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AM-One、ESGの世界株ファンドを新設=「社会的価値」「温室ガス量」を数値で開示

2023年03月22日 08時30分

 アセットマネジメントOneは、持続的な社会に資する企業に投資する「シュローダー・サステナブル・世界株ファンド(限定為替ヘッジ/為替ヘッジなし)(愛称:ソーシャル・バリュー)」を設定した。英国のシュローダー社が実質的な運用を行い、独自の評価手法で「社会的価値」や「温室効果ガス排出量」を数値化して開示する。

 AM-Oneは、コーポレート・メッセージに「投資の力で未来をはぐくむ」を掲げ、環境・社会の重要な取組課題(マテリアリティ)を特定するとともに、これらの課題解決に向けて投資家の資金を呼び込むファンドの拡充を推進している。

 投資信託営業本部 投資信託営業企画グループ グループ長の安達星彦氏と、戦略運用本部 マルチマネジャー株式グループ ファンドマネジャーの中野高彰氏に話を聞いた。

◆財務諸表では補足できないサステナブルな成長可能性

ステークホルダーのイメージステークホルダーのイメージ(クリックで表示)


-このファンドの投資哲学は。

中野氏 このファンドは、世界中の「サステナブルな事業を有する企業」に投資する。サステナブルな事業とは、企業が、環境や社会、株主、従業員といった全てのステイクホルダーとの間に良い関係を築き、長期的な価値を生み出している事業のことだ。ステイクホルダーに対してインパクトを考慮しながら事業を行うことで、好調な業績を上げ、長期にわたって成長の恩恵を受ける可能性が高いと考える。

 ただ、こうした長期的な成長可能性は、企業の財務諸表の分析では補足しきれないことがあるし、株価に織り込まれていないことがある。このファンドは「サステナブルな観点を踏まえた企業の成長可能性」と「実際の株価」とのギャップを、パフォーマンスにつなげることを目指している。

◆「サステナビリティ評価フレームワーク」で定性評価

(出所)アセットマネジメントOne(出所)アセットマネジメントOne(クリックで表示)


-運用の特徴は。

中野氏 特徴は二つある。1点目は、持続的な成長が期待されるサステナブルな銘柄に厳選投資していることだ。約2000銘柄の候補から30~50銘柄に絞り込んでいる。

 選定プロセスでは、シュローダー社が独自に開発した「サステナビリティ評価フレームワーク」を使って、数値化できない要素を定性評価している。具体的には、「環境への配慮」「従業員、取引先、顧客に対する公平性」「良き企業市民」「最適な資本配分」の4項目で、分析している。

◆「SustainEX」で、社会的価値を可視化・数値化

(出所)アセットマネジメントOne(出所)アセットマネジメントOne(クリックで表示)


中野氏 2点目は、ESG投資において先進的な取り組みを行うシュローダー社が、このファンドの実質的は運用を行う点だ。シュローダー社は1998年に、いち早く専任担当者を置き、20年以上にわたってESG投資を実践してきた。例えば、ESGのインパクトを定量的に把握するツール「SustainEx(サステナEx)」は、企業の社会的価値を可視化し、財務的なコストに転換・計測するもので、運用プロセスに活用している。

◆エンゲージメントで、持続可能な成長を促進

-投資先企業との対話は。

(出所)アセットマネジメントOne(出所)アセットマネジメントOne(クリックで表示)


中野氏 このファンドは、長期投資家の立場からエンゲージメント(建設的な対話)を重視している。先ほど紹介した「サステナビリティ評価フレームワーク」を使って、相対的に評価の低い項目について、優先度を上げて重点的にエンゲージメントすることで、持続可能な企業成長を促進している。

◆「温室効果ガス」や「社会的価値」を数値で開示

-ディスクロージャーは。

中野氏 先進的なディスクロージャーを実施している。数値に基づいて参考指標と比較しながら、分かりやすく開示している点が特徴だ。

(出所)アセットマネジメントOne(出所)アセットマネジメントOne(クリックで表示)


 例えば、売上高100万米ドル当たりの温室効果ガス(GHG)排出量を見ると、このファンドが投資している銘柄は27.6トンと、参考指標(MSCI ACワールドインデックス)の2割程度にとどまっている。水の消費量も大幅に少ない。さらに人権や社会への取り組みについても「人権ポリシーを設定している企業の割合」や「取締役会に占める女性の割合」が、参考指標を上回っている。

 また、企業が実現した「社会的価値」についても、「SustainEx」を使って数値化している。それによると、このファンド全体では昨年11月末時点で、売上高対比で3.7%程度(約5.4億米ドル)の社会的価値を生み出しているという試算を示している。

◆SXを推進、持続可能な社会に貢献

-AM-Oneのサステナビリティの取り組みは。

(出所)アセットマネジメントOne、2023年2月6日 プレスリリース「AM-One サステナビリティへの取組み『シュローダー・サステナブル・世界株ファンド(限定為替ヘッジ/為替ヘッジなし)募集開始』」(出所)アセットマネジメントOne、2023年2月6日 プレスリリース「AM-One サステナビリティへの取組み『シュローダー・サステナブル・世界株ファンド(限定為替ヘッジ/為替ヘッジなし)募集開始』」(クリックで表示)


安達氏 当社は2021年1月にコーポレート・メッセージ「投資の力で未来をはぐくむ」を制定して以降、サステナビリティ運用体制の強化など、サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)を加速している。環境・社会の重要な取組課題(マテリアリティ)を特定し、「サステナブル投資方針」を策定してきた。

 今回の新ファンド「シュローダー・サステナブル・世界株ファンド」の設定は、サステナブルな商品・サービスの提供を通じて、持続可能な社会の実現とお客さまの未来に貢献する取り組みの一環だ。

◆「ESGリーダー」、エクセレントカンパニーに投資

 
(出所)アセットマネジメントOne、2022年10月31日 プレスリリース「AM-One サステナブル投資体系の構築とESG関連ネーミングルールについて』」(出所)アセットマネジメントOne、2022年10月31日 プレスリリース「AM-One サステナブル投資体系の構築とESG関連ネーミングルールについて』」(クリックで表示)


-このファンドが所属するカテゴリーは。

安達氏 サステナブル関連のファンドについては、「ESG関連ネーミングルール」を定め、「サステナブル投資体系」に整理した。新ファンドは、持続可能な社会に資するエクセレントカンパニーに投資する「ESGリーダー」のカテゴリーに属する。

◆持続可能な社会、投資収益拡大に不可欠

-持続可能な社会の実現へ、AM-Oneの考え方は。

安達氏 当社がお預かりしている資産運用残高は、昨年12月末時点で約60.7兆円と国内トップクラスだ。当社の投資行動が、社会に与える影響は小さくないと考える。また、持続可能な社会の実現は、お客さまの中長期的な投資収益の拡大に不可欠なものだ。

 こうした考えに基づいて、われわれが運用する全てのプロダクトに、お客さまのご意向を踏まえた上で「サステナブル投資方針」を順次適用していく方針だ。具体的には「投資の力で未来をはぐくむ5つのアクション」として、①ESGインデグレ―ション(運用プロセスにESG要素を統合する) ②ポジティブな社会的インパクト創出を目指す投資 ③持続可能な社会に向けたトランジション(移行)を後押しする投資 ④スチュワードシップ活動(エンゲージメント・議決権行使) ⑤エクスクルージョン(除外規定)-の5点だ。

◆アロケーションの「中核」を担うファンド

-新ファンドが想定する投資家は。

安達氏 このファンドは、パフォーマンスとサステナビリティを両立させる高い運用品質を持っている。このため、サステナビリティに高い意識をお持ちのお客さまはもちろんのこと、基本的にはあらゆるお客さまを投資家として想定できるファンドだ。

 グローバル株式のアロケーションの「中核」を担うファンドとして長期的に保有いただける商品であり、投資初心者の方にもご購入いただけると考えている。過去のパフォーマンスを見ると、株価下落時に価格耐性を示しており、中長期に安定した成長を目指すことが期待される。

 グロース(成長株)相場が続いてきたので、米国のハイテク株を多く組み入れたファンドを保有するお客さまが多いと思う。このファンドは、米国株の比率は4割程度で、欧州株の割合が高い。ポートフォリオに加えることで、投資先地域を分散することもできるだろう。

◆ESG、長期のリターンの源泉

-テーマ型とESGファンドとの違いは。

安達氏 このファンドは、サステナビリティ自体を「ビジネスの成長」と「利益の持続性」と定義している。その上で、サステナビリティの観点で企業を評価し、投資機会の獲得につなげることを目指すファンドだ。ESGを、長期の安定的なリターンの源泉ととらえて投資しているので、テーマ型には当たらないと考えている。

 

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