ウォール・ストリート・ジャーナル
コモディティコンテンツ

マーケットニュース

東京海上AM、「インフレ対策」を軸にファンド提供=新NISAの成長投資枠で-投信本部長の江面氏に聞く

2023年08月31日 08時30分

江面幸浩氏

 東京海上アセットマネジメントは、「インフレ対策」を軸に、来年1月にスタートする新しい少額投資非課税制度(NISA)の商品ラインアップ作りを進めている。インフレに強いアセットクラスとして「米国短期国債」と「海外の公益・インフラ株」に注目し、債券型と株式型、バランス型のファンドの3本をラインアップに組み入れた。同社執行役員で投信本部長の江面幸浩氏に、商品選定の考え方やファンドの特徴を聞いた。

◆インフレに打ち勝つ

-ラインアップの考え方は

江面氏 新NISAのスタートで、多くの人が投資を始めることが期待される。ただ、投資初心者のお客さまにとって、「投資の目的」を明確にして、その目標に向かって「何に投資すれば、どれくらいお金が増えるか」を具体的にイメージすることは、とても難しいことだろう。

 当社は、「インフレに打ち勝つこと」を目的に掲げ、インフレ率を上回るリターンの獲得を目指すファンドを、新NISAのお客さまに提供したいと考えている。こうした考え方は、投資初心者のお客さまにも分かりやすく、賛同を得やすいのではないか。

 例えば、年率2%のリターンを目標に運用を始めても、インフレ率が3%、4%と上昇していけば、運用の意味が薄くなってしまう。インフレ率が上昇しても、それを超える運用を目指すという運用方針は、お客さまの資産運用の目的に合致したものになるだろう。リスク水準の異なる3本のファンドを用意した。

◆米国の短期国債に投資

-具体的な商品は

江面氏 1本目は、海外債券型の「東京海上・米国短期国債ファンド(年1回決算型)(愛称:コメタン)」だ。主に償還期間が3カ月以内の米国短期国債に投資する。短期国債の金利は、米国の政策金利にほぼ連動して動くため、連邦準備制度理事会(FRB)の利上げにより、このファンドの最終利回り(複利)は年率5%程度に上昇するなど、魅力的な水準となっている。

 債券は、残存期間が長いものほど金利変動の影響を受けやすい。ところが、このファンドは残存3カ月以内の短期国債に投資するので、金利変動の影響を受けにくく、相対的に価格変動も小さい。また、米国国債の信用格付は、例えば大手格付会社のムーディーズ社であれば最上級の「Aaa」なので、高い信用力を誇っている。注意しなければいけない点は、為替ヘッジを行わないので、円高が進めば基準価額の低下要因になることだ。

 このファンドは、米国金利の上昇時にも強みを発揮する。残存期間が3カ月以内の国債に投資することから、保有債券は次々と償還し、より高い利回りの新しい短期国債に投資することが可能になるためだ。米国のインフレがさらに進んでも、それを超えるリターンの実現が期待される仕組みになっている。

 分かりやすい商品なので、新NISAで投資を始める初心者の方にも適したファンドだと考えている。購入に当たっては、為替リスクがあることを十分に理解した上で、海外に分散投資する商品として、資産の一部として保有するのが良いだろう。

 このファンドのライバルは、外貨預金や外貨建てMMFだが、これらの商品は金利収入が課税対象になる。また、ドルを購入する際に、別途、為替手数料が必要だ。一方、このファンドはNISAで購入すれば、運用益が非課税になる。円で投資できる点もメリットだ。

◆海外の公益・インフラ株に投資

江面氏 2本目は、海外株式型の「東京海上・世界モノポリー戦略株式ファンド(年1回決算型)」だ。このファンドは、日本を除く世界の上場企業の中から、水道、電力、鉄道など、希少性が高い公益・インフラ関連企業の株式に投資する。高い参入障壁などにより、一定の地域においてモノ・サービス等を独占・寡占していると判断される企業の中から、持続可能な競争優位性を持つ企業を選別する。こうした企業は、高い価格決定力を持っており、物価上昇率程度の値上げが規制や契約等で認められている企業も多いことから、インフレ率を上回るリターンが期待される。

 初めて株式ファンドを購入する方は、企業が倒産したり、株価が大きく下落したりすることを懸念するだろうと思う。このファンドは、私たちの生活に必要不可欠なサービスを担う企業に投資するので、倒産リスクが相対的に低いことから、安全志向の投資家に適しているファンドだと考える。とは言え、株式に投資するファンドであり、為替ヘッジを行わないので、価格変動リスクについて理解しておくことが必要だ。

◆インフレに強いアセットに分散投資

江面氏 3本目は、これまでに説明した米国短期国債と海外公益・インフラ株に加えて、物価連動国債や金(ゴールド)、日米の住宅REIT(不動産投信)といったインフレに強いアセットクラスに分散投資する「東京海上・物価対応バランスファンド(年1回決算型)(愛称:インフレ・ファイター)」だ。

 高インフレ期は、株価が下落したときに、債券も同時に値下がりしてしまう傾向がみられる。このため、株式と債券の値動きが打ち消し合って、ファンドの価格変動を抑制する従来の分散投資の効果が表れにくい。しかし、このファンドが投資する米国短期国債であれば、債券の中でも金利変動の影響を受けにくいため株価が下落したときに値上りすることが期待される。

 ほかの投資対象を見ても、金はインフレに強いアセットだ。また、住宅REITであれば、契約更新が1~2年の頻度で行われるので、インフレに応じて賃料が上昇しやすい。

 このファンドは、分散投資と為替ヘッジでリスクを抑制しつつ、インフレに対応することを目指すファンドだ。三つのファンドの中では、穏やかな値動きを予想している。

(出所)投資信託協会(出所)投資信託協会(クリックで表示)
 

 

ウォール・ストリート・ジャーナル
オペレーションF[フォース]