女性比率、3割に引き上げ求める=ESG対応で企業に書簡-フィデリティ投信
2021年06月02日 06時05分
外資系運用会社のフィデリティ投信(本社東京、デレック・ヤング社長)は、投資先企業に対して「2030年をめどに、取締役会や管理職、全従業員に占める女性割合が30%を達成するように取り組む」ことを求める書簡を送付した。定時株主総会の集中時期を前に、男女格差是正などの「ジェンダーの多様性」について、企業の取り組みを促す狙い。
書簡では、議決権行使の考え方について「来年度以降の株主総会では、女性取締役がいない企業に対して、代表取締役の選任議案に反対票を投じることも検討する」とした。また、男女の賃金の差異(ジェンダー・ペイ・ギャップ)の把握と開示に努めるように求めた。同社は、株主総会やエンゲージメント(建設的な対話)を通じて、投資先企業に実行を要請していく方針だ。
井川智洋ヘッド・オブ・エンゲージメント兼ポートフォリオ・マネージャーは、日本の現状について「日本企業においては、ESG(環境・社会・ガバナンス)の対応の中でも、ジェンダーの多様性が、国際社会から取り残されている深刻な課題だと受け止めている」と指摘する。3月に世界経済フォーラムが発表した、男女平等度を示す「ジェンダーギャップ指数」で、日本は156カ国中120位となるなど、先進国の中で最低レベルとなり、話題になった。
ジェンダーの多様性に取り組むことは大切だ。井川氏は「新型コロナウイルスの感染拡大や気候変動など、かってない環境変化の中では、多様なバックグランドを持った人材が、多様な視点で意見をぶつけ合い、最適な解決策を探っていくことが、企業価値の創造において非常に重要な役割を果たす」と強調している。
同社の親会社のフィデリティ・インターナルは昨年12月、投資先企業とのエンゲージメントで取り上げるESG(環境・社会・ガバナンス)の課題を発表した。その中で、自然の生態系の保全に加えて、社会的格差の是正やインクルージョン(包括)を重点テーマに掲げている。(了)