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「次世代の米国経済の主役」に投資=残高が1000億円を突破-三菱UFJアセット「メジャー・リーダー」の西氏に聞く

2024年05月14日 08時00分

西直人氏

 三菱UFJアセットマネジメントが運用する「次世代米国代表株ファンド〈愛称:メジャー・リーダー〉」は2024年3月、純資産総額が1000億円を突破した。株価上昇に加え、新しい少額投資非課税制度(NISA)のスタートで資金流入が増加している。このファンドの運用方針や米国株式の魅力を、株式運用部 海外株式グループ エグゼクティブ ファンドマネジャーの西直人氏に聞いた。

◆中・大型株、30銘柄程度を厳選

-ファンドの運用方針は。

西氏 このファンドは、米国のニューヨーク証券取引所とNASDAQ(ナスダック)市場に上場している株式を投資対象として、「次世代の米国経済の主役となり得る」とわれわれが判断した企業に投資するファンドだ。

 米国の代表的な株価指数であるダウ・ジョーンズ工業株価平均(ダウ工業株30種)を参考にして、時価総額が100億米ドル(1.5兆円)以上の中・大型株の中から、収益性や業界動向などを比較検討して、30銘柄程度に投資している。

 一般的なプロの投資家は、来期、再来期というように、1~2年後の業績予想に基づいて銘柄を選択することも多い。われわれは3~5年、さらにそれ以上先の業績を予想して、中長期に成長を続ける企業かどうかを評価し、そうした銘柄を長く保有することを投資哲学としている。

-「次世代の米国経済の主役となり得る」とは。

西氏 「次のダウ工業株30種に入るような銘柄」と言うこともできるだろう。ただ、われわれの目的は、次の構成銘柄を当てることではない。「次世代の米国経済の主役となり得る企業」を評価することで、中長期に成長し、株価上昇が期待できる銘柄に投資している。現在のポートフォリオを見ると、われわれが独自の目線で選んだ、ダウ工業株30種に入っていない銘柄が、半分以上を占めている。

◆米国は「中・大型株=成長株」

-なぜ、中・大型株なのか。

西氏 米国株式の特徴の一つは、中・大型株が成長株である点だ。日本では、成長株と言えば中・小型株をイメージするが、米国はそうではない。過去を振り返ると、年率2割程度のペースで売上高と利益を増加させている中・大型株がたくさんある。

 中・大型株は、ビジネスモデルがしっかりしていて、競争力のある企業が多い。そうした銘柄が成長するのだから、投資しない手はない。当ファンドが、投資対象銘柄を「時価総額100億米ドル以上」としているのは、そうした分析に基づいている。

 業種については、これから伸びる次世代の産業だけでなく、伝統的な産業の企業であっても、強いビジネスモデルを持ち、これからも中長期に持続的に成長し、米国を代表する企業であり続けるとわれわれが判断する銘柄に投資している。

◆投資哲学を共有、多様な視点で議論

-運用チームは。

次世代米国代表株ファンド(愛称:メジャー・リーダー)次世代米国代表株ファンド(愛称:メジャー・リーダー)(クリックで表示)

西氏 さまざまなキャリアを持つ6人でチームを作り、このファンドを担当している。米国株を30年以上担当している者、日本株やヘッジファンドを担当したことのある者、アジアに長く駐在していた者など、多様な視点を持ち寄り、全員が投資哲学を共有して、長期の目線で運用している。年齢的にも、4人の中堅・熟練社員と2人の若手社員という構成だ。

 リモートを活用しながら、毎日ミーティングを開いている。超長期の目線でストーリーを立てて運用しており、四半期ごとの決算発表で大きな流れに変化がないかを確認したり、大きな流れそのものを改めて確認したりしている。また、各人が注目する銘柄や、企業とのミーティングの報告などを行っている。

◆分配金を評価する声

-純資産総額が1000億円を突破した。

西氏 米株の上昇に加えて、新NISAの成長枠対象ファンドになったことで、資金流入が拡大している。このファンドは、3カ月に1度の決算で、基準価額の上昇分を配当してきた。NISA口座で購入いただいているお客さまからは「非課税で分配金がもらえるメリットは大きい」と評価をいただいている。

 資産の取り崩し方法については、お客さまが自分で判断してファンドの一部を定期的に解約する方法もあるが、それぞれに多忙な方も多いことから、ファンドの利益を分配金で受け取る方法も一つの合理的な仕組みだろう。利益をファンド内にとどめて複利で運用する効果は得られないが、そのことを理解した上で、分配金を出すファンドを利用するのであれば、それもお客さまの選択肢の一つだろう。

◆「決算・分配金のお知らせ」を作成

-ディスクロージャーの工夫は。

西氏 運用チームが何を考え、どのような銘柄に投資しているかを、しっかりと伝えたいと考え、目論見書に加えて、ホームページでもより詳細に運用の考え方を紹介している。また、3カ月ごとの決算に合わせて「決算・分配金のお知らせ」を出しており、投資銘柄やセクターについて詳しく説明している。さらに月報には、保有している30銘柄を全て開示し、それぞれの企業の事業内容や注目点のコメントを一言ずつ載せている。

-投資家とのコミュニケーションを重視する理由は。

西氏 基準価額が下落したときに、慌ててファンドを売却していただきたくない。お客さまに安心して保有してもらえる情報開示を行っていきたい。

 このファンドは、米国の著名な企業の株式を多く組み入れているので、ポートフォリオの構成銘柄を見ると、年配の方だけでなく、若い投資家の皆さまにも親しみを持って手に取っていただけるファンドになっているようだ。

◆拡大するGDPと巨大な市場

-米国株の魅力は。

西氏 米国株は、過去50年にわたって上昇基調を維持してきた。同時に、企業利益がしっかり拡大してきたことを強調したい。米株の上昇は、利益に基づくもので、バブルではない。

 さらに重要な点は、「なぜ、米国企業が利益を上げることができるか」を考えることだ。米国の国内総生産(GDP)は世界の4分の1を占めており、その規模は約3600兆円(2023年)と巨大だ。過去10年間に約1.5倍に拡大している。米国の人口は今後も増加すると予想されており、GDPはさらに拡大するだろう。この巨大な市場で、売り上げを伸ばすことで、中・大型株でも大きく成長することができる。

 さらに、米国にはイノベーション(技術革新)を生み育てる環境がある。例えば、どんなに厳しい市場環境の中でも、イノベーションの芽があれば、しっかりとファイナンスが行われ、大きな産業に育つ。人工知能(AI)はその好事例だ。アニマルスピリット(企業家の野心的な意欲)は、今も健在だ。

◆出会いを通じて対話が広がる

-企業訪問の重要性は。

西氏 投資先企業を決定する際、1対1の対面取材を必ず行っている。米国に行くことの重要性は高い。仮説立ててディスカッションし、理解を深め、投資する確信度を高める。現地に行くと、出会いが生まれ、対話の機会が広がる経験を数多くしていきた。

-日本人が米国株を運用するメリットは。

西氏 米国株の運用は、米国の運用会社が良いと考える人もいるだろうが、私はそうは思わない。日本人が日本から米国株式を運用するメリットは、細か過ぎる論点にはまり込まず、ある程度、距離をとって投資の意思決定ができることだ。

 中長期の目線で、持続的に成長する企業を評価する際に、例えば次の米大統領が民主党と共和党のどちらになるか、というような、企業の競争力と関係のない議論の深みにはまってしまうことにはあまり意味がない。ノイズから一歩遠ざかって、自分たちの投資哲学に沿って、外から米国企業を見ることができる。投資哲学に沿った運用体制となっていることが重要だ。

◆投資家と同じ方向性で喜びを共有

-ファンドマネジャーの魅力は。

西氏 私は好奇心が強い方なので、ファンドマネジャーは、とても面白い仕事だと思う。ユニークな企業がたくさんあって、さまざまなビジネスモデルに出会える。財務を分析し、中長期の成長予想を立て、運用チームの仲間と議論をする。持続的な成長が期待される企業を見つけた時には興奮を覚える。また、実際に投資して予想通りに企業の利益が伸び、株価が上昇すれば喜びも大きい。

 この仕事の良いところは、われわれの喜びやインセンティブの方向性が、投資家の皆さまと完全に同じ方向を向いていることだ。われわれのがんばりが運用成果を生み、それが投資家の皆さまのお役に立つことが、やりがいになっている。

 

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