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「資産運用を誰にとっても当たり前に」=新ファンドを設定、運用・販売でコラボ-三菱UFJアセットとPayPay証券

2024年09月30日 08時00分

(左から三菱UFJアセットマネジメントの代田秀雄常務、PayPay証券の番所健児社長)(左から三菱UFJアセットマネジメントの代田秀雄常務、PayPay証券の番所健児社長)

 三菱UFJアセットマネジメントとPayPay証券は、国内外の株式や債券、リートに分散投資するバランスファンド「eMAXIS/PayPay証券 全世界バランス」の運用・販売を始めた。1本で適切な分散投資ができるバランスファンドを提供することで、ファンド選びが難しい投資初心者の悩みを解決し、より多くの人に自身のライフプランに合った資産運用を実行してもらう狙い。eMAXIS ブランドで初の販売会社専用商品になる。

三菱UFJアセットマネジメントの代田秀雄常務とPayPay証券の番所健児社長が記者会見し、新ファンドの狙いや今後の取り組みを説明した。主なポイントは以下の通り。

◆投資家の裾野拡大に向けコラボ

-取り組みの経緯は。

代田常務 PayPay証券は、幅広いお客さまに接点を持つ、優れたプラットフォームを有するモバイル専業証券だ。金融・証券業界では、新NISA(少額投資非課税制度)がスタートする中で、「投資家を増やすこと」、「投資・資産運用を国民の当たり前にすること」が、重要な課題に浮上している。番所社長とお話する中で、こうした認識で共感し、両社のコラボレーションについて模索していた。

 このファンドは、投資家のさらなる拡大に向けて、非常に重要な役割を果たしていくと考えている。大きな期待を込めて「eMAXIS」と「PayPay証券」という両社の持つ有力なブランドを冠するファンド名とした。

◆新NISA口座数は1-6月合計で第3位、95%が投資初心者、

-PayPay 証券とは。

(左から代田常務、番所社長)(左から代田常務、番所社長)


番所社長 PayPay 証券は、2013 年10 月の設立で、キャッシュレス決済最大手PayPay の子会社だ。国内最大のフィンテックのプラットフォームを活用して、証券ビジネスを展開している。

 当社の1-6月のNISA 口座の新規開設数は23万口座だった。後発の証券会社ながら、楽天証券とSBI証券に次ぎ、業界第3位に入った。この23万人に投資経験を尋ねたところ、95%がNISA 口座の開設は初めてと回答した。当社は、新しく投資を始める人の選択肢の一つになっている。

 当社のサービスの特徴は「簡単で迷わないUIUX(ユーザー体験・接点)」だ。モバイル端末なのですぐに取り出せて、初心者でも直感的に操作できる画面仕様にしている。その上で、NISA デビューに必要な商品ラインナップを用意し、100円から手軽に積立投資ができる。

 私は、新NISA の大綱を見て「日本のほぼ全ての人が証券口座を持ち、当たり前のように活用する時代が来る」と思った。そして「その世界でナンバー1になりたい」と考えた。

 当社のミッションは「資産運用を誰にとっても当たり前に」だ。資産運用は富裕層だけのものではない。お金の不安を払拭し、誰もがより良い暮らしのできる未来を創るために、資産運用の概念をアップデートしたい。新NISA とともに、フロントランナーとして新しい旋風を巻き起こしていく。

◆投資家拡大へ、四つの障害を解消する

-NISAの現状と課題は

代田常務 金融庁のまとめによると、NISA口座数は6月末時点で2428万口座だ。政府は2027年末で3400万口座に拡大する目標を掲げている。NISAはその後も増加を続け、2030年3月末には4000万口座になると当社は予想している。NISAのモデルになった英国のISAは成人の4割が利用している。日本もその水準に達すると考えた。

 「投資家4000万人」を実現するには、現状からさらに投資家を約2000万人増やすことが必要だ。この人たちに「どのような金融商品を提供するか」は、これからの重要な課題になる。私たちは、「投資に踏み切れなかった障害」を取り除くため、四つのポイントを考えた。

 一つ目は「ファンド選びに迷わないで済むようにする」ことだ。二つ目は「これ1本で十分というファンドを用意する」ことだ。自分でポートフォリオを作ったり、ファンドを組み合わせたりすることは、初心者にはとても難しい。三つ目として、そのファンドは「リスクがコントロールされている」ことが必要だ。四つ目は「ユーザーが簡単に投資できる」ことが大切だ。

 検討の結果、私たちは新たにバランスファンド「eMAXIS/PayPay証券 全世界バランス」を設定した。

◆モダンポートフォリオ理論をアップデート

-新ファンドのポイントは

(出所)交付目論見書「eMAXIS/PayPay証券 全世界バランス」より(出所)交付目論見書「eMAXIS/PayPay証券 全世界バランス」より(クリックで表示)


代田常務 ポイントの1点目は「NISAで購入でき、投資の鉄則である『長期・積立・分散』に適した商品であること」だ。このファンドは、NISAの成長投資枠の対象ファンドだ。また、株式や債券、リート等に資産分散することでリスクをコントロールしている。

 2点目は、ポートフォリオの構築に当たって、分散投資の古典である「現代モダンポートフォリオ理論」と、2010年代以降に実用化が進展してきた「リスクベースアプローチ」を進化・融合させた。こうしたハイブリッドモデルを採用することで、円ベースでの最適化を図った。

 3点目は、多様な資産を組み入れることで、投資効率の向上を目指している点だ。例えば「国内物価連動債」や「米国短期債」、「米国超長期債」等を採用している。また、「為替ヘッジあり」の資産によって、円高リスクを一定程度コントロールしている。

 このファンドは、下落相場に強いポートフォリオになっている。リスク量を、世界株のインデックスファンドの半分程度に設計した。株式を含むさまざまなアセットに投資するので、株式相場が下落すれば値下がりするが、株式100%のインデックスファンドに比べれば値下がり幅は抑制される。

 例えて言うと、世界株のインデックスファンドは「ストレートのウイスキー」のようなものだ。お酒に慣れた人は、こうした飲み方もいいだろう。一方、このファンドは、「カクテル」のイメージだ。お酒に慣れていない人にも、飲みやすいように工夫している。

 バランスファンドのメリットは、ポートフォリオの資産配分を調整する「リバランス」を、ファンドマネジャーが実施してくれることだ。基本的な配分計画に沿って、生涯にわたるポートフォリオのメンテナンスを自動で実行してくれる。リバランスしても、ファンド内の売買なので、NISAの年間投資枠を消費しない。

 

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