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「米国集中、グロース株集中からの拡張」が課題に=アセットマネジメントOneが商品戦略フォーラム

2025年07月14日 07時00分

(村松氏)(村松氏)

 アセットマネジメントOneは、「激動する環境下でのラインナップ構築のヒント」をテーマに商品戦略フォーラムを開催した。世界の株式市場はこれまで、ビッグテック(巨大IT企業)を中心とする米国グロース株(成長株)がけん引してきた。しかし、トランプ米大統領が新たな関税政策を打ち出すなど、世界経済は急速に変化している。

 フォーラムでは、ポートフォリオのラインナップ構築の考え方について「米国集中、グロース株集中からの拡張が課題になるだろう」と指摘。①対象資産 ②運用戦略 ③投資地域-の拡張という三つの観点から、内外債券型の「ウエリントン・トータル・リターン債券ファンド」、バリュー株(割安株)投資の「DIAM世界好配当株オープン 愛称:世界配当倶楽部」、国内株式型「One割安日本株ファンド」の3ファンドを紹介した。また、それぞれのファンドマネジャーが運用方針や特徴を説明した。主な発言は以下の通り。

◆新たな貿易ルール作りが始まる

-世界の経済環境は

村松茂樹氏(アセットマネジメントOne常務執行役員運用本部長) 経済のグローバル化は、経済成長と効率性の向上に貢献し、世界のGDPは急速に拡大した。しかしその一方で、世界から製品を輸入してきた米国は、経常収支の赤字が続いており、何らかの対応が必要とされていた。

 これに対してトランプ米大統領は今年4月、米国の関税を100年前の水準に引き上げる方針を打ち出し、新たな貿易ルールの構築に向けて各国と交渉を始めた。このやり方が、あまりに急だったため、マーケットでは、基軸通貨として世界の通貨別取引額の約4割、外貨準備高の約6割を占める米ドルの位置づけを再検討し、ほかの通貨へ分散する動きが出始めた。

◆株式市場、利益成長を伴う健全な上昇

(酒井氏)(酒井氏)

-世界の株式市場の動きは

酒井義隆氏(アセットマネジメントOne運用本部株式運用部共同部長/CIO<株式>) 世界の株式市場は、トランプ米大統領の関税政策の発表を受けて一時急落したが、6月末時点では急速に持ち直しており、影響は限定的だったと言えるだろう。予想EPS(1株あたり純利益)の増加を伴っており、健全な株価の上昇と言えるだろう。

 日本株市場を見ると、TOPIX500の企業では、2025年度の営業利益計画について、増益を予想する企業が多い。また、大規模な自社株買いは健在で、発行済株式に対する自社株買いの設定枠はさらに拡大していく見通しだ。TOB(株式公開買い付け)や、経営陣による自社株買い等で経営権を取得するMBO(マネジメント・バイアウト)が増加しており、株式の需給を引き締める要因になるだろう。

◆インフレへ転換、株式保有は重要な選択肢

-今後の資産運用の考え方は

村松氏 日本経済は、デフレから脱却しインフレが定着しようとしている。これからの資産運用においては、株式などのリスク資産を一定程度保有することが、重要な選択肢になるだろう。米国が重要な投資先であることに変化はないが、今後はほかの国にも分散することを心掛けることが大切だろう。

◆インカムとキャピタルの両方を追求する債券アクティブ運用

(中尾氏)(中尾氏)

-「ウエリントン・トータル・リターン債券ファンド」の運用方針は

中尾 尭氏(ウエリントン・マネージメント・ジャパン ヴァイス・プレジデント) ウエリントン・マネジメントは、1928年創業で、米国ボストンに本拠地を置いている。運用資産総額は約200兆円超(2024年6月末)と、世界有数の独立系の運用会社だ。

 このファンドは、債券のインカム収益(金利収入)とキャピタル収益(債券の値上がり益)の両方を追求するユニークな運用手法で、トータル・リターンの獲得を目指すアクティブ運用の債券ファンドだ。主に米ドル建ての米国国債、投資適格社債、ハイイールド社債、新興国債券に投資する。グローバル債券ファンドでは珍しい少額投資非課税制度(NISA)対象ファンドだ。

 ダイナミックな資産配分の変更と、トップダウンとボトムアップの両面からの精緻な銘柄分析を実施している。割安になった債券を購入する「逆張り」の投資によってキャピタル収益を積み上げ、投資対象市場を代表する各指数を上回るリターンを上げてきた。

◆配当の持続性や成長性を評価

(森氏)(森氏)

-「DIAM世界好配当株オープン 愛称:世界配当倶楽部」の運用方針は

森隆行氏(アセットマネジメントOne運用本部株式運用部ファンドマネジャー) このファンドは、日本を除く世界各国の「好配当株」に投資し安定的な配当収入とキャピタルゲインの獲得を目指している。「好配当株」とは、配当利回りの高さと、割安な株価に加え、業績や財務状況が優良で、安定配当や配当成長が継続して期待できる株式だ。

 個別企業の調査を通じて、配当の源泉となるキャッシュフローの創出力を詳細に分析して、相対的に高い配当の安定性や成長性を評価している。さらに、個別株のバリュエーションを精緻に評価することで、「好配当」の持続・成長が期待され、かつ割安な株式に厳選投資している。

 運用内容を見ると、米国株式が約5割、欧州株式が約4割と、地域的に分散されている。また、業種についても、ITや金融、公共事業などに偏りなく投資しており、安定的にリターンを上げてきた。

 アセットマネジメントOneの外国株式運用チームは、運用・調査担当者が東京に11人、ニューヨークに5人の体制だ。企業調査に当っては、オンラインに加えて、積極的に現地に出張して、実際に面談することを大切にしている。

◆日本株式、企業価値向上を積極化

(安西氏)(安西氏)

-「One割安日本株ファンド」の運用方針は

安西慎吾氏(アセットマネジメントOne運用本部株式運用部ファンドマネジャー) このファンドの特徴は3点ある。一つ目は、10年以上の運用実績を持ち、さまざまな市場環境に左右されることなく実績を残してきたことだ。2012年2月の設定以降、参考指数の東証株価指数(TOPIX)に対して、1年、3年、5年、10年のいずれの期間でもプラスのリターンを上げてきた。

 二つ目は、割安な銘柄に厳選投資し、バリュープレミアム(相対的に高い配当収入と値上がり益)の獲得を目指していることだ。三つ目は、市場環境と個別企業を精緻に調査し、カタリスト(株価上昇のきっかけとなる要因)を市場に先んじて特定することで、好パフォーマンスが期待される有望銘柄の選択に努めていることだ。

 株価純資産倍率(PBR)の分布を見ると、日本では2025年5月末時点で、45%の企業が「PBR1倍割れ」だ。一方、米国は4%に過ぎない。この差は、日本企業の自己資本利益率(ROE)が約9%と低いことにある。日本株全体を底上げするには、ROEの向上が不可欠だ。

 これに対して東証は2023年3月、上場企業に対して、ROEを引き上げ、企業価値を向上させるように要請した。それから2年が経過し、企業の行動は積極化している。TOPIX500の構成銘柄で、配当支払いと自社株買いを合わせた「株主還元額」を見ると、2024年度は約28兆円(前年度は約20兆円)に増加した。25年度もさらに拡大することが期待される。

 このファンドは、全上場銘柄(約3900銘柄)について、信用/流動性リスクを勘案して、株価が割安な約300銘柄に絞り込んだ後、ファンドマネジャーや経験豊富なアナリストがリサーチ活動を行い、カタリストのある、50~100銘柄程度でポートフォリオを構築している。

 アセットマネジメントOneは、業界最大級の日本株運用体制を擁している。エコノミストやストラテジスが7人、アナリストが27人、ファンドマネジャーが35人だ。企業訪問などのリサーチ活動は年間6000件を超えており、鮮度の高い情報を材料に、日々議論を積み重ねている。

 

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