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債券アクティブ運用の魅力高まる=不確実性や価格変動は投資チャンスに=PIMCOのミッタル氏

2025年02月25日 08時30分

モヒト・ミッタル氏

 債券アクティブ運用大手のPIMCO(米国カリフォルニア州)のコア戦略担当CIO(最高位投資責任者)モヒト・ミッタル氏が来日し、世界経済の展望と債券運用の現状について話した。主なポイントは以下の通り。

-債券投資の注目点は

ミッタル氏 PIMCOは1971年に米国カリフォルニア州に設立された。債券アクティブ運用のグローバルリーダーとしてさまざまな投資機会を提供してきた。日本には1997年に事務所を開設し、体制を強化してきた。

 注目点の一つ目は、ここ数年で、各国の金利が上昇したことだ。日本の投資家にも、グローバル債券がもたらす投資機会を生かしてほしいと考えている。

 二つ目は、日本においても金利が上昇し、日銀がバランスシートを縮小してきたことで、日本の債券市場はこれまで以上に魅力が増していることだ。日本の投資家が、日本の債券市場の投資妙味を生かせるように、力を入れていきたい。

 日本の個人投資家は、少額投資非課税制度(NISA)がトリガーとなって、株式への投資を始めている。これは大変に良いことだと思う。こうした中で、これから金利が上昇していくことを考えると、キャッシュに対しても、株式に対しても、インフレに対しても、歴史的な水準と比べても、債券の魅力度が増していると考えている。

 三つ目は、経済の不確実性が高まり、ボラティリティ(価格変動)が大きくなる中、債券のアクティブ運用は、パッシブ運用と比較して、バリュー(価値)を生み出すチャンスが多くなっている。さまざまなアルファ(超過収益)を生み出す機会があるので、債券では、アクティブ運用に目を向けてほしい。

-債券の投資環境は

ミッタル氏 当社は、1月に公表した短期経済展望のタイトルを「不確実性の中の、確かな投資機会」とした。米国のトランプ新政権の発足により、米国経済の不確実性が高まり、世界経済の不確実性の高まりにつながっている。

 インフレ見通しの不確実性が高まり、各国中央銀行の金融政策の動向についても不確実性が高まっている。それによって世界各国の成長見通しやインフレ見通しにバラつきが出てきている。そのことによって、債券市場では、さまざまな投資機会が生まれてきている。

 先進国のインフレ率は2%台まで低下してきている。各国中央銀行は2%程度をインフレ目標としているが、それを若干上回る水準で推移すると見ている。また、米国が打ち出す関税政策の脅威が、グローバル経済に不確実性をもたらすだろう。

 こうした中で、米国、欧州、カナダ、英国では、政策金利が(足元のインフレ率や失業率を勘案した)テーラー・ルールが示唆する中立金利を上回っており、追加利下げの余地があると見ている。何か経済にショックを与える出来事が起きると、この水準を超えてより積極的に利下げを行う可能性があり、そうなれば債券の価値はさらに高まるだろう。

-リスク要因は

ミッタル氏 まず、米国の関税政策だ。関税の詳細は不透明だが、経済成長とインフレのリスク要因を上下いずれの方向にも増幅させる可能性がある。また、米国の財政赤字については、高水準の債務が続けば、長期的にリスク要因になるだろう。さらに、米国の移民政策や規制緩和などその他の政策転換についても、影響は広範囲に及ぶ可能性がある。

-今後の債券投資のポイントは

ミッタル氏 一つ目は、質の高い債券の投資妙味が増していることだ。質の低い債券を回避し、ポートフォリオの債券の質を高めることを推奨している。

 二つ目は、グローバル分散投資が魅力を増している。米国をはじめとする先進国と、一部の新興国で債券投資が有望だとみている。

 三つ目は、債券の優位性が高まっていることだ。現金や株式と比べて、債券はさまざまなシナリオで魅力的な投資機会を提供できるためだ。また、不確実性やボラティリティは、アクティブ運用に超過収益獲得の機会になる。

-PIMCOの運用戦略は

(説明のみを目的としています。出所:PIMCO)(説明のみを目的としています。出所:PIMCO)(クリックで表示)

ミッタル氏 PIMCOのアクティブ運用は、ポートフォリオを「構造的な投資機会」「テーマに基づくティルト」「機会的なポジション」の三層で構築しており、一般的なトップダウン型のマクロ分析とは一線を画している。

 まず、「構造的な投資機会」では、債券市場の構造的な非効率性をとらえて、投資機会につなげている。例えば、債券格付けによるものや、銀行や年金など参加者それぞれが抱える制約によるものなど、さまざまだ。また、パッシブ運用が増えていることも、アクティブ運用に投資機会を生み出している。

 「テーマに基づくティルト」は、アクティブにデュレーション(元本の平均回収期間)をマネジメントしたり、イールドカーブ(長短金利の傾き)の変化を投資機会としたりしている。さらに、モーゲージ債(不動産担保融資の債権を裏付けとする証券)やインフレ連動債や資産担保証券(ABS)など証券化クレジットを選好している。また、80人以上のクレジットアナリストが、債券の銘柄ごとに信用力を調査している。

 「機会的なポジション」は、グローバルに相対価値で投資機会を発掘している。例えば、為替のポジションやエマージング(新興国)マーケットなどが対象になる。このように超過収益を実現するため、アクティブ債券運用では「構造的な投資機会」から「テーマに基づくティルト」、「機会的なポジション」まで、さまざまな投資機会がある。

 

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