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「チャットGPT」、金融ガイダンスに強み=AIと人間が連携し初心者をサポート-400Fの中村CEO

2023年03月22日 08時00分

中村仁CEOCEO / 中村 仁

 お金に悩む人と専門家をマッチングする「オカネコ」を展開する400F(本社東京、中村仁CEO)は、人工知能(AI)による自動対話ソフト「チャットGPT」をテーマに勉強会を開催した。米国では一部の金融機関でサービスに実装する動きが出ており、日本でもさまざまな取り組みが始まっている。

 中村氏は、「チャットGPT」などのAIについて「人間よりも効果的に『金融ガイダンス』を行う力がある」と分析、「AIがガイダンスを行った後、必要に応じて人間がサポートして意思決定や行動を後押しするといった組み合わせが、金融サービスの未来像になるのではないか」と指摘した。主な内容は以下の通り。

■最新バージョンでは「画像」も可能に

-チャットGPTとは

松本康平CTOCTO / 松本 康平

 松本康平CTO チャットGPTは、米新興企業「オープンAI」が開発している大規模言語モデル(LLM)だ。ユーザーが質問文(プロンプト)を入力すると、AIが膨大なデータから回答文(コンプリーションョン)を生成し、返信してくれる。14日発表された最新バージョン(GPT-4)では、画像を質問文に組み込むことが可能になった。

 AIによる自動対話ソフトは、さまざまな新興企業が開発を進めている。その中でも「オープンAI」は、著名な起業家でプログラマーのサム・アルトマン氏が最高経営責任者で、実務家のイーロン・マスク氏が創設に関わるなど資金力が段違いに大きく、注目を集めている。

■正確性、情報保護、情報鮮度

-チャットGPTの課題は。

松本氏 代表的な課題として①情報の正確性 ②情報保護 ③情報の鮮度 ④バイアス ⑤著作権-などが指摘されている。特に「正しい答えが返ってこない」といった正確性の問題は良く話題になる。金融サービスなど正確性が求められる重要な内容については、「専門家に意見を求める」ように注記されたり、チャットGPT自身が回答文にこうした内容を盛り込んだりする。

 また、「情報の鮮度」については、チャットGPTが2021年ごろまでのデータで作られているため、22年、23年の話題は正確でない。例えば、英国の首相の名前を尋ねると、正しい答えが返ってこない。

■検索、教育、コニュニケーション

-チャットGPTなどの利用分野は

加々美文康CPOCPO / 加々美 文康

 加々美文康CPO 「検索」を変えるチャレンジが行われている。現在の検索は、大量の項目が列挙され、利用者自身が手間をかけて取捨選択しなければならない。しかし、チャットGPTを使えば、一つの簡素な回答文とその背景にある引用先一覧を脚注として得ることができる。

「教育」についても、AIがそれぞれの生徒に最適プログラムを提供することができるため、効果が大きいと言われている。このほか「AIとのコミュニケ―ションを楽しむ」という使われ方や、「セラピー」「コーチング」、絵画・音楽・文学・映像などの「創作活動」にも活用分野が広がっている。

■AIがアラート発信、案件を人間につなぐ

-米金融業界の実装事例は

加々美氏 バンク・オブ・アメリカは、AIチャットの「Erica」を提供している。自分の口座残高や前月の引き落とし額などを聞くと教えてくれるだけでなく、AI側から「今月の引き落としがおかしい」といったアラートを発信してくれる。さらに、AIが答えられないことや、住宅ローンやクレジットカードなどの商談に結び付く可能性があるものについて、AIが行員に連絡してお客さまを引き継ぐサービスを始める予定である。AIと人間が連携するサービスが、これからさまざまに登場してくるだろう。

■マス層へのアプローチが課題

-日本の現状と課題は。

村仁CEOCEO / 中村 仁


中村氏 私は、日本の現状とユーザーの課題を分析し、その解決策として「チャットGPT」が有効かどうか、見てきたい。

 日本の金融資産の保有状況を見ると、富裕層が保有している資産規模は全体としてはそれほど大きくなく、小口のマス層のお客さまが多くの資産を保有している。日本において「貯蓄から投資へ」を推進するには、マス層へのアプローチが重要になる。

 ただ、金融機関が対面で小口のマス層のお客さまにアプローチするのは、マンパワー的にもコスト的にも難しい。現状は、インターネットを使って自分で投資を始めることが求められている。ただ、お客さまがネットを使って知識を得て、決断し、実行することは難しく、結局、「貯蓄から投資へ」は十分に進んでいない。

 ネット証券の利便性が向上するなどネットの取引環境は整備されているものの、行動科学の観点から人の望ましい行動を後押しする「ナッジ」が十分に行われず、口座は開設しても、取引を始めることができないといった状況も生まれている。

■AIは最初のガイダンスに効果的

-課題の解決策はあるか。

中村氏 私は、この断絶を埋める方法の一つとして、「チャットGPT」等の活用があると考えている。

 多くのお客さまは、人間のアドバイザーに相談することに抵抗感を持っている。「自分の金融の知識が不足している」と感じ、「だまされるのではないか」との思いから、相談に踏み出せずにいる人が多いと見られる。また、「自分の資産の状況を把握しておらず、何を聞いていいか分からない」とする声も聞く。

 しかし、相談相手がAIであれば、「こんなことを聞いていいのかな」とためらっていたことを、気軽に聞けたり、個人情報に絡む話をできたりする可能性がある。また、「自分の状況が分からない」というお客さまには、AIが状況を分析してデータを提供することもできるだろう。それぞれのお客さまの知識度合いに応じて、適切な教育コンテンツを提供することも得意だ。AIによる自動対話サービスは、投資家に対する最初のガイダンスおいて、圧倒的に効果的だと考える。

 ただ、「チャットGPT」などAIによる自動対話ソフトについては、正確性や情報の鮮度の問題がある。また、法律的に最終的な決断を行う場面での利用は制限されるだろう。このため、お客さまが最終的な決断を行う場面では、人間に引き継ぐ仕組みが必要だと考える。

 AIが、初心者のお客さまにガイダンスを行い理解や関心が生まれたら、最終的な意思決定を行う段階では、人間がサポートするというスタイルが、金融サービスの未来像になると私は確信している。

■累計で30万人が利用、働く世代がメインユーザー

-オカネコの状況は

中村氏 当社は「お金の問題を出会いで解決する」をコーポレート・ミッションに掲げ、お金に悩む人と専門家をマッチングするプラットフォーム「オカネコ」を運営している。チャット等のテクノロジーを活用して専門家との出会いの場を創出し、お金の不安を解消してもらうことで、「やりたいことをやる決断」ができるように後押ししている。

 お客さまは「オカネコ」で約30問の質問に答えると、お金の健康診断を受けられる。また、チャットを通じて専門家からアドバイスがもらえる。さらに、お客さまが必要だと感じれば、対面での面談につなげることもできる。累計の利用者数は約30万人に達しており、20~40代の働く世代がメインユーザーになっている。

 

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