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日本株、「長期上昇トレンド」は変わらず=「増益見通し」や「賃上げ継続」などを背景に-三井住友DSアセットの市川氏

2024年09月27日 14時00分

三井住友DSアセットの市川氏

 三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩チーフマーケットストラテジストは、「2024年度後半の日本株展望~国内外の注目材料を整理する~」をテーマに、勉強会を開催した。この中で、日本株について「増益見通しや賃上げの継続などを背景に、日経平均株価の長期上昇トレンドに変わりはない」と指摘、今年12月末で3万9600円、来年12月末で4万5400円を予想した。主なポイントは以下の通り。

◆日本経済は緩やかな成長軌道に

 世界経済は、潜在成長率(3.2%)近辺での落ち着いた成長が続くだろう。日本の実質GDP成長率は、今年(2024年)プラス0.4%、来年(2025年)プラス0.7%と予想する。賃金の増加や堅調な設備投資意欲などを背景に、緩やかな成長軌道をたどると見ている。

 一方、米国の実質GDP成長率の見通しは、今年のプラス2.6%から、来年はプラス1.9%に減速する見通しだ。ただ、リセッション(景気後退)は回避し、ソフトランディングすると見ている。

 大きな金融ショックが発生するリスクは低いだろう。引き続き、中東やウクライナ情勢などの地政学リスクと、原油価格等の商品市況の動向に注意が必要だ。

◆主要な株価指数は回復続く

 「MSCI ACWI(MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス)」などの主要な株価指数は、8月上旬の急落から回復しつつある。米国株の利益見通しは良好で、世界の半導体市況も回復を続けている。米国のダウ工業株30種平均は、今年12月末で4万1200ドル、来年12月末で4万4400ドルと予想している。控えめの数字になっており、これらを上回ることも可能だろう。

◆米国の利下げと大統領選

 米連邦準備制度理事会(FRB)は9月に開催した連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を50ベーシスポイント引き下げることを決めた。当社は、今後の見通しについて、2024年内に25ベーシスポイントの利下げを2回、2025年は25ベーシスポイントの利下げを4回、それぞれ実施すると予想している。

 11月の米大統領選は、民主党のハリス氏と共和党のトランプ氏が接戦だ。一方、議会については、上院は共和党、下院は民主党が過半数を占めると予想している。どちらの候補が勝利しても、上院と下院の「ねじれ議会」が続くため、極端な政策が取られることはないだろう。

◆日本の利上げと自民党総裁選

 日銀は7月の政策決定会合で、政策金利(無担保コール翌日物レート)の誘導目標を「0.25%程度」に引き上げることを決めた。日銀は「経済・物価の見通しが実現する確度が高まれば、金融緩和の度合いを調整する」としており、慎重に経済動向を見極める方針だ。当社は、今後の金融政策について、2024年12月に誘導目標を「0.5%程度」に、2025年7月に「0.75%程度」に、2026年1月に「1.00%程度」に、それぞれ引き上げると予想している。

 自民党の新総裁には、①「資産運用立国」の継続 ②日銀の独立性の尊重 ③中長期的に日本経済の潜在成長率を引き上げる政策 ④海外投資家への分かりやすいアピール-を求めたい。

◆為替はドル安・円高局面に

 為替相場は、投機的な円売りポジションが解消し、一本調子のドル高・円安が終了したと見ている。円相場は、米国が金融緩和を、日本が引き締めを進める中で、ドル安・円高方向に動くだろう。2024年12月末に1ドル=139円、2025年12月末に同135円を予想している。

◆日本株、業績や企業改革が支援材料に

(出所)三井住友DSアセットマネジメント(出所)三井住友DSアセットマネジメント(クリックで表示)

 日本株の8月上旬の急落は調整の範囲であり、過度な懸念は不要だろう。企業自身の業績見通しは控えめだが、市場は増益を予想している。また、資本コストや株価を意識した経営に向けて、日本企業の意識が大きく変化している。賃上げについては、日本企業の労働生産性が向上しており、当社は2025年も平均賃上げ率を5%程度と予想している。投資家動向では、事業法人の自社株買いが相場を支える一因になるだろう。

 

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