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<マーケット見通し>転換点を見極める年に=UBS SuMi TRUSTの青木氏

2022年12月13日 09時30分

青木大樹・日本におけるCIO(最高投資責任者)兼日本経済チーフエコノミスト

 富裕層向けにプライベートバンク事業等を展開するUBS SuMi TRUSTウェルス・マネジメントは、2023年の世界経済・市場展望を公表した。青木大樹・日本におけるCIO(最高投資責任者)兼日本経済チーフエコノミストは、市場の現状と見通しについて「今のマーケットは、1年先の経済を読みに行くような、速い動きになっている。来年は、転換点を見極めていく年になるだろう」と話した。主なポイントは以下の通り。

◆最も困難な年に

-2022年の振り返りは。

青木氏 今年は、四つ波が大きく金利を上げた。「グローバルな供給制約」「ウクライナ・ショック」「中国のロックダウン(都市閉鎖)」「米連邦準備制度理事会(FRB)のタカ派化」だ。例えば米国の2年金利は、年初の年率0.7%から同4.8%まで上昇した。

 今年は「株式と債券が同時に値下がりする」という非常に稀なマーケット状況になっている。過去100年間について、株式と債券を12カ月保有したリターンを月次で見ても、1%程度しか発生していない。2022年は、歴史上、最も困難な年の一つであった。

◆来年の焦点

-2023年の注目点は。

青木氏 来年は、転換点を見極める年になる。それに当たって、三つの焦点に注目している。

一つは「中央銀行がいつ『利下げ』に踏み切るか」だ。FRBは現在、連続して利上げを実施しているが、マーケットはその先に注目しており、「来年後半に『利下げ』があるのか」「どの程度の『利下げ幅』になるのか」が、重要なポイントになるだろう。

 二つ目は「再び景気が拡大するのはいつか」。三つ目は「転換点を遅らせるリスク要因は何か」だ。

◆インフレはピークアウトへ

-インフレの見通しは。

青木氏 「グローバルな供給制約」「ウクライナ・ショック」などの一時的なインフレ要因が剥落してくるので、しばらくはインフレの減速を感じやすくなるだろう。ただ、インフレを巡っては「人で不足による賃金状況」「これまでの財政政策による需要拡大」「生産拠点の米国回帰による投資拡大」など中長期のインフレ要因があるため、先行きについては慎重に見極める必要がある。

◆マイルド・リセッション

-米国経済の見通しは。

青木氏 米国経済は、来年半ばにかけて悪化すると見ている。これまでの急激な利上げにより、銀行は貸し出しを厳格化しており、米国経済は一時的にマイナス成長に陥る恐れがある。ただ、深刻な景気後退にならないと見ている。6%を超えるような失業率の上昇や、倒産の大幅な増加は避けられると見られるためだ。マイルド・リセッション(緩やかな景気後退)になるだろう。

 当社は、米国景気のボトムを来年7-9月期と予想している。ただ、足元の景気が強ければ、底打ちの時期が後ずれするので、来年10-12月期もナイナス成長が続く可能性もある。

◆来年後半の米利下げを予想

-FRBの動きは

青木氏 FRBは、インフレ率を上回る水準まで利上げを続けると予想しており、市場は来年5月までに5.0%程度までの利上げを織り込んでいる。そして、マーケットの注目点は「来年後半の利下げの有無」「利下げの幅」に移ってきている。

 当社は、これまで分析してきたように、米国のインフレ率がピークアウトし、来年半ばにかけて米国景気が鈍化してマイナス成長になると予想しており、これに対応するためFRBは来年後半に、利下げを行うと考えている。

◆過度の楽観に戒め

-リスク要因は。

青木氏 リスク要因については、ウクライナや台湾などの「地政学リスクの高まり」や、ゼロコロナ政策の長期化などの「中国経済政策」、欧米の中央銀行のバランスシート縮小などの「金融・財政政策」などが挙げられる。予想しえないタイミングで、予想しえないイベントが発生する可能性はある。

 過去を振り返ると、利上げの後に株価が上昇する局面で、ITバブル崩壊やリーマン・ショック、コロナ・ショックが起きている。利上げの後に、大きな楽観が広がりレバレッジが拡大したタイミングで、予想しえないイベントに直面すると、流動性が大きく逆回転を始めて、市場が暴落していることに注意しておくことが必要だろう。過度に楽観的になってはいけない。

◆円を取り巻く構造変化

-円相場の見通しは

青木氏 円相場は、「米国のインフレや利上げがピークアウトするだろう」という期待や、「ユーロ圏の先行きに対する楽観」「中国経済の回復期待」「日銀の政策修正の期待」などを材料に、一時期の1ドル=150円台の円安局面から、同135円程度に戻している。ただ、これから来年1-3月期にかけては、「ユーロ圏の楽観」や「中国の回復期待」が剥落し、一時的に1ドル=140円程度に下落することがあるかもしれない。

 来年の円相場は、米国の2年金利を2.5~5.0%と想定すると、1ドル=132~145円のレンジを考えている。中期的に見ると、「米中対立」や「世界の分断」といった構造変化により、円相場を取り巻く環境は大きく変化しつつあり、1ドル=100円といった円高に進むことはないだろう。

 

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