日本のインパクト投資が急拡大=6割増の5126億円、社会・環境の改善目指す
2021年04月09日 12時22分
社会的課題の解決を目指すインパクト投資の2019年度末の国内残高は、前年比61.2%増の5126億円に急拡大したことが、金融機関や投資家へのアンケート調査で分かった。調査を取りまとめた社会変革推進財団(SIIF)の青柳光昌専務理事は、現状について「これから市場として成長していく段階にあり、『インパクト投資を増やしていく』とする回答が多かった」と話している。
インパクト投資とは、社会や環境への良いインパクト(影響)と、金融面でのリターンの実現を同時に目指す投資手法で、国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)の達成に寄与する行動として注目されている。
調査は昨年9~12月、国内の金融機関や投資家591社に調査票を配布し、75社から回収した。2013年に英国のキャメロン首相(当時)の呼びかけで設立された国際組織の日本支部であるGSG国内諮問委員会の監督の下、SIIFが調査・分析した。
調査では、インパクト投資残高(5126億円)の内容を分析した。このうち、インパクト投資の定義を厳密に適用し、投資家とインパクト評価の内容を共有しているものだけを抽出すると残高は3287億円だった。一方、公開情報も含めてインパクト投資を目指して設計・販売されている金融商品を加えると、日本のインパクト投資市場の最大推計値は2兆6400億円になるという。
青柳専務理事は、今後の課題として「社会や環境へのインパクト評価や、それを次の行動に取り込むマネジメントを詳細に見ると、アプローチがまだまだ断片的で体系化されていない」と指摘、さらなる改善を求めた。
報告書では、急速に普及しているESG投資とインパクト投資を比較した図表を掲載している。ESG投資を「環境(E)社会(S)ガバナンス(G)の要素を考慮することで、長期的なリスクの削減と企業価値の最大化を意図するもの」、インパクト投資を「特定の社会的課題の解決を目的とする明確な意図を持ち、課題解決度を社会的インパクト評価で可視化するもの」とそれぞれ定義した上で、両者の違いについて「横軸の左端に『(経済的なリターンを意図する)一般的な投資』、右端に『(経済的リターンを目的としない)一般的な寄付』を置くと、その二つ間にESG投資とインパクト投資が一部重なり合いながら、位置づけられる」(青柳専務理事)と分析している。
報告書はGSG国内諮問委員会とSIIFのホームページで公開している。
【ホームページ】GSG国内諮問委員会 https://impactinvestment.jp/index.html
【ホームページ】SIIF https://siif.or.jp/