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日本株式、長期上昇トレンド継続=賃上げ、企業改革、業績改善を材料に-三井住友DSアセットマネジメントの市川氏

2023年09月29日 08時00分

市川雅浩チーフマーケットストラテジスト

 三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩チーフマーケットストラテジストは「2023年度後半の日本株展望~上昇基調は終了か継続か~」をテーマに記者勉強会を開いた。この中で、日本株式の見通しについて、①賃上げの継続 ②企業改革の進展 ③企業業績の改善-を材料に「長期上昇トレンドは、継続中だ」と指摘した。

◆賃上げ率、来年も3%程度の上昇見込む

-賃金の見通しは。

市川氏 連合のまとめによると、今年の賃上げ率は3.58%と30年ぶりの高水準だった。来年については、3月の春闘集中回答を見極めることが必要だが、当社は3%程度の賃上げが継続すると予想している。

 賃上げにより個人消費が増えれば、国内総生産(GDP)が上昇し、株価を押し上げられるだろう。また、利益の増加で企業が設備投資を拡大し、物価上昇で日本経済がデフレから脱却すれば、株価上昇の流れにつながる。さらに、来年1月には新しい少額投資非課税制度(NISA)がスタートするので、日本株式にも新たな資金流入し、株価のプラスの材料になるだろう。

◆企業改革、すばやい対応

-企業改革の動向は。

市川氏 東証のまとめによると、7月の時点でプライム市場では31%の企業が、スタンダード市場でも14%の企業が、「資本コストや株価を意識した経営」の実現に向けて、具体的な取り組みを開示したり、検討中と記載したりしている。東証の要請が3月末だったことを考えると、企業の対応はかなり早かった。今後も、こうした開示の動きが広がっていけば、海外投資家の「見直し買い」が続く可能性は高い。

◆業績は上昇修正を予想

(出所)三井住友DSアセットマネジメント(出所)三井住友DSアセットマネジメント


-企業業績の見通しは。

市川氏 今3月期の業績予想について企業は慎重な見方をしており、東証平均株価(TOPIX)構成銘柄では、小幅の減益予想となっている。今後、9月中間決算などで、企業がどの程度、業績予想を上方修正するかに注目している。当社は、主要約400社の経常利益について、前年度比8.3%増と予想している。

◆日銀の金融政策、来年3月の春闘集中回答に注目

-日銀の金融政策は。

市川氏 日銀は、当面政策を据え置くと予想している。ただ、来年3月の春闘の集中回答を見て、「物価安定の目標」の実現が見通せると判断すれば、政策修正へかじを切る可能性が出てくる。ただ、円相場が1ドル=155円を超えて下落すれば、政策修正を急ぐ可能性がある。

 政策修正の手順については、まずはイールドカーブ・コンロール(YCC)の撤廃だ。ただ、金利急騰の可能性もあるため、枠組み自体を残すこともあるだろう。一方、マイナス金利の修正はそれ以上にハードルが高いが、「『物価安定の目標』を実現できる」と判断すれば、解除に向かうだろう。

◆米国景気はソフトランディング

-米国経済の見通しは。

市川氏 米国経済は減速するが、大きな冷え込みは回避すると見ている。失業率は悪化して4%程度に上昇するが、深刻なものにはならないだろう。消費者物価指数は、粘着的な状況が続き、2%台に落ち着くのは来年10―12月期になると見ている。

 こうした状況から、米連邦準備制度理事会(FRB)が、早期に利下げを行うことは難しいだろう。年内に0.25%の追加利上げを実施した後、景気減速とインフレ鈍化の基調がもう少し明確になるまで、2024年中の利下げ判断は見送られると見ている。

◆中国の不動産問題、世界に広がる恐れは小さい

-中国経済の状況は。

市川氏 中国で不動産市場が低迷しているが、これは中国国内の問題であり、当局が強力な市場管理能力で、課題に対処すると予想している。日本の対中輸出は8月まで9カ月連続で減少しているが、米国や欧州向けの輸出が伸びていることから、日本経済への影響は限定的と見ている。このため、中国景気の低迷の影響が、貿易や金融取引を通じて世界に広がる恐れは小さいだろう。

◆日経平均株、長期上昇トレンドが継続

-マーケットの見通しは。

市川氏 日経平均株価の見通しだが、当社のハウスビューは、12月末で3万5600円、来年6月末で3万9800円と予想している。ただ、バブル期最高値(3万8915円87銭)の更新については、長期トレンドベースで見ると、3年から5年の時間を要するかもしれない。一方、年末の円相場の予想は1ドル=148円、来年6月末は同146円と見ている。

 

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