている。
◆「モーニングスター・アワード2025」受賞ファンド
<日本株式部門>
最優秀ファンド「One割安日本株ファンド(年1回決算型)」(アセットマネジメントOne)
優秀ファンド「JPMジャパンマイスター」(JPモルガン・アセット・マネジメント)
優秀ファンド「ニュー配当利回り株オープン (愛称:配当物語)」(三井住友トラスト・アセットマネジメント)
<世界株式部門>
最優秀ファンド「eMAXIS Slim 先進国株式インデックス」(三菱UFJアセットマネジメント)
優秀ファンド「SBI・V・S&P500インデックス・ファンド」(SBIアセットマネジメント)
優秀ファンド「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」(三菱UFJアセットマネジメント)
<債券部門>
最優秀ファンド「NEXT FUNDS 外国債券・FTSE世界国債インデックス(除く日本・為替ヘッジなし)連動型上場投信」(野村アセットマネジメント)
優秀ファンド「NEXT FUNDS 国内債券・NOMURA-BPI総合連動型上場投信」(野村アセットマネジメント)
優秀ファンド「ピムコ・インカム・ストラテジー・ファンド<限定為替ヘッジあり>(年2回決算型)」(三菱UFJアセットマネジメント)
<REIT部門>
最優秀ファンド「フィデリティ・Jリート・アクティブ・ファンド(資産成長型)」(フィデリティ投信)
優秀ファンド「<購入・換金手数料なし>ニッセイグローバルリートインデックスファンド」(ニッセイアセットマネジメント)
優秀ファンド「Jリートアクティブファンド(1年決算型)」(三井住友トラスト・アセットマネジメント)
<アロケーション部門>
最優秀ファンド「ダイワ・ライフ・バランス30」(大和アセットマネジメント)
優秀ファンド「三井住友・DC年金バランス30(債券重点型)」(三井住友DSアセットマネジメント)
優秀ファンド「Smart-i 8資産バランス 成長型」(りそなアセットマネジメント)