プレシニア層、公的年金や退職金に不安=しかし投資未経験が半数-投資信託協会アンケート
2023年03月29日 10時30分
投資信託協会がまとめた「投資信託に関するアンケート調査」で、プレシニア層(50代)の意識や投資状況が浮かび上がった。シニア層(60代と70代)よりも「公的年金や退職金に不安感を持つ」一方で「投資の重要性を理解している割合は高い」。ただ、こうした認識が十分に行動に結びついておらず、「投資経験者の割合はシニア層よりも低い」ことが分かった。
調査は昨年10月下旬、全国の50~79歳の男女3000人に実施した。今回から調査対象にプレシニア層を加え、より幅広く老後に向けた資産形成の実態を把握できるようにした。
◆「自助の意識」が上昇
老後生活に向けた現状・意識に関する調査の中で、「老後の資産形成で重視する制度」を尋ねたところ、プレシニア層では「厚生年金」が43.8%とシニア層(60.2%)と比較して低かった。一方、プレシニア層では「つみたてNISA(少額投資非課税制度)」や「iDeCo(個人型確定拠出年金)」といった自助努力で資産形成する制度を上げる人の割合がシニア層を上回った。
◆「年金受給開始年齢」に不安
「生活・環境で不安に思っていること」の回答を見ると、「年金受給開始年齢の引き上げ」について不安に思っている人が、プレシニア層では33.3%と、シニア層(15.7%)を大きく上回っていた。また、「定年延長」が14.3%を占めており、退職時期の遅れを不安に思っている人もいるようだ。
◆「退職金」、カバレッジが低下
「退職金(一時金・企業年金)の有無」については、プレシニア層では「受け取った・受け取る予定」とする回答が33.4%にとどまった。シニア層では49.5%が「受け取った・受け取る予定」と回答しており、プレシニア層は、退職金の面でもシニア層に比べて厳しい環境にあるようだ。
◆「投資」は資産形成に役立つ
公助(公的年金)・共助(企業年金・退職金)に頼りにくくなる中で、重要になるのが自助による資産形成だ。調査の中で「資産形成における投資の役立ち度」を尋ねたところ、プレシニア層では40.7%が「役立つと思う」と回答し、シニア層(32.6%)を上回った。
◆プレシニア層、投資未経年者が半数
ただ、「投資経験の有無」については、プレシニア層では「現在投資を行っている」が38.1%、「過去に投資したことがある」が9.8%で、両者を合わせても47.9%と半数に満たなかった。シニア層では、合算値が60.0%だった。
◆「将来へ計画はない」
調査の中で「今後5年間の資産管理方針」を尋ねたところ、プレシニア層では「わからない・特に方針がない」が32.7%と、シニア層(25.7%)を上回った。
同協会では「将来の見通しが立てづらい、不安定な状況の中でも、自分自身の状況を客観的に把握し、目標を設定することで、将来に向けた自己実現や資産形成を図ることができると考えられる」と指摘。「プレシニア層の資産形成を促進するためには、中長期のライフプランニングの必要性とセットで投資を呼び掛けていくことが特に重要だ」とアドバイスしている。
◆資産寿命を伸ばす「資産活用」-シニア層
松谷博司会長は、今後の課題について「『シニア層』と『プレシニア層』を分けて考えることが必要だ」と指摘した。
「シニア層」については、それぞれのライフプランに合わせて、これまでに蓄えた資産を上手に運用しながら取り崩して資産寿命を伸ばす、「資産活用」について丁寧なアドバイスを提供することが重要だ。さらに高齢になり自身で資産管理することが難しくなった人には、それに応じたサポートが必要になる。
◆計画を立て今すぐ積立投資をスタート-プレシニア層
「プレシニア層」で老後資金がたまっていない人については、今すぐに資産形成に着手することが大切だ。生涯の中でも給与水準が高い時期になっていることから、しっかりとアドバイスを受けてライフプランを立て、目標金額に向けてコツコツと積立投資を継続するが重要になる。
◆団塊ジュニアを注視
松谷会長は、「団塊ジュニア世代(1971年~1974年生まれ)が50代を迎えている。公的年金を受給する65歳まで10~15年の期間がある。『まだ満足のいく資産形成が出来ていない』と回答した方も多いので、この人たちの動きを注視していきたい」と話した。