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「次は新iDeCo」、6日にセミナーを開催=職場の金融経済教育が重要に-AM-One未来をはぐくむ研究所の伊藤所長に聞く

2025年02月04日 15時30分

伊藤雅子氏

 資産形成や金融経済教育の普及に取り組む「アセットマネジメントOne未来をはぐくむ研究所」は、設立から約1年が経過した。この間、2024年1月にスタートした新しい少額投資非課税制度(NISA)とともに、日本の資産形成の姿は大きく変化した。同社執行役員企画本部副本部長で、アセットマネジメントOne未来をはぐくむ研究所長の伊藤雅子氏に話を聞いた。

◆新NISA、投資家拡大にインパクト

-NISAの現状は

伊藤所長 1年前にお話ししていたように、新NISAは地殻変動とも言えるようなインパクトになり、投資に無関心だった人が動きだすきっかけになった。NISA口座数は、2023年12月末に約2100万口座だったものが、24年9月には約2500万口座に拡大した。たいへんなスピードで投資家の裾野が拡大しており、日本人の2割程度がNISAを利用している計算になる。

 J-FLEC(ジェイフレック、金融経済教育推進機構)が昨年4月に設立され、8月から本格稼働した。新聞やテレビでNISAを見ない日はなく、資産形成に対する国民の関心も高まり、改めて「金融経済教育元年」と言えるような年になった。

 2024年の株式市場は、国内外とも総じて好調だった。過去最大の下げ幅を記録する波乱もあったが、多くの個人投資家は狼狽(ろうばい)せずに冷静に対応し、「長期・分散・積立」を継続したことは、エポックメイキングな出来事だったと思う。

◆iDeCo拡充、拠出限度額引き上げへ

-IDeCoの現状は

伊藤所長 昨年12月にまとまった政府・与党の「税制改正大綱」で、個人型確定拠出年金(iDeCo、イデコ)の拠出限度額の引き上げや制度の簡素化が決まり、通常国会に改正法案が提出される見通しになった。今後は、次に期待される「新iDeCoブーム」をにらんだ動きになると考えている。

 政府は23年11月に「資産所得倍増プラン」を決定し、この中に「七つの柱」を盛り込んだ。第一の柱は「家計金融資産を貯蓄から投資にシフトさせるNISAの抜本的拡充や恒久化」。第二の柱は「加入可能年齢の引き上げなどiDeCo制度の改革」であり、着実に実施されている。

 企業型DCやiDeCoの現状だが、アセットマネジメントOneが運用する「確定拠出年金(DC)専用ファンド」の資金流入と流出の動向を見ると、ファンドの売買が活発になっていることが分かった。企業型DCやiDeCoの加入者が、資産運用に関心を持ち、実際に売買してみることは、良いことだと思う。

 ただ、「長期・分散・積立」といった年金運用の基本知識が不十分なまま、「安くなったら買い、高くなったら売る」といった短期売買を繰り返すと、運用がうまくいかず、退職時に必要な年金資金を確保できない懸念がある。こうした働く世代に、本質的な金融経済教育をきちんと届けることが、今後の課題だと考えている。

◆DCを共同調査、日米比較も実施

伊藤所長 企業型DCやiDeCoについては昨年8月、公益財団法人年金シニアプラン総合研究機構(高山憲之理事長)の研究チームに参画して加入者調査を実施し、アセットマネジメントOne未来をはぐくむ研究所がデータを初期分析した。本調査は、米国の大手運用会社ティー・ロウ・プライスの協力を得て、アメリカの先行研究との比較可能な設問と取り入れた点に特徴がある。

 2月6日には、DC実施企業を招き、「DCセミナー2025~未来を見据えたDC法改正と金融経済教育の新潮流~」を都内で開催する予定だ。この中で調査結果を報告する。さらに「加入者に対してどのような方法で、どのような金融経済教育を行うことが必要か」、「DC実施企業や運営管理機関は、どのようにDCと関わるべきか」など、日米比較からのインプリケーションを踏まえて提示したいと思っている。

 アセットマネジメントOne未来をはぐくむ研究所は、専用サイトで各研究員がコラムなどを発信しており、公的年金や社会保障制度に関する情報提供も力を入れている。DCの金融経済教育においても、「リスク・リターン」や「商品の選び方」といった金融の話にフォーカスされがちだが、公的年金や退職金、社会保障制度を含めて老後資金を考えることが大切だろう。

◆子ども職業体験アプリを共同開発、地方自治体と金融経済教育

-子どもや若年層の対応は

伊藤所長 子どもの金融経済教育については昨年、職業・社会体験施設「キッザニア」を企画・運営するKCJ GROUPと共同で、職業体験アプリ「キッザニア オンラインカレッジ」向けに、ファンドマネジャーの仕事を学べる新コンテンツを開発した。さらに同社とは、地方自治体等における学校現場での利用を想定した議論も始まっている。

 大学での出張講義は、5大学で実施した。「長期・分散・積立」といった投資の基本的な考え方を伝えることに加えて、投資は「社会とつながる」ことであり、私たちの未来社会をつくる効果を、インベストメント・チェーンとともに伝えている。「投資の力で未来をはぐくむ」ことを知ることで、長期投資の意義を理解してもらえるように思う。

◆教育の専門家と、研修・育成プログラムを開発

-教職員のサポートは

伊藤所長 金融経済教育を担当する教職員のサポートも始めた。アセットマネジメントOne未来をはぐくむ研究所と認定特定非営利活動法人「Teach For Japan」は昨年12月、小学生や中高生を対象とした金融経済教育に関する教員向け研修の開発と、これを利用した教員育成プログラムの運用・実施に向けて協働することで合意した。

  Teach For Japanは、子どもに合わせて専門用語を分かりやすくかみ砕いたり、板書・発問・質問・課題・グループワークといった学習をデザインしたりする知識・技能について、専門的な知見がある。両社が保有するノウハウを融合させることで、金融経済教育に取り組む教職員を支援する。

【ホームページ】アセットマネジメントOne未来をはぐくむ研究所
https://www.am-one.co.jp/hagukumu/

 

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