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気温上昇予想、3期連続で低下=産業革命前より3.6度に-シュローダー

2021年07月05日 11時08分

工藤まゆみシュローダー・インベストメント・マネージメントESG推進グループグループリーダー

 英国の大手運用会社シュローダーは「産業革命前と比較した長期的な気温上昇が3.6度になる」とする2021年第1四半期の長期予測を公表した。前期比マイナス0.1度となり、3四半期連続で低下した。石油やガスへの投資減少や、炭素価格の上昇が貢献した。
 同社はパリ協定の長期目標(2度未満に抑制)の達成見通しを独自に算出し、四半期ごとに発表している。工藤まゆみ シュローダー・インベストメント・マネジメント ESG推進グループ グループリーダーに、ESG投資の考え方や取り組みを聞いた。

-シュローダーとは。
 工藤氏 シュローダーは、創業から200年以上の歴史を持つ、英国の大手運用会社だ。当社は、ファンドマネジャーが投資対象を選択するアクティブ運用に特化している。アクティブ運用は、投資リターンを得るだけでなく、社会にプラスの影響を与える分野に資本を投入することで、世界に変化をもたらすことができると考えている。

-ESGの取り組みは。
 工藤氏 ESG(環境・社会・ガバナンス)については、1998年から専任担当者を設置し、いち早く対応してきた。最高経営責任者のピーター・ハリソンの「質の高いコーポレートガバナンス体制を確立し、環境や社会に対する企業責任に取り組んでいる企業は、長期的に企業価値の向上と持続的成長が期待でき、より優れたリターンを投資家に提供する」との考えのもと、2020年に全ての戦略の運用プロセスにESG評価を組み入れる「ESGインテグレーション」を完了した。

-ESG運用の哲学は。

シュローダーのESGインテグレーションシュローダーのESGインテグレーション(クリックで表示)

 工藤氏 ステークホルダーと企業の関係を分析し、その企業の強みや付加価値を見出すとともに課題を理解することで、投資家に長期的な価値を提供できると考えている。具体的には、「地域社会」「顧客」「規制当局」「環境」「供給者」「従業員」など、企業を取り巻くさまざまなステークホルダーとの関係を評価している。例えば、環境であれば「企業は資源を効率的かつ責任を持って活用し、環境への影響を最小限にする努力をしているか」「環境への配慮のために高い基準を順守してサプライヤーを活用しているか」などの観点で、長期的な経営が行われているかを評価している。

-ESG分析のツールは。
 工藤氏 さまざまなツールを独自開発して運用に活用しているが、代表的なものとして、企業の社会的インパクトを財務的価値に転換して計測する分析ツール「SustainEx」が挙げられる。企業は社会に貢献する一方、コストも出している。「SustainEx」は、全世界の9000社を超える企業について、こうしたプラス・マイナス両面のインパクトを数値化し、これまで考慮されてこなかった社会・環境に対するコストや有益性を計測している。
 具体的には、給与の支払いなどの「プラスのインパクト」と炭素排出や水使用といった「マイナスのインパクト」を差し引きし、企業が及ぼすインパクトを示している。
 この分析は、企業単位だけでなく、ポートフォリオのレベルでも分析ができるので、投資家への情報開示に活用することで、欧州でスタートした「サステナビリティ関連の開示規則(SFDR)」に対応していく方針だ。

-気温予想の公表の狙いは

気温上昇予測ダッシュボード気温上昇予測ダッシュボード(クリックで表示)

 工藤氏 当社は、パリ協定の長期目標の達成に向けて、その進ちょく度合いを定期的に分析する「気温上昇予想ダッシュボード」を2017年に開発し、四半期ごとに公表している。政府や企業、金融業界の取り組み、技術革新、化石資源の動向など12項目を評価して、気温上昇を試算している。
 発表当初は、産業革命前に比べて4.2度の上昇を予想していたが、最新の試算では3.6度まで低下し、過去最低を更新した。担当者は「パリ協定の長期目標(産業革命前に比べて2度未満)と一致するまでにはまだ大きな開きがあるが、(低下に向けて)勢いの兆しを明確に見て取ることができる」と分析している。
 この調査は、俯瞰(ふかん)的に政府や企業などの温暖化対策をモニターすることで「どの分野でより大きな取り組みを求められているか」「進ちょくのテンポは十分か」などを知ることができ、当社の運用にも示唆を与えている。

 

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