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「FTSE世界国債インデックス」、24カ国の国債に分散投資=A格以上、再現性・包括性を重視

2024年06月17日 09時00分

売野隆一氏(売野氏)

 先進国債券のベンチマークとして日本で広く使われる「FTSE世界国債インデックス」を算出する調査会社「FTSE RUSSELL(フッツィー・ラッセル)」の広瀬健氏と売野隆一氏に、債券や株式のインデックスについて話を聞いた。

-FTSE RUSSELLとは。

広瀬氏(インデックス投資部門日本代表) FTSE RUSSELLは、ロンドン証券取引所グループ(LESG、エルセグ)の傘下で、インデックスの算出やESG(環境・社会・ガバナンス)調査などを行っている。世界70カ国以上で、数千のインデックスを算出し、世界の投資可能な市場の98%をカバーしている。FTSE RUSSELLのインデックスを参照する資産は約15兆9000億ドルに上る。

-債券のインデックスは。

売野氏(債券、為替、商品部門プロダクトマネジメント&リサーチ日本責任者) 当社が算出する「FTSE世界国債インデックス(WGBI、ウィグビィー)」は、例えば、国民の老後を支える公的年金を管理する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が使用するなど、外債ベンチマークとして資産運用の重要なインフラになっている。

 この指数は、1984年から算出している。格付けがA格でおよそ50億ドル以上の規模の市場の「現地通貨建て投資適格利付国債」のうち「残存期間が1年以上」の銘柄を対象としている。再現性と包括性のバランスを考慮しながら、市場アクセスの容易さなど17のKPI(重要評価指標)を満たした24カ国の国債を組み入れている(2024年6月時点)。

-WGBIの概要は。

(出所)FTSE RUSSELL(出所)FTSE RUSSELL(クリックで表示)


売野氏 組み入れウェイトを見ると、トップは米国で約42%、次いで日本が約10%、中国が約9%、フランスやドイツなどユーロ諸国が約3割を占めている(2024年6月時点)。このうち中国は、2021年にWGBIに組入れられた後もウェイトが急上昇しており、日本と中国の順位の入れ替わりが射程圏内に入ってきた。このほか、ポーランド、マレーシア、メキシコなどの新興国の国債も入れている。

 パフォーマンスを見ると、2023年は欧米各国の中央銀行が利上げに動いたことで、リターンが低下した。ただ、円ベースでは、為替が円安に振れたことでリターンを伸ばした。

-WGBIの話題は。

売野氏 ポルトガルの国債が、2024年11月からWGBIに再び組み入れられる。同国の国債は2012年に投機的格付けになって除外されたが、今年3月に「A-」に引き上げられた。2022年のニュージーランド以来、2年ぶりに参加国が増加する。

 また、韓国は、WGBIへの組み入れについて検討が続いている。海外投資家が韓国国債への投資を容易にできるような取り組みを継続して進めており、これによりWGBI組入れの採用基準を満たすことが可能になる。

-債券投資の意義は。

売野氏 当社のインデックスを使い「外国株式」「外国債券」「日本株式」「日本債券」という伝統4資産と、それに分散投資した「均等4資産」の年間騰落率について、2006年からの履歴をまとめた。

 ここ数年は、株式市場が好調で、外国株式や日本株式がランキングの上位を占めている。しかし、ボラティリティ(価格変動)が大きく、リーマン・ショックのあった2008年を見ると、外国株式はマイナス53%、日本株式はマイナス42%と大きく値下がりした。

 外国株式や日本株式は、大きなリターンが期待できるが、リスクも大きい。一方、外国債券は「ミディアムリスク、ミディアムリターン」、日本債券は「ローリスク・ローリターン」になっている。「均等4資産」の履歴をたどると、分散投資により安定したリターンを期待できることが分かる。

-株式インデックスの状況は。

広瀬健氏(広瀬氏)


広瀬氏(インデックス投資部門日本代表) 米国では、株式のインデックスとして「S&P500」と並んで、当社が算出する「Russell米国株インデックス」が、投資家の資産運用に利用されている。日本には「Russell米国株インデックス」を参照するインデックスファンドが無いので、日本の投資家の皆さまに新たな選択肢を提供できるように、関係者に働きかけている。

 「Russell米国式インデックス」は、1984年に開発された。大型株を対象とした「Russell 1000」、中小型株を対象として「Russell 2000」、二つを合わせた「Russell 3000」などがある。約10.5兆ドルの資産がこれらのインデックスに基づいて運用されている。

 米国経済は非常にダイナミックであり、新しい企業が次々と誕生し、成長している。このため、インデックスの構成銘柄をタイムリーに入れ替えて、市場の状況を反映することが大切だ。

-「Russell」と「S&P500」の違いは。

(出所)FTSE RUSSELL(出所)FTSE RUSSELL(クリックで表示)


広瀬氏 銘柄の組入基準が異なる。「Russell」は、時価総額に基準を設けている。「S&P500」は時価総額に加えて「直近を含む4四半期連続でプラスの利益」を求めている。この結果、例えば、マイクロソフト社がインデックスに追加された時期は、「Russell」が1986年12月、「S&P500」が1994年6月だった。組み入れ時期の違いにより、パフォーマンスに差異が生まれる要因になっている。

 

 

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