2025年、貿易・外交の新秩序を模索へ=世界経済、緊張感を持ちつつ軟着陸を予想-三井住友DSアセットの吉川氏
2025年01月14日 08時00分
三井住友DSアセットマネジメントのチーフマクロストラテジストの吉川雅幸氏は、「世界新秩序の模索と米国優位の資金フローの行方」をテーマに、2025年の世界経済を展望した。主なポイントは以下の通り。
◆世界経済=緊張感を持ちつつ軟着陸を予想
世界経済の成長率は、2024年を3.1%、25年を3.1%、26年を3.2%と予想した。潜在成長率近辺で、過熱も失速もせず、軟着陸に向かう、という趣旨である。ただ、地域やセクターごとに成長率のバラつきが大きい「ダイバージェンス(divergence)」が続いており、トランプ次期米大統領の政策を緊張感を持って見極める年になる。
◆米国へ資金が集中=堅調な経済、M7、トランプ次期大統領
米国の株式や債券市場に資金流入が集中している。その要因は、米国景気が相対的に堅調なことや、マグニフィセント・セブン(M7)と呼ばれる米国の巨大なテクノロジー企業が業績を伸ばしていることに加えて、トランプ次期大統領が打ち出している減税・規制緩和や、関税政策など新しい世界秩序の再構築が米国に有利に働くとの期待があるように思う。
戦後の貿易や外交を支えてきたルールが、中国の台頭などで機能しにくくなっているようにみえる。トランプ次期大統領は、関税政策など通じて巨大な米国市場へのアクセスを交渉材料にとし、貿易・外交等のあり方を変えようとしているようだ。どんな秩序に変わってゆくか、その結果資金の流れがどう変わるか、が今年の大きな焦点だろう。
◆米国の関税政策=交渉の行方に注目
トランプ氏は1月20日、第47代大統領に就任する。当初は、高い関税率を打ち出すと思われるが、その後の交渉でどの程度の水準に落ち着くかが重要だ。米国の関税引き上げは、短期的には米国以外の国にとって景気悪化の要因だ。一方、米国にとってはインフレが加速する要因になりえよう。「世界経済の減速」と「米国のインフレ率」が、それぞれどの程度になるかがポイントになる。
トランプ氏はこれまで「関税を引き上げてもインフレは加速しない」と言ってきた。こうした発言を勘案すると、「20~60%」としている中国に対する関税は「20~40%」に変更されると予想する市場関係者が多い。一方、その他の地域についても「10%」としている関税率を、対象製品を絞り込むなどして最終的には圧縮する(例えば「2~3%」など)という見方が、市場関係者のメインシナリオになっている。こうした関税率であれば、世界経済は軟着陸するだろう。