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新しい投信格付けを提供へ=金・銀・銅で「超過収益の確信度」を表示-モーニングスターの元利氏

2023年11月10日 12時00分

元利大輔氏

 米国の独立系投資調査会社モーニングスターは、日本での新たな事業展開に向けて準備を進めている。長期的なアルファ(超過収益)獲得の確信度をアナリストが推計し、金・銀・銅で表示する最新の投信格付け「モーニングスター・メダリスト・レーティング(以下、メダリスト・レーティング)」を追加するなどして、投資家の資産運用をサポートする。マネジャーリサーチ部長に就任した元利大輔氏に話を聞いた。

◆リサーチ体制を整備、グローバルに連携

-日本でのサービス展開は。

元利氏 これまでイボットソン・アソシエイツ・ジャパンは、米国モーニングスターの子会社として日本事業を展開してきた。今年3月30日にはSBIにおけるモーニングスターのブランド使用権が終了しており、また2024年の年明けから新たに運営を始める子会社の「モーニングスター・ジャパン株式会社」としても、より緊密に米国モーニングスターと連携し、日本事業を展開していく。

 ファンドを分析・評価するマネジャーリサーチ部門は、初年度(2024年度)に40~50の運用戦略をカバーする方針だ。その後、カバレッジを拡大し、最終的に4人のアナリストで100前後の運用戦略をカバーする。モーニングスターは、グローバルに100人程度のアナリストを擁しており、3000前後の運用戦略をカバーしている。この中には、日本の公募投信に採用されている運用戦略もあるので、こうしたグローバルなデータも活用していく。

◆新たなレーティングを提供

-ファンド格付けの提供は。

評価軸スコアからレーティングの導出評価軸スコアからレーティングの導出(クリックで表示)


元利氏 当社は、過去の運用実績を基づいて優秀なファンドを最大五つ星「★★★★★」で評価する「モーニングスター・レーティング」を提供してきた。これに加えて、費用控除後のアルファが同じカテゴリのベンチマークを長期的に上回ると考えるファンドを評価する「メダリスト・レーティング」も提供していく方針だ。

 このレーティングは、ファンドを金(ゴールド)、銀(シルバー)、銅(ブロンズ)、中立(ニュートラル)、下位(ネガティブ)の5段階で評価する。アクティブ運用のファンドの場合、手数料とリスクを考慮した上で、「カテゴリごとの指数と比較してプラスのアルファが長期的にわたって見込まれるファンド」に、金・銀・銅を付与する。中立と下位は「ゼロまたはマイナスのアルファ」が推計されるファンドだ。

◆評価軸は3P(People Process Parent)

-新レーティングの考え方は。

元利氏 「メダリスト・レーティング」は、将来的な見通しを提供することで、投資家が良いファンドを選択できるようにすることを目指している。

 分析に当たって、三つ評価軸「3P」を設定している。具体的には「People(運用担当者)」「Process(運用プロセス)」「Parent(運用会社)」だ。ファンドマネジャーや運用チームはどうなっているか。投資哲学が一貫したもので、再現性は高いか。運用会社の投資カルチャーや法令順守の取り組みはどうか-、などを見ていく。アナリストは「3P」について確信度を5段階で評価し、メダリスト・レーティングに反映させる。

◆ホームページでの公開を検討

-一般投資家にレーティングを提供する方法は。

ファンド評価の3つの評価軸ファンド評価の3つの評価軸(クリックで表示)


元利氏 一般投資家が閲覧できるウェブサイトで無料公開することを検討している。また、販売会社や運用会社のホームページでも、第三者の客観的な評価として、当社のレーティングが掲載されるのではないか。

 「モーニングスター・レーティング」は、同じカテゴリ内で過去のパフォーマンスを客観的に比較したものだ。一方、「メダリスト・レーティング」は、将来を見通した評価だ。この二つを組み合わせることで、過去の運用成績が優れたファンドをある程度絞り込んだ上で、将来のアルファへの確信度を加えて、投資するファンドを選定できるだろう。

◆投資家の成功を手助けする

-「資産所得倍増プラン」への期待は。

元利氏 少額投資非課税制度(NISA)が2014年1月スタートしてから10年が経過しようとしており、「貯蓄から投資へ」と国民の行動が変化しつつある。来年1月には、制度が大幅に拡充された新しいNISAが始まる。日本の資産運用業界の発展に貢献できるように、日本での事業展開を拡充していく。当社のグローバルなミッションである「Empowering investor success(投資家の成功を手助けする)」の実現に向けて、取り組んでいきたい。

 

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