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第3回資産運用業大会を開催=投資信託協会と日本投資顧問業協会

2024年10月01日 11時00分

 投資信託協会と日本投資顧問業協会は30日、第3回資産運用業大会を開いた。国際金融センターや「資産運用立国」の実現に向けたイベントを集中開催するJapan Weeksの一環として行われた

◆資産運用業の改革、一段と加速を

大場昭義会長


 日本投資顧問業協会の大場昭義会長は、大会の冒頭にあいさつし、「人生百年時代を迎え、『国民の安定的な資産形成』と『投資活動を通じた企業価値の向上』、『社会課題解決への貢献』など、インベストメントチェーン全般にわたって、資産運用業界の役割は各段に高まっている」と指摘した。

 その上で「運用会社各社は、ガバナンスの改善、運用体制の強化、人材の育成、スチュワードシップ活動の実質化などさまざまな課題に取り組んでいるが、これらを一段と加速させなければいけない」と強調した。

 また、投資信託協会と日本投資顧問業協会の統合について、「来年6月の定時総会に合併決議の議案を提出したいと考えている。統合が実現すると、『資産運用立国』にふさわしく、会員数約900社、会員の運用資産が1000兆円と、わが国の金融業界で最大規模の団体になる」と述べた。

◆資産運用業を「第4の柱」に

神田潤一氏

 次に、内閣府大臣政務官の神田潤一氏があいさつし、「岸田政権は、デフレ経済からの脱却と、新たな成長型経済への移行に取り組み、その成果は、金融政策の正常化、33年ぶりの高水準の賃上げ、過去最高の企業業績など、広範なデータに表れている」と指摘した。

 その上で「こうした経済の好循環を金融面から支えるのが、『資産運用立国』の取り組みだ。家計の資金が成長投資に向かい、企業価値向上の恩恵が家計に還元されることで、さらなる投資や消費につながるという『成長と分配の好循環』を実現すべく、官民一丸となって取り組みを進めてきた」と紹介した。

 具体的な施策では、1月にスタートした新NISA(少額投資非課税制度)について「若年層から高齢層に至るまで『長期・積立・分散投資』による継続的な資産形成を行うことが可能になった。現預金にとどまっていた家計の資金が株式や投資信託にシフトしており、NISAは国民の安定的な資産形成の手段として受け入られつつある」と評価した。

 また「資産運用業が、日本の金融業の中で、銀行、保険、証券と並ぶ『第4の柱』となるように、資産運用業の健全な発展を後押しするための組織体制を整備することも重要だ」と指摘。金融庁は7月に、資産運用参事官を新たに設置し、資産運用業のモニタリングなど高度化に向けた機能を一体として実施していることを紹介した。

◆日本は転換期に、高まる資産運用業の役割

伊藤豊氏

 大会では、金融庁監督局長の伊藤豊氏が「資産運用業の健全な発展に向けて」をテーマに講演した。この中で、資産運用業の社会的使命について「国民の安定的な資産形成に向けて最善を尽くすと共に、そのための投資活動を通じて社会課題の解決を図り、豊かな暮らしと持続可能な社会の実現に貢献することだ」として、4年前に投資信託協会と日本投資顧問業協会がまとめた「資産運用業宣言2020」を紹介した。

 その上で、「資産運用業がその役割を果たし、活躍の場を広げていく上で、日本には大きなポテンシャルがある」と指摘。①成長の原資となる豊かな家計金融資産がある ②高い技術力とその源となる発想力があり、有望な投資先が多数存在する-などを挙げた。そして「日本は、このポテンシャルを現実のものに変える、大きな転換期にある。家計の資産形成と成長資金の供給を担う資産運用業が果たす役割は、ますます大きくなっている」と強調した。

 伊藤氏は講演で、資産運用における価値創造の連鎖を示した「インベストメントチェーン」を使って、家計や企業、アセットオーナー、運用会社の変化を紹介した。

 この中で、8月上旬に世界の株式市場が乱高下したことに触れ、「長期的な視点に立った資産運用が、日本に根づいていくかどうかの試金石になった。市場の変動に不安を抱く顧客に寄り添い、丁寧に対応できるかという点において、資産運用業界の真価が問われた出来事だった」と指摘した。

 その上で「動画などのさまざまなチャンネルを活用し、過去の金融市場の動揺時の経験を踏まえながら、冷静に判断することの重要性を顧客に対して説明した金融機関が多数あった」と評価。「顧客が株価の変動に一喜一憂することなく、長期的な視点で安定的な資産形成を行えるように、適時適切な情報の発信やアドバイスをお願いしたい」と述べた。

◆NISA、順調に拡大

松下浩一会長

 投資信託協会の松下浩一会長は、懇談会の冒頭にあいさつし、NISAについて「総口座数3400万口座、買付額56兆円を目指して、国民のお金の流れが『貯蓄から投資へ』と順調に移ってきている」と指摘した。

 また、資産運用業の高度化や、運用会社のガバナンスの強化、日本独自のビジネス慣行である基準価額の計算方法の見直し、顧客本位の業務運営に加えられた「プロダクトガバナンス」を実効性のあるものにするための対応-などに取り組んでいることを紹介した。

 その上で「『資産運用立国』の議論は、まさに『運用会社の改革』が中心になっている。その本質は、直接金融へとお金の流れを変えることにある。投資信託協会と日本投資顧問業協会の統合により、銀行、保険、証券と並ぶ『第4の柱』として、がんばっていきたい」と述べた。

 

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