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初心に返って目的を確認しましょう=モーニングスター・ジャパンの島田氏に「相場急落時の心構え」を聞く

2024年08月05日 15時00分

島田知保チーフエディター

 5日の東京株式市場は、日経平均株価が前週末比4451円安の3万1458円となり、前週末(2日)の2216円安に続き、連日の急落になった。モーニングスター・ジャパン の島田知保チーフエディターに、「相場急落時の心構え」を聞いた。

-株式市場が大きく下落しています。どんなことを考えて、どのように対応するのが良いでしょうか。

島田氏 初心に返って、何を目的に投資をはじめたのかを確認しましょう。将来のための資産作りが目的であったのなら、目先の市場の変動に動揺することはありません。

 それでも心配なら、情報サイトで日経平均株価でも東証株価指数(TOPIX)でもよいのでチャートを見ると良いでしょう。「1日」の表示を「最大」に変えるだけで、市場に向き合う時間軸がぐっと伸びます。世界金融危機では2年にわたる下落が見えますが、ここで投資をやめなかった人が、投資信託の積み立て投資を続けて老後資金の目標額を達成しているのです。

 「株価が下がった」と騒いでいますが、今回はほんの短い期間で年初の水準になった程度ですし、下落が続くとしたら「長いバーゲンセール」になったと構えることもできます。

 ただし、本当に自分が想定していたより「恐ろしい」と思うならば、もしかしたらそれは投資金額が多過ぎたのかもしれません。あるいは、目先の変動に極端に弱いメンタルだと自覚したならば、投資対象を株式のみからもう少し変動性の小さなバランス型などの商品に仕切りなおすことも検討する必要があるかもしれません。

 将来の数百万円、数千万円を目指すのであれば、そして投資を続けられる期間が10年かそれ以上あるのならば、あまり心配する必要はありませんが、自分にとっての大金でとても耐えられない、というのであれば投資方針そのものを見直すことも考えましょう。

 投資における最大のリスクとなる「伏兵」は、「自分の心の動揺や恐怖」と「もっと!と思う欲」です。日経平均株価が1割下がったら、大好きな会社を思い描いてください。その会社の価値や魅力は昨日と今日で1割減りましたか?そうでないなら、淡々と同じことを続けていくだけです。

-積み立て投資を継続する意義や効果を改めて確認させてください。

島田氏 積み立て投資は手っ取り早く資産を作る方法ではありません。少額の資金で無理をせず投資という手段を利用した、誰にでもできる資産作りの方法です。ですから、ゴールは10年、20年後の話で、日々の市場の変動を読んで大もうけしようとしているわけではない、ということを肝に銘じてください。

 大もうけを目指すのではなく、将来のための資産をのんびりつくっているのですし、そのための方法としてもっとも心を乱さずに、市場リスクと向き合えるのが積み立て投資の良いところです。定額買い付けなら、同じものをより安い値段でたくさん仕入れられるのが、市場が下がっている時期です。ここで投資をやめずに資産の口数を増やして仕込んでおくことで、市場回復時にバネのように力が発揮されるわけです。

 実際、リーマン・ショックからの世界金融危機では、積み立て投資をしていても投資成果がプラスに回復するまで5年ほどの時間がかかりました。でも、その間にやめてしまったら「もう投資なんかしない!」とすべてが無駄になってしまう。そういう方が投資初心者のコツコツ投資家でも3分の1ほどを占めていたように体感しました。そこであきらめずに続けた方だけが、今人生の成熟期を迎えて資産を積み上げることができたのです。

 長期投資、資産作りは、何よりも途中でリタイアせずにコツコツと完走することが大切です。世界の企業が長期で、私たちのニーズを満たし、社会の課題を解決しながら成長していく世界を信じているのなら、株式市場に投資をし続けることができるでしょう。

 

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