株主数でナンバーワンになりたい=新規上場のレオス・藤野氏が記者会見
2023年04月26日 10時30分
投信運用会社のレオス・キャピタルワークスが25日、東証グロース市場に新規上場した。初値は、公開価格(1300)を33%上回る1730円だった。終値は1699円で、時価総額は210億円だった。
同日、東証で記者会見した藤野英人会長兼社長CIO(最高投資責任者)は、今後の目標について「東証グロース市場の中で、株主数のナンバーワンになりたいという夢を持っている。多くの人に『ひふみ』のファンになっていただきたい」と述べた。主な発言は以下の通り。
-レオスとは。
藤野氏 社名の中に企業理念が含まれている。レオスは古代ギリシア語で「流れ」を意味する。キャピタルとワークスで「資本を働かせる」ということなので、資本を流し、働かせることで、世の中の役に立ちたいと考えている。
当社は、投資信託を提供する「投資信託委託業務」や「投資顧問業務」などを行っている。具体的な投資信託としては「ひふみ投信」「ひふみワールド」「ひふみらいと」などがあり、日本株式、世界株式、バランス型の商品を提供している。
レオスというと、一般には日本株や中型株のイメージが強いが、販売会社やマーケット関係者の間では、世界株のイメージが強くなっている。今、世界株に投資する「ひふみワールド」や「ひふみワールド+」が非常に伸びており、運用残高では、世界株式型の中でトップクラスになっている。レオスは、日本株式および世界株式の分野で、業界トップクラスのファンドを持っている会社と認識していただいていいと思う。
-上場の狙いは
藤野氏 岸田内閣が「資産所得倍増計画」を訴えている。さらに2024年からは新NISA(少額投資非課税制度)が登場してくる。これから「貯蓄から投資へ」の流れが進む、大きなチャンスが来ると考えている。
足元の経済環境を見ると、米国のシリコンバレー銀行の破綻など、金融機関が上場するタイミングとしては最悪だったが、それでも上場したのは、これから半年から1年、非常な楽しみがあるからだ。それは、私たちがやろうとしている「ファイナンシャル・インクルージョン(金融包摂)」、すなわち「多くの人に金融の魅力を伝える」ことを推進することだ。
私たちが実現したいのは、「普通の庶民が投資にアクセスする社会を作る」ことだ。当社が上場することによって、より多くのお客さまに株主になっていただき、その株主が私たちの会社を通じて、多くの投資信託に投資をしていただきたいと考えている。
-市場展望は。
藤野氏 日銀の「資金循環」によると、2022年3月末の日本の家計金融資産は2005兆円で、このうち投資信託は90兆円(全体の4.5%)だった。欧州(10.4%)や米国(12.6%)と比較するとその割合はるかに小さいが、日本には大きな「伸びしろ」がある。
岸田政権は「投資をもっと増やそう」「現金中心主義ではこれからの日本は乗り切れない」「多くの人に投資に目覚めてもらいたい」と考え始めている。私は、今後10年間で家計資産に占める投資信託の割合が、9%なり、10%に伸びていくと考えている。そうなれば、現在は90兆円の投信市場が2倍になる可能性がある。資産運用会社は日本の中でも数少ない成長産業だ。
-新NISAの期待は。
藤野氏 新NISAは画期的な制度だ。投資保有期間と非課税期間が両方とも無期限になる。また、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」を併用することで、最大投資可能額は1800万円に拡大される。これは、普通の個人からすると無限に近い大きさだ。
一方で、恐ろしいこともある。新NISAは、ひとつの口座しか開設できない。新NISAがスタートした後に資金の大移動が起こるのではないか。「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の両方に使い勝手の良い金融機関が選ばれる可能性がある。これは当社にとって、チャンスであると同時にピンチとなる要素もあると考えている。
NISAもiDeCo(個人型確定拠出年金)もこれまで大きく伸びてきたが、新NISAがスタートすることで、伸び率が激変し、若い世代を中心にさらに拡大していくだろう。
-事業内容と収益モデルは。
藤野氏 日本株に投資する「ひふみ投信」に加えて、世界株に投資する「ひふみワールド」が急速に伸びており、日本でトップクラスの規模になった。その結果、日本から投資してほしいと考える欧米やアジアの企業が、真っ先にレオスを訪問するようになった。世界の最先端の情報が集まる会社になっている。
私たちの強みは、59歳以下の現役世代の保有者が76.9%(22年3月末、ダイレクト口座のみ)を占めることだ。積み立て投資の割合も高く、68.9%(同)が利用している。数万円の資金を継続して積み立てている人が多い。
さらに私たちの強みは、「ひふみ」という強力なブランドを持っていることだ。「運用力」「発信力」「販売力」を結集して、ブランドの価値向上を目指していく。
運用力については、業種や企業規模にとらわれず、長期的な将来価値に対して割安と考える銘形に長期投資していく。発信力については、当社の提供するYouTubeチャンネル「お金のまなびば!」の登録人数が21.6万人と、金融機関のオンドメディアで最も大きな規模になっている。さらに販売力については、約123万人というお客さま数が強みだ。
また、当社のファンドを販売するパートナーの金融機関は96社と国内最大だ。今回、上場したことで、レオスに対する信頼が高まり、パートナーがさらに拡大することが期待される。
-今後の戦略は。
藤野氏 三つある。一つ目は「若い世代を中心に資産形成層を獲得する」ことだ。二つ目は「積み立て投資を拡大することで安定的に預かり資産を拡大する」ことだ。三つ目は「高い運用成績を維持していくこと」だ。この三つに注力することで成果を上げたい。
今後の成長シナリオだが、「市場リターン+アルファ」を実現し、「既存顧客のつみたて」「新規顧客のつみたて」「新商品の投入」により、安定的に成長することを考えている。
当社は、売上高成長率が15%以上で、営業利益率も40%近い数値だ。ROE(自己資本利益率)も30%弱ある。とても高成長で収益力の高い会社だ。かつ配当余力もある。まだまだ当社の魅力が伝わっていないところがあるので、多くの人に当社を見ていただきたい。
東証グロース市場の中で、株主数のナンバーワンになりたいという夢を持っている。多くの人に「ひふみ」のファンになっていただき、当社のファンドを保有してもらいたい。