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資産運用は、より良い人生を送るための手段=大和アセット・資産運用普及センターの長野センター長に聞く

2024年05月13日 10時00分

長野吉納センター長

 大和アセットマネジメントは、金融経済教育の実践や、資産形成に関する調査・分析を行う「資産運用普及センター」を社内に設立した。長野吉納センター長に、設立の狙いや今後の活動について話を聞いた。

-設立の狙いは。

長野氏 運用会社は、金融商品を提供し、パフォーマンスを上げれば良いというだけの時代ではなくなった。社会がより豊かになるために、資産運用会社が貢献できることとして、「資産運用普及センター」を4月に設立した。

-センターの構成は。

長野氏 二つのグループがある。一つは「金融経済教育グループ」で、学校や職域で金融経済教育を行う。もう一つは「資産形成リサーチグループ」だ。マクロの視点で、「投資家の動向」「日本の家計の資産形成の動向」「資産形成に関わる制度」「海外動向」など、政策立案に資する情報をアウトプットしていきたいと考えている。

-センターのミッションは。

長野氏 資産運用の重要性をこれまで以上に広く国民に普及することで、政府が推進する「資産運用立国」を実現する推進役になることだ。さらに結果として、当社のプレゼンスを引き上げていきたい。

-今後の活動は。

長野氏 金融経済教育は、当社の特色を出した取り組みを行いたいと考えている。当社独自のカードゲームを開発した。より実感を持って体験できるコンテンツを提供したい。また、学生を指導する先生方への情報提供やコンテンツ提供を強化していきたいと考えている。

 リサーチについては、定期的にマクロの視点からリポートを出していきたい。

-これまでの教育活動は。

植木利佳子氏(同センター金融経済教育グループ課長代理) 昨年度は中高生や、社会人になったばかりの20歳代前半世代や、パパやママになる20~30代を対象に、金融教育を提供した。

 中学校では、テーマを決めてファンドを立ち上げる「投資信託クリエーターズカップ」を開催した。それぞれが選んだテーマについて、企業とのつながりを調べて、そうした企業に投資するファンドを作った。当社のファンドマネジャーも参加して、優秀賞には「脱炭素」「宇宙」「円安」をテーマにした3ファンドが選ばれた。生徒たちは、自分たちが希望する未来を実現する手段として、「投資」があることに気づいてもらえた。

 今年4月に独自開発したカードゲームのタイトルは「みんなのマネプラ!」だ。登場人物になりきってライフプランを実現していく内容になっており、楽しみながらライフプランニングの考え方や重要性を理解できるように工夫した。また、自分の収入だけではお金が足りず、投資信託や株式で資産運用することで収入を増やして、ライフイベントを達成するように構成しており、投資の意義を感じてもらえるようにした。

長野氏 金融教育の最終目標は、単に資産運用や金融商品を知ってもらうことではなく、「その人その人がより良い人生を送ってもらうこと」だ。その手段としてお金であり、投資や資産運用があるので、投資ゲームにならないように、「ライフイベントを実現するために資産運用も必要ですよ」というメッセージを実感してもらう内容にしている。

 社会人向けのセミナーでは、DCやiDeCo(イデコ)など確定拠出年金に関連して、セミナーを開催した。「なぜ投資が必要か」「何十年にわたって投資する際の注意点」など、一般的な投資セミナーとは違った視点で情報提供している。

-運用会社の強みは。

長野氏 当社は、マーケットとやり取りする会社だから、例えばインデックスを上回る超過収益を上げるなど、マーケットと勝負して勝たなければいけない。そのことの大変さを痛いほど知っている。これが強みだと思う。

 一般の人は、われわれと違って「マーケットと勝負しなくていい」というアドバンテージを持っている。他の人と競うのではなく、自分の目標に向かって資産形成できればいい。無理をする必要はない。こうした立場を理解して、自分の取れるリスクに応じた資産運用を考えていただくことが大切だ。

 資産運用をするのは「自分にとって良い人生を送るため」なので、「これくらいあったらいいな」という目標金額に沿って、資産運用してもらえばいい。

 「儲けよう」を思うと過剰にリスクを取りがちだが、それでは長続きしない。たまたま、うまく行くことがあっても、それを続けることは難しい。より長期での資産運用を考え、「長期・分散・積立」などの基本をしっかりと伝えていきたい。

 資産運用のポイントは「『投資』してください。『投機』しないでください」という言葉に尽きるように思う。投資と投機の違いについては、いろいろ説明の仕方があると思うが、私は「ドキドキするのは投機、ドキドキしないのは投資」だと思っている。

 ドキドキするのは、どこかに運まかせで、射幸心をあおるところがあるためだ。基本的な人生設計に関わる資産運用において、投機は望ましくない。「長期・分散・積立」は、ある意味、ドキドキしないし、面白くないかもしれないが、それをしっかり継続することが、投資だと思う。

 

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