重要性高まるオルタナティブ=多様化する投資対象、高度化する運用手法-AM-Oneの佐々木常務に聞く
2024年12月04日 13時00分
伝統的資産の上場株式や債券を代替するオルタナティブ投資の重要性が増している。プライベート・エクィティ(非上場株式、PE)やプライベート・デット(銀行以外の融資、PD)等へ投資対象が多様化し、ヘッジファンドやマルチアセットなど運用手法も高度化している。
アセットマネジメントOne常務執行役員 商品本部長兼戦略運用本部長で、アセットマネジメントOneオルタナティブインベストメンツ(AMOAI)社長の佐々木裕介氏に事業戦略を聞いた。
◆プライベート市場が拡大
-運用業界のトレンドは
佐々木氏 「From Public to Private, Alternative <(上場株式・債券の)パブリックから、(PE・PDの)プライベートやオルタナティブへ>」が、運用業界のメガトレンドになりつつある。
米国の上場企業数は、1996年をピークにその後の約30年間で半分になり、代わりに非上場企業が大幅に増加している。また、彼らの資金調達先としてベンチャーキャピタルやPEが存在感を増している。さらに、銀行以外の主体が投資家から集めた資金を融資するPDのマネージャーの数が増加している。
日本市場においても今後PE・PDの両面でファンドの存在感が高まる可能性がある。
◆オルタナティブが成長
-プロダクツのトレンドは
佐々木氏 運用商品としては、低コストでインデックスとの連動を目指す「パッシブETF(上場投信)」や「オルタナティブ」が引き続き市場の拡大をけん引する見通しだ。オルタナティブでは、PEやPDに加えて、インフラストラクチャ―(社会基盤)、不動産などの成長が期待される。
一方、インデックスを超過するリターンを狙う伝統的なアクティブ運用では、より高いアルファの獲得を目指し、銘柄を絞った集中投資型ファンドが拡大している。
◆富裕層に拡大
-投資家のトレンドは
佐々木氏 オルタナティブは、年金基金などの機関投資家にマッチした運用商品として普及してきた。中でもプライベートアセットは長期保有が前提となり、専門的な知識やファンドを見極める力も必要になるほか、取得や解約に制限が設けられるなど流動性に留意が必要だ。
今後は、富裕層にオルタナティブ投資が広がりそうだ。長期保有が可能で、一時的な価値の下落に耐性があり、運用について一定の知見を持ち、自分で意思決定することが期待できる投資家だからだ。
◆オルタナティブの専用子会社を展開
-オルタナティブの運用体制は
佐々木氏 みずほ銀行は2010年に、オルタナティブに特化した運用会社を設立した。その後、グループ運用機能の再編により、アセットマネジメントOneの100%出資となり、アセットマネジメントOneオルタナティブインベストメンツ(AMOAI)に商号変更した。
AMOAIは、海外の優れたオルタナティブ商品を日本に持ち込むゲートキーパー業務と、インハウスでプロジェクトファイナンス債権を投資対象とするインフラストラクチャーデットの運用を行っている。
ゲートキーパー業務は、海外のヘッジファンドやプライベート投資のマネージャーを対象に、専門性の高い運用プロフェッショナルが、①運用力の優劣 ②投資管理の適切性 ③運用目的の充足度合い-などをリサーチしている。
具体的には、超過リターンの創出力や再現性をチェックする「投資デュー・ディリジェンス」と、コンプライアンスやリスク管理態勢を調べる「オペレーショナル・デュー・ディリジェンス」の二つの観点から、独立した組織が相互にけん制しながら調査を実施している。
◆クロスオーバー投資ファンドなど展開へ
-今後の展開は
佐々木氏 アセットマネジメントOne戦略運用本部とAMOAIは、こうした専門知見を生かして、幅広い投資家層に多様な商品ラインアップを提供する方針だ。
日本の富裕層向けには、私募のPEファンドや、上場株式の集中投資型ファンドを提供しているが、さらに、イノベーションを推進する日本の上場および非上場企業に投資するクロスオーバー投資ファンドや、オルタナティブではオープンエンド型やインカム安定型の商品など私募と公募の両面で展開する予定だ。
機関投資家向けには、ヘッジファンドやプライベートアセットにおいて、単品のファンドでの提供に加え、それらを組み合わせたポートフォリオ型の商品展開も行っていく方針だ。