8月末の投信残高、0.7%増の162兆円=2カ月連続で増加-投信協会
2022年09月14日 16時00分
投資信託協会がまとめた8月末の公募投信残高は、前月比0.7%増の162兆1096億円となり、2カ月連続で増加した。国内の株価が上昇、海外株式型や内外株式型、資産複合型ファンド等に個人投資家の資金が流入した。設定から解約等を差し引いた資金増減額は3261億円の純資金流入となり、64カ月連続の流入超過と過去最長を更新した。
松谷博司会長は、個人投資家の資金流入が続いている理由について「一般の方々が、少しずつだが、長期の資産形成をコツコツ始めている。『資産形成とは、5年先、10年先、20年先を目指して、長い時間をかけてやっていくことだ』という考え方が、浸透してきたようだ」と指摘した。また、「目先の市況に振れることなく、むしろこうした(相場が下がった)局面は、投資信託で言えば同じ投資金額で口数が多く買えるといった理解も広がってきた」と述べた。
また、政府が年末に策定する「資産所得倍増プラン」に言及し、民間が取り組む課題について、「運用会社は長期投資に資する良い商品を作り、銀行や証券等の販売会社はお客さまに寄り添って、顧客本位のアドバイスを提供していくことが必要だろう」と指摘した。さらに、一般企業についても「多くの人が、会社で確定拠出年金や職場NISA(少額投資非課税制度)に触れる。人的資本を向上させ、従業員を大切にするためにも、企業が従業員の資産形成をサポートすることが大切だ」と指摘した。
主要国における個人金融資産の構成比率をみると、日本の場合、2005兆円の個人金融資産に占める投資信託の割合は4.5%だ。米国は115.5兆ドルのうちの12.6%、欧州は28.6兆ユーロのうちの10.4%になっている。これについて松谷会長は、「岸田政権が推進する『資産所得倍増計画』により、日本においても投資信託の割合が10%程度に上昇してもいいと思う。そうなれば、主に個人投資家が保有する公募株式投資(除くETF=上場投信=)の純資産総額は、現在の約86兆円から200兆円台に拡大するだろう」と分析した。
さらに、資産形成の意義について「投資したお金が、社会に貢献し、未来を創るという意識を持っていただくことも大切だろう」と指摘した。「投資というと、勝つ人がいて負ける人がいる『ゼロサムゲーム』だと考える人もいるが、私は、投資によって自分も社会も豊かになる『プラスサムゲーム』だと考えている」と述べた。
運用会社は、投資先企業とエンゲージメント(建設的な対話)を行い、企業価値を高める提案を行っている。松谷会長は「投資することで、未来社会が創られ、結果として資産形成も進むという『投資の本質』について、広く国民の理解が得られるようにしていきたい。また、『投資は、皆が日常生活の中で続けるもので、特別な人だけがやるものではない』ということが社会のコンセンサスになることが大切だ」と述べた。