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アセットマネジメントOneと米マーサー、年金基金等に「包括的資産運用」を提供=運用戦略とリスク管理の高度化、アセットオーナー・プリンシプルで注目

2025年07月02日 08時15分

(左から、成瀬氏、藤原氏、五藤氏、武知氏)画像用(左から、成瀬氏、藤原氏、五藤氏、武知氏)

 みずほフィナンシャルグループは、年金のコンサルティングや運用で世界最大手のマーサーグループと「包括的資産運用(OCIO)」で業務提携した。OCIOとは、機関投資家がアウトソースした資産の運用を受託するサービスの総称だ。メガバンクが海外の大手企業と組んでこうしたサービスを提供するのは、初めて。グループの資産運用会社アセットマネジメントOneを通じて、年金基金や学校法人に提供する。

 インフレ、金利復活、高まるボラティリティーなど、年金基金等を取り巻く運用環境は、大きく転換した。グローバル水準の専門的知見を活用して、①資産運用やリスク管理の高度化 ②分かりやすく迅速な情報開示 ③運用の専門人材の育成-などを実現してもらう。関係者に話を聞いた。

-提携の狙いは

藤原直之氏(アセットマネジメントOne 機関投資家フィデューシャリー・マネジメント本部ポートフォリオソリューション部長) 政府が推進する「資産運用立国」の実現に向けて、家計資産が企業に投資され、その価値向上が家計に還元される「インベストメントチェーン(投資の連鎖)」をより太く、深くすることが大切だ。このチェーンの構成要員の一つである企業年金や学校法人などのアセットオーナーの機能発揮に向けて、お手伝いすることを考えてきた。

 アセットマネジメントOneではこれまでも独自に、外国株式の運用について、アセットオーナーから一括で資産運用を引き受けるサービスを提供してきた。ただ、ほかのアセットクラスにサービスを拡大するに当たって、年金コンサルティングや運用で世界最大手の米国マーサーと提携して、OCIO業務を推進することにした。

五藤智也氏(マーサージャパン ウェルス・コンサルティング・リーダー) 政府の新しい資本主義実現本部事務局は2024年8月、「アセットオーナー・プリンシプル」を発表した。これは、アセットオーナーが受益者の最善の利益を勘案して、その資産を運用する責任(フィデューシャリー・デューティー)を果たしていく上で有用と考えられる原則を定めたものだ。

 日本でも、「アセットオーナー・プリンシプル」の策定が契機となり、資産運用の高度化に向けた対応の一つとしてOCIOに対する関心が高まっている。

 マーサーは、OCIOの受託残高で世界トップであり、幅広く日本のアセットオーナーに提供していきたいと考えている。ただ、全国津々浦々に、確定給付企業年金は1万以上、大学は800校程度、運営されているので、全国にサービスを展開するみずほフィナンシャルグループと連携して、OCIOを案内していく。

-OCIOサービスの中身は

藤原氏 アセットオーナーは「運用戦略の高度化」に向けて、国内外の株式や債券などの伝統的資産に加えて、オルタナティブ(代替資産)やプライベートアセットの組み入れを増やしている。ただ、オルタナティブやプライベートアセットでは、海外の良い運用会社を見つけることや、資産を適切に管理することが上場株式や債券に比べて非常に難しい。マーサー社は既にグローバルにOCIOを展開しており、これらのアセットの運用に強みを持っている。

 「リスク管理の高度化」については、最新のシステムを活用して、オルタナティブやプライベートアセットを含めて、お客さまの運用資産全体の状況やリスクを把握することが重要だと考えている。そうした取組みを通じて、年金基金の母体企業の財務担当役員や、受益者である母体企業の従業員に対して、「迅速で分かりやすい情報提供」をサポートできる。

 次に「運用の専門人材の育成」だが、アセットオーナーの中には、長年にわたって運用を担当した人材が高齢化しているところがある。この人が引退すると高度な知見の継承が難しくなる。反対に、運用担当者が2~3年で人事異動するため、オルタナティブなどの専門知識を深め、運用の高度化を推進することが難しいところもある。OCIOを活用することで、専門人材を育成し、運用体制を高度化してもらえる。

-マーサーについて

武知昌史氏(マーサー・インベストメンツ プロダクト・マネジメント部シニア・インベストメント・コンサルタント) 組織・人事、福利厚生、年金の数理計算や資産運用コンサルティングなど総合的なサービスを世界130カ国のクライアント企業に提供している。こうした中で、資産運用コンサルティングの助言残高、OCIOの運用残高はいずれも世界トップだ。

 OCIOは、海外で広く普及しており、1990年代から提供されてきた。本格的に拡大したのは、2008年のリーマン・ショック以降だ。年金基金の積立比率が低下する中で運用戦略やリスク管理を高度化する方法の一つとしてOCIOが採用された。利用者は、企業年金から始まり、大学基金や保険会社などに広がっている。

五藤氏 マーサーは「お客さまのポートフォリオのパートナー」であることを目指している。アセットオーナーそれぞれに資産の状況も運用目標も異なるため、お客さまごとにカスタマイズしたサービスを提供し、お客さまに寄り添ってサポートしている。また、コンサルタントとして長い経験を有しているため、運用商品について、グローバルにリサーチ・プラットフォームを展開している点も特徴だ。

-企業年金の現状は

藤原氏 アセットオーナーの資産運用業務は多岐にわたる。運用目標である予定利率を設定し、それに対応した政策アセットミックスや運用戦略を決定する。次に、これを実現するために運用機関を選定し、資産配分を決め、運用状況をモニタリングする。さらに、関係者にレポーティングを行い、ポートフォリオのリバランス(配分割合の見直し)を実施し、必要があれば運用機関を入れ替える。OCIOを利用することで、こうした業務をアウトソースできる。

 日本経済がインフレ環境に転換したことで、企業年金はより高い予定利率を設定し、リスク資産への配分を増やすことが必要とされるだろう。それに伴いリスク管理も重要性を増す。OCIOを活用して、運用戦略やリスク管理を高度化する必要が出てくると見ている。

成瀬宏氏(アセットマネジメントOne戦略運用部マルチマネジャー業務開発部長)アセットマネジメントOneは、グローバルの資産についてリサーチ担当者を配置し、海外の運用会社の発掘にも力を入れている。特定のアセットクラスについて、有能なマネジャーの運用商品を提供することは十分に可能だ。

 だが、お客さまのニーズが多様化し、リスクコントロールが複雑化する中で、複数のアセットクラスを組み合わせた場合に、どのファンドマネジャーを選定することがお客さまのリスク・リターンを最適化するか-といった観点になると、非常に高度な判断が必要になる。また、伝統資産とオルタナティブを組み合わせたリスク評価やレポーティングについても専門的な知見が不可欠だ。マーサー社と連携することで、お客さまにより良いポートフォリオを提案してきたい。

 

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