日本株アクティブETFを米国で上場=日本勢で初めて、海外投資家の関心拡大が追い風に-三井住友DSアセット
2024年04月22日 08時00分
三井住友DSアセットマネジメント(SMDAM)は、日本の運用会社では初めて、米ニューヨーク証券取引所に上場した日本株式のアクティブETF(上場投信)の実質的な運用を担当する。ファンド名は「Rayliant SMDAM Japan Equity ETF」と社名の略称を冠した。サブアドバイザーとして投資銘柄の選定等を行う。海外投資家の日本株への関心が高まる中で、タイムリーな米国上場になった。
このプロジェクトを主導した国際営業部門長 執行役員の原田靖大氏と、運用を担当するシニアファンドマネージャーの横山智子氏に話を聞いた。
-アクティブETFとは。
原田氏 ETFのうち、インデックスへの連動を目指すもの以外を、アクティブETFと呼んでいる。一般的なアクティブファンドと同じように、投資妙味のある株式を選択してポートフォリオを組んで運用し、その証券を取引所に上場して流通市場で売買できるようにしている。
ETFなので、構成銘柄の日次開示が義務付けられるなど透明性が確保されている。また、高い流動性を持った市場で、リアルタイムで売買できる。一般的な投資信託(ミューチュアルファンド)と比較してコストが低く、米国では税制上のメリットも大きい。
-米国に上場させた狙いは。
原田氏 米国のETFの市場規模は約1300兆円(2023年末)と巨大だ。このうちアクティブETFの95兆円程度だが、ここ3~5年で急速に拡大し、注目も高まっている。こうした市場に新規参入することで、当社の運用資産の拡大を目指している。
日本株は長い間、なかなか海外投資家に関心を持たれることがなかったが、日本経済がデフレから脱却し、官民を挙げてコーポレートガバナンスの向上に取り組んだことで、海外投資家の注目を集めている。今後、活発な取引が期待されることも、世界の投資家が集まる米国で日本株のアクティブETFを上場させた理由だ。
-海外投資家の日本株への注目度は。
原田氏 著名投資家のウォーレン・バフェット氏が昨年4月、日本株の保有を増やすと発言したことが、関心を高めるきっかけになったが、日銀がテーパリング(量的緩和の縮小)を発表した頃から、少しずつ関心が広がっていた。
海外投資家の中には、自ら東証や日本企業を訪問して変化の状況を調査しているところもあれば、日本株の急騰や大幅な円安を見て、投資妙味を感じ始めた投資家もいる。また、米国株のバリュエーションの高さや、中国株の調整を見て、分散投資の対象として日本株に注目している投資家もいる。
日経平均株価は2月、34年ぶりに史上最高値を更新し、一時4万円台に上伸した。今後も日本株はサステナブルに上昇し、アルファー(超過収益)を得ることができると考えている海外投資家は多いと思う。海外投資家からは、アベノミクスが発表された2013年を上回る件数の問い合わせが、当社に寄せられている。
-パートナー企業との役割分担は。
原田氏 ファンドの設定は、香港の運用会社レイリアント・グローバル・アドバイザーズ(RGA)が担当した。この会社は、高度な数理計算を駆使してポートフォリオを作成するクオンツ運用を得意としており、ボトムアップリサーチによる銘柄選択に強みを持つ当社と得意分野が異なる。
RGAは既に、米国で3本のアクティブETFを上場し、営業活動を行っている。このプラットフォームに当社が運用助言を行う日本株アクティブETFを乗せることにした。
米国のETF市場は、日本と投資家層が大きく異なり、7割が個人投資家、3割が機関投資家というイメージだ。個人投資家がIFA(独立系ファイナンシャル・アドバイザー)の助言でETFを購入するスタイルが定着している。RGAは、IFAとネットワークを作り、情報提供を実施して、アクティブETFの顧客基盤を作り上げている。
当社の役割は、ポートフォリオの構成銘柄を指定する投資助言だ。RGAが、売買・執行を行い、ETFをローンチした。米国で上場している日本株アクティブETFは、このファンドを含めて2本になる。日本の運用会社が、米国で上場している日本株アクティブETFの実質的な運用に携わるのは、日本初の取り組みになる。
-ファンドの運用方針等は。
横山氏 このファンドは、約30銘柄に厳選投資する集中型のポートフォリオになっている。3~5年の中長期的な成長テーマのトレンド分析を行い、伸びる市場を探す。その上でこうした市場の中で成長できる企業を見つけ出して投資する。
銘柄選定に当たっては「利益成長の持続性」に着目している。バリュー(割安)・グロース(成長)で言うと、グロース型のファンドになる。大型株から中小型株まで幅広い対象から、投資銘柄を選定する。
この運用手法は当社では1999年から行っており、超過収益を生み出してきた。成長テーマは、例えば、生成ĄI(人工知能)や電気自動車(EV)であったり、防災減災を含むインフラ再構築だったり、さまざまなテーマを検討しており、こうしたテーマの関連企業を見つけ出し、企業取材して投資先を絞り込んでいる。
テーマに沿って、トップダウンで関連する企業群を探し出す。一方で、ボトムアップのリサーチを行い、クォリティーが高く、競争優位性を持った企業に投資する。これまでの運用の蓄積で、テーマとその関連企業の豊富なデータベースを保有しており、私が所属する運用チームの強みになっている。
-日本株の魅力とは。
原田氏 日本経済は構造変化を起こしている。まだ始まったばかりだ。マクロ的には日本経済はデフレからインフレに転換しようとしている。日本企業はこれまで投資を抑制しダウンサイジングしてきた。生き残った企業はかなり筋肉質で、キャッシュをバランスシートの中に抱えている。また、安いコストで、良い商品を作り、良いサービスを提供できる。
こうした中、日本でも期待インフレ率が徐々に上昇している。国民がインフレを受け入れ始めたことで、モノの値段を上げることができるためだ。その結果、投資を行い、賃金を上げ、消費が拡大するという良い循環が回り始めた。日本経済も、日本企業も、成長のスパイラルに入ったと見ている。
横山氏 日本株の魅力としては、日本経済がデフレから脱却したことが、一番大きいだろう。さらに、新しいNISA(少額投資非課税制度)のスタートで、国内の個人投資家も投資に対する関心を高めており、日本株市場全体が盛り上がってきた。
日本企業は大きく変化している。私たちのような機関投資家に対してさまざまな問い合わせが寄せられるなど、対話が双方向になり、充実してきたことを感じる。事業説明会を開き、情報開示を充実化する企業や、自社株買いや配当性向についてもより真剣に検討する企業が増えている。