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高まるインフレの持続性=今年度は2.9%上昇を予想-大和総研の神田氏

2023年08月30日 13時30分

大和総研経済調査部シニアエコノミストの神田慶司氏

 総務省が発表した7月の全国消費者物価指数(2020年=100)は、価格変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が前年同月比3.1%上昇した。食料などを中心に高い伸びが続いており、23カ月連続で上昇している。この先、インフレはどうなるか。大和総研経済調査部シニアエコノミストの神田慶司氏に話を聞いた。

-インフレの見通しは

神田氏 大和総研では8月21日時点の消費者物価指数の見通しについて、生鮮食品を除く総合指数で、2023年度は前年度比2.9%上昇、24年度は同1.8%上昇と予想している。ただ、不確実性は大きく、場合によってはもっと上振れる可能性もある。以前は「ゼロ・インフレに戻るのではないか」という見方もあったが、その可能性は低下してきた。

-インフレの背景は

神田氏 約40年ぶりの高インフレに直面して、家計や企業の行動が変化し始めた。また、労働需給がかなり逼迫しており、賃上げが進んでいる。コロナ禍からの経済正常化で、今後も労働需要の回復が見込まれる。

 一方、家計貯蓄がコロナ禍前より増えていることから、家計は物価高で苦しいものの、消費は腰折れしにくく、企業は価格転嫁を進めやすい。政府も、価格転嫁の促進策を実施しており、企業は賃上げを実施しても価格に転嫁できるので、「賃金と物価の好循環」が生まれやすくなっている。

-来年の春闘と物価への影響は

神田氏 今後の物価を予想する上で、来年の春闘が重要な意味を持つ。連合のまとめによると、今年の春闘の定昇込み賃上げ率は、3.58%だった。来年についは、景気が回復していくと予想されること加えて、社員を引き留めるための防衛的な賃上げが広がっている可能性があるため、場合によっては3%台後半に乗せる可能性もあると見ている。

 大和総研は、賃上げと物価への影響を試算した。春闘の賃上げ率が、来年以降も4%近い水準を維持できれば、日銀が掲げる物価安定目標(消費者物価の前年比上昇率で2%)が定着する可能性も見えてくると思われる。

 

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