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〔マーケット〕日本経済、良い意味でインフレと金利上昇へ-日興アセット・神山氏

2023年10月18日 08時00分

神山直樹チーフ・ストラテジスト

 日興アセットマネジメントは、四半期ごとにまとめる経済見通し「グローバル・フォーサイト」の2023年秋号をまとめた。神山直樹チーフ・ストラテジストは、日本経済について、「人手不足で賃金が上昇し、投資が増えてお金が必要になる。良い意味でのインフレと、良い意味での金利上昇の可能性が高くなってきた」と指摘した。

■中東情勢

 中東情勢が緊迫しているが、現状で予想される範囲の中であれば、世界経済に与える影響は小さいだろう。石油価格への影響は、心理的なものにとどまっている。産油国の石油生産やタンカーの航行に影響が出るという状況ではない。冷静に様子を見ていくことが大切だろう。

■米国経済

 10月から来年3月までの米国の経済成長率は、前期比0.7%増に減速すると予想している。小売売上高の伸び率は低下しており、インフレが加速する「芽」はほとんど見えない。一方で、失業率が上昇して景気後退に陥る様子も見られない。米国の輸入額は、ほぼ横ばいだろう。

■日本経済

 日本の実質輸出は、高水準のまま横ばいで推移すると予想している。その水準はリーマン・ショック前を抜いているので、設備不足が継続するだろう。また、人手不足で賃金が上昇し、投資が増えてお金が必要になる。良い意味でのインフレと、良い意味での金利上昇の可能性が高くなってきた。

 内需に関しても、コロナ禍からの回復で人手不足は明らかだ。企業は、売上高が伸びる中で、賃金を上げてでも人を雇い、設備投資で効率を高めたいと考えるだろう。日本経済は、内発的に自分自身を成長させるメカニズムが、動き出している。企業がこうした変化に正しく対応していけば、正常な経済に戻っていくことが期待される。

■米国の金融政策

 9月の米国の雇用統計は、賃金上昇率が前年同月比4.2%と緩やかな低下にとどまった。2%のインフレ目標を達成するには、賃金上昇率を3%程度に低下させることが必要だろう。

 当社はこれまで、米国の金融政策について、年内の利上げはないとみていたが、米連邦準備制度理事会(FRB)は10-12月に0.25%の引き上げを行うとする見通しに変更した。これをピークとして、来年7-9月に利下げに転じると予想している。

■日本の金融政策

 日本の金融政策は、賃金の上昇を受けて、緩やかに変更されるだろう。来年4-6月には短期金利がマイナスから0%に変更されると予想している。長期金利は、来年6月に1%程度(現在は0.75%程度)に上昇するだろう。

 10月下旬に連合の春闘の要求が明らかになり、来年1-3月には春闘の結果が出てくる。来年の日本経済は、実際に賃金が上昇し、それが継続すると自信が持てる状況になると予想している。

 来年9月末の日経平均株価は、3万5000円~3万6000円と予想している。また、円相場は1ドル=140円と、緩やかな円高になると見ている。

■新NISA

 「少額投資非課税制度(NISA)で、何に投資したらいいか」と聞かれることがあるが、NISAだからと言って、変わることはない。

 最初に、その人の投資の目的を決めることが大切だ。資金使途やリスク許容度に合わせて、お客さまが「何に投資をするか」を選択する。例えば、将来の旅行のためのお金、孫にあげるお小遣いのためのお金と、老後の医療費のお金では、取れるリスクが違う。

 NISAは運用益に税金が掛からない制度なので、もし生涯投資枠(1800万円)を超えるような資金の運用を考えているならば、期待リターンの大きな商品からNISA枠を利用した方が効率的だろう。

 

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