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欧米の不動産市況は回復へ=安定したインカム収入と中長期的な価値拡大を目指す-ブルックフィールド・オークツリーのホール氏

2024年12月27日 08時00分

ブルックフィールド・オークツリーのホール氏

 オルタナティブ投資のブルックフィールド・オークツリー・ウェルス・ソリューションズのアジア太平洋担当ヘッドを務めるジェレミー・ホール氏がこのほど来日した。同社では、世界中の富裕層投資家向けにブルックフィールド社とオークツリー社の運用戦略を提供する。直近では、SMBC日興証券株式会社による外国籍ファンド「日興ワールド・トラスト-ブルックフィールド不動産インカム・トラスト・ファンド『ブルックフィールド・リート戦略(愛称)』」を通じて、不動産の所有者兼運営者として世界有数の規模と経験を有するブルックフィールドの能力を顧客へ提供している。ホール氏にプライベート不動産市場の見通しやファンドの運用方針を聞いた。

◆「オルタナティブの民主化」目指す

-ブルックフィールド・オークツリー・ウェルス・ソリューションズの概要と世界的規模のブルックフィールドの組織の一部であることとは

ホール氏 当社は、世界有数のオルタナティブ資産運用グループで富裕層投資家向けに運用ソリューションを提供している。株式や債券などの伝統的資産を代替するオルタナティブ投資を個人投資家が購入できるように、「オルタナティブ投資の民主化」を目指して設立された。

 親会社のブルックフィールドは、1899年の創業で、120年余りの歴史を有する。傘下に「不動産」「クレジット」「インフラストラクチャー」「プライベート・エクイティ」「再生可能エネルギーとトランジション」という主要な五つの事業体があり、運用資産残高は約1兆ドル(約129兆円、2024年12月時点)に達する。

 また、ブルックフィールドは、世界中のさまざまなセクター、さまざまな立地で約2720億ドル(約43兆円)の実物不動産を保有しており、世界最大級の不動産マネージャーだ。

 世界中に約2万9000人の不動産担当者がおり、彼らを通じて物件調査から購入、運用管理、賃貸、売却まで、一気通貫でマネジメントしている。「オーナー兼オペレーター」として、厳選した物件にリニューアル投資等を行うことで、物件の価値向上や物件が生み出すキャッシュフローの増加に努めている。

 運用スタイルは、コントラリアン(逆張り投資)だ。不動産市況の厳しいときに、より良い物件をより魅力的な価格で取得することで、価値の高い不動産のポートフォリオを構築している。

◆高品質の不動産に厳選投資

-戦略の概要は

ホール氏 この戦略は、米国を中心に世界中の不動産に投資することだ。高品質の物件に厳選投資しており、物件の価値やキャッシュフローを改善させるアプローチを採用している。

 不動産投資において長期にわたって実績を残してきた「ブルックフィールドの不動産グループ」と、クレジット運用において業界をリードしてきた「オークツリー」の運用力を結集し、安定したインカム収益と中長期的な不動産価値の増大を追求している。

 この戦略の特徴は、金融市場の変動を受けにくいプライベート不動産に投資することだ。プライベート不動産は不動産評価を基に価格形成されるため、金融市場の影響を受けにくく、相対的に安定した価格推移が期待される。

 一方で、流動性は低い。この戦略の場合、買付・換金は月1回に制限される。また、換金請求が上限を上回る場合は、換金が制限されることがある。

 投資する物件は、世界最大級の不動産投資家であるブルックフィールドが厳選し、管理する。また、戦略の流動性の確保等を目的に、ポートフォリオの約10~35%をオークツリー社がクレジットで運用する。

◆欧米中銀の利下げがカタリストに

-欧米の不動産市況の現状と見通しは

ホール氏 このファンドは2024年の初めにローンチした。その時点では、不動産市場が調整局面で、金利上昇にともない割引率も上昇していた。ただ、不動産市況のサイクルを考えると、現在は回復基調にあり、絶好の投資タイミングだと考えている。

 不動産投資のパフォーマンスを時系列でみると、ITバブル崩壊やリーマン・ショックにともなって不動産市況は下落したが、その後に大きく価格上昇している。こうした過去の事例を見ても、不動産市況は底打ちすることが見込まれる。欧米では中央銀行が金利を引き下げており、これがカタリストとなって、不動産の取引案件が増加し、市況は回復基調に入るだろう。

 不動産を長期に保有することは、家賃を収益源とするキャッシュフローにより投資家の収益源に力強い効果をもたらすだろう。不動産価格や賃貸収入はインフレに連動することが期待される。ポートフォリオに不動産を組み入れることで、インフレをヘッジする効果を見込むことができるだろう。

◆商品の理解と長期保有が重要に

-投資家へアドバイスは

ホール氏 オルタナティブ投資は、メリットも多いが、トレードオフとなる要因があることを理解することが重要だ。例えば、非上場リートは、価格変動が低いことが期待できる反面、流動性は低く、換金制限があるので、長期で保有することを前提に投資をスタートすることが大切だ。適切な投資戦略を求めていただくためにも、こういった仕組みやトレードオフとなる要因をしっかりと理解していただいたくよう努めている。

 オルタナティブ投資を普及させるには、投資家に対する教育・啓発活動がとても重要だ。オルタナティブ投資には「どのような選択肢があるか」「リスクは何か」「ポートフォリオの中でどのような役割を担うことができるか」-。メリットとデメリットがあるので、そのバランスを説明しなければいけない。

 当社はオルタナ研究所を通して様々な教育コンテンツを提供している。アドバイザーと投資家の皆様に価値ある情報を提供するために開発したデジタルおよび対面式のプログラムだ。さらに、委託会社や販売会社、アドバイザーを対象にイベントを開催しており、日本においても2024年にセミナーを実施した。

◆しっかり時間をかけて取り組む

-日本における事業展開は

ホール氏 日本の投資家の選択肢を増やす意味でも、オルタナティブ投資が普及することは良いことだ。プライベート不動産は、ボラティリティーが低く、インカム収入が期待できることを考えると、日本の投資家に適合しているのではないか。

 ただ、オルタナティブ投資の普及に当たっては、教育がとても重要であり、しっかりと時間をかけて取り組んでいきたい。日本の個人投資家のポートフォリオを見ると、不動産のアロケーションが低いので、ポートフォリオの20~25%程度に引き上げてもよいと考えるが、すぐにできることでないと思っている。時間をかけて進めていきたい。

 富裕層投資家向けに運用ソリューションを提供するビジネスにおいては、さまざまな投資家の皆さまに、それぞれに合った多様な選択肢を提供することが大切だ。お客さまによって、リターンやリスク、流動性に関する見解が違うので、お客さまのニーズや好みに応じた投資戦略を提供していきたい。

 

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