暗号資産とは何か=値動きの大きさを理解し、登録業者を利用する-楽天ウォレットの松田シニアアナリストに聞く
2025年07月11日 08時30分

金融庁は6月25日、金融審議会総会を開き、暗号資産をめぐる制度のあり方について作業部会をもうけて検討することを決めた。同庁が公表したディスカッションペーパー「暗号資産に関する制度のあり方等の検証」は、暗号資産の喫緊の課題として「情報開示・提供の充実」や「価格形成・取引の公正性の確保」を上げ、「暗号資産取引市場の健全な発展のため、利用者保護とイノベーションの促進のバランスの取れた環境整備が重要」と指摘した。
暗号資産とは何か-。楽天ウォレットの松田康生シニアアナリストに話を聞いた。
◆新しい電子マネー
-暗号資産とは何か


松田氏 インターネット上でやり取りされる、新しい電子マネーの総称だ。代金の支払いに使用できる。国や中央銀行によって発行された法定通貨ではないが、暗号資産交換所で法定通貨と交換できる。
暗号資産は、円やドルのように国がその価値を保証しているものではないが、この技術に興味を持った人々が取引を行う中で自然と価値が認められていった。代表的なものに、ビットコインやイーサリアムがある。
その特徴は、取引や残高を記録するホストコンピューターが存在しないことだ。ブロックチェーン(分散台帳)という新技術を活用することで、銀行やカード会社を経由せず、個人間で24時間365日、直接送金できる。仲介者がいないので、低コストで済む。世界共通の「お金」になるのではないか、と期待する人もいる。
-日本における利用状況は
松田氏 日本暗号資産等取引業協会のまとめによると、2025年1月時点の利用者口座数は延べ1214万口座、利用者預託金残高は約5兆円になっている。複数の口座を持っている人もいるので、名寄せすれは、日本でも400万~500万人が保有していると見られている。
◆大きな価格変動
-リスクや注意すべきことは
松田氏 一つ目は価格変動が非常に大きいことだ。これは、暗号資産が「お金」として設計されているためで、原料費や人件費などが関係するモノの値段に比べると動きやすい。法定通貨の交換レートであれば、国の経常収支や金利差などが材料になるが、暗号資産の場合は、そうしたものも無い。
暗号資産を保有する場合は、こうした価格変動の大きさを理解した上で、どれくらいの量を保有するかを、考えることが大切だろう。
◆登録業者を利用する

二つ目は、犯罪グループが暗号資産交換業者のコンピューターやネットワークに不正侵入して、暗号資産を盗むハッキングのリスクだ。
国は、暗号資産の利用者を保護するため資金決済法を改正し、2017年4月から暗号資産交換業者を登録制にするとともに、利用者への説明義務や利用者資産の分別管理義務などを実施してきた。暗号資産を売買する場合は、金融庁・財務局に登録している業者を利用することが大切だ。
三つ目は、詐欺などの犯罪に巻き込まれるリスクだ。海外の無登録業者を利用したり、SNSで発信された怪しいもうけ話に乗ったりしてはいけない。
◆米国で暗号資産ETFが登場
-暗号資産を巡る国内外の動向は


松田氏 2024年1月に米国で暗号資産のETF(上場投信)が登場した。使い勝手の良さに加えて、米国の財政赤字が拡大しドルの信認に厳しい目が向けられる中で、資産保全のため、金(ゴールド)や暗号資産が注目された。
諸外国を見ると、香港や英国、ドイツ、オランダ、カナダ、豪州などで、暗号資産のETFが設定されている。日本でも金融庁の審議会で、暗号資産を巡る法整備について議論が始まっている。