新NISAで「インド株ファンド」が人気=東京海上AMインターナショナルの秋澤氏に聞く
2024年02月29日 08時15分
新しいNISA(少額投資非課税制度)で、インド株ファンドが人気だ。東京海上アセットマネジメント・インターナショナルのCIO(チーフ・インベストメント・オフィサー)でシンガポールに駐在し、「東京海上・インド・オーナーズ株式オープン」を運用する秋澤宏典氏に、インドの現状やファンドについて聞いた。
-インドの特徴は。
秋澤氏 インドはとても魅力的な国だ。①世界一の総人口と豊富な労働力 ②世界第3位の経済大国が目前に ③中間所得層の増加で消費市場が拡大 ④成長が期待されるインドの株式市場 ⑤国民の支持のもと改革を続けるモディ政権 ⑥高い教育水準と優秀な人材-など、さまざまな特徴がある。
◆「人口ボーナス期」、経済成長が加速
-インドの人口は
秋澤氏 約14億2860万人(国連の推計値、2023年半ば)で、中国を抜いて世界一になった。平均年齢は約27.9歳(同、2022年の中央値)と若く、熱気と活気にあふれる国だ。
インドはこれから「人口ボーナス期」を迎える。これは、生産年齢人口(15~64歳)が高齢者や子どもの人口の2倍以上になる期間で、豊富な労働力を背景に経済成長が加速しやすい。生産人口が占める割合は2032年にピークとなり、人口ボーナス期は2051年ごろまで続くと言われている。
モディ首相は、海外からの直接投資を呼び込み、製造業を強化する政策を打ち出している。また、企業が活動しやすい環境整備も進めてきた。こうした政策が奏功すれば、雇用が生まれ、失業問題などの社会的課題が緩和されていくだろう。
◆内需主導、世界3位の経済大国に
-経済成長の見通しは。
秋澤氏 インドは、2027年には世界第3位の経済大国になると予想されている。かつて世界の国々が日本や中国に注目し、人、モノ、カネを投じてきたが、今それがインドで起きている。
インドの名目GDP(国内総生産)は、国内消費が約6割を占めている。国内消費が腰折れしない限り、インド経済は内需主導で中期的に高い成長を維持するだろう。
◆中間所得層、消費市場が拡大
-平均的なインド人の生活水準は。
秋澤氏 1人当たり名目GDPで見ると、インドの生活水準はまだまだ低く、成長の余地は大きい。消費市場は経済規模に比例して拡大するので、今後10~20年にわたってインドの消費市場は高い伸びが期待される。
国際通貨基金(IMF)がまとめたインドの「所得階層別の構成推移」を見ると、賃金水準の上昇を背景に、購買力の高い中間所得層の割合が拡大していく見通しだ。2020年には全体の50%程度を占めていたが、2030~40年には、高所得層や中間所得層が全体の8~9割を占めるまでに拡大するだろう。
◆株式市場、二桁台前半の上昇ポテンシャル
-インドの株式市場は。
秋澤氏 インド企業の業績拡大に伴い、株価も中長期的に上昇することが期待される。インド企業の稼ぐ力も高まっており、一株当たり純利益(EPS)も増加するだろう。
株式市場は中期的に、名目GDPと同程度の伸びを示すと言われている。インドの実質GDPは、年率6~7%で拡大してきた。インフレの影響を加味した名目GDPは十数%で伸びている。世界的にインフレ環境にあり、今後もインドの名目GDPは二桁台前半の伸びが予想されており、株式市場もこうしたペースで拡大するポテンシャルがある。
◆モディ政権3期目へ、投資を呼び込む
-モディ政権の状況は
秋澤氏 モディ政権は現在、2期目の終盤で、4~5月に総選挙が予定されている。直近の世論調査では、与党BJP(インド人民党)が単独過半数を獲得し、モディ首相が再選されると見られている。任期が5年なので、2029年まで3期目が続くことになる。
1期目のモディ政権は、「メイク・イン・インディア」を掲げ、海外からの直接投資を誘致し、複雑な税制を簡素化して投資をしやすくした。2期目は「自立したインド」を掲げ、新型コロナウィルスの感染拡大で落ち込んだ経済の回復に努め、インフラ投資の拡大に取り組んだ。3期目は、土地や労働分野の改革を行うと言われている。
◆「頭脳立国」、優秀なエンジニアを供給
-教育の状況は。
秋澤氏 インドは英国からの独立以降、「頭脳立国」を目指して、大学を各地に整備し、理工系の優秀な人材の育成に力を入れてきた。毎年、数百万人単位でエンジニアやその候補生を供給しており、IT産業の成長の原動力になっている。
また、英語が準公用語になっているため、海外企業がインド市場に参入し、取引するハードルが極めて低い。
◆貧富の差やインフラ整備など
-インドの社会的な課題は。
秋澤氏 貧富の差やインフラの未整備が指摘されている。また、国内紛争や、パキスタン、中国など、周辺国との国際関係も課題だ。
コロナ禍で経済活動が停滞したことで、失業問題が増加し、所得格差が拡大していると言われている。一方で、これまで政府は、食料の配給、住宅の整備、飲料水の確保、農家を対象とした作物保険などを実施してきた。インフラ関連ではネットバンキング等を整備している。また、貧困層を対象にした教育機会の提供や、公共的な仕事の割り当てに取り組んでいる。
◆オーナー企業に厳選投資
-東京海上AMが運用するインド株式のファンドは。
秋澤氏 当社は2020年4月に「東京海上・インド・オーナーズ株式オープン」を設定した。名前の通り、インドのオーナー企業、つまり「経営者が実質的に主要な株主である企業」を投資対象とするファンドだ。当ファンドにおけるオーナー企業とは、創業者あるいは創業家が10%以上の株式を保有し、さらに、経営に携わっている企業だ。
当ファンドの強みは、投資対象をオーナー企業に特化している点だ。オーナー企業の経営者は、経営に携わる期間が長く、その企業を存続させ、次の世代に引き継ぐことに重きを置いている。短期的な業績の浮き沈みよりも、「より中長期的の視点に立って、会社を拡大させていけるか」という点に、焦点を当てた経営を行っている。
インドの上場企業は約5000銘柄あるが、当ファンドは35~40銘柄に厳選し、高い成長ポテンシャルを持つと分析した企業のみで、ポートフォリオを構築している。
-運用パフォーマンスは
秋澤氏 2月14日時点の基準価額(税引前分配金再投資)は2万9202円と、前年同日比で約1.5倍に上昇、純資産総額は36億7300万円と同2.6倍になっている。
2023年の上昇率は年率35.4%(税引き前分配金再投資)と、インド市場全体の値動きを示す「MSCIインド指数(配当込み)」の上昇率(円換算ベース)の同29.4%を上回った。
-投資家へのアドバイスは。
秋澤氏 株式ファンドなので、短期的にパフォーマンスが悪化することは当然ある。安定して毎年10%上昇するという金融商品ではない。ただ、インドの株式市場はまだまだ高い成長ポテンシャルを持った市場だ。長い目で見れば、インドの名目GDPの拡大に沿った成長が期待できると見ている。
そうしたインド市場の中で、当ファンドはオーナー企業に着目し、「経営者を信頼して長期に保有できる株式」に厳選投資している。投資家の皆さまにも、このファンドを安心して長期保有していただきたい。
新NISAは、長期の資産形成を目的とした制度だ。インド株式市場は、5年、10年という長期のタイムスパンで伸びていく市場であり。当ファンドは新NISAで保有する選択肢の一つになると考えている。