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温室ガスゼロを日本の競争力にする=四つの将来シナリオで分析-三菱総研

2022年07月29日 09時00分

志田龍亮 政策・経済センター主席研究員

 三菱総合研究所は、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラル(CN)の実現に向け、四つの将来シナリオを設定して、日本経済や社会に与える影響を分析した。

 志田龍亮 政策・経済センター主席研究員は「CNの実現に向けたさまざまな課題をクリアできれば、それは新たな事業機会になる」と指摘、「産官学のステイクホルダーが一体となって、CNによる社会変化を日本の新たな産業競争力につなげることが求められている」と話している。

◆加速する脱炭素の動き

 温室効果ガス削減の動きが加速している。昨年10月に英国グラスゴーで開催された第26回気候変動枠組条約締結国会議(COP26)では、「産業革命以降の平均気温上昇を1.5度未満に抑える」とする従前の努力目標が、目指すべき共通のゴールとして事実上格上げされた。

 その後も、ロシアのウクライナ侵攻によりエネルギー安全保障が大きな問題になる中で、欧州委員会は2030年のエネルギーミックスに占める再エネルギー比率の目標を45%(従来は40%)に引き上げることを提案するなど、「脱炭素の動きは加速し、より強固になっている」(志田氏)という。

◆四つのシナリオ

日本において4つの将来シナリオを想定日本において4つの将来シナリオを想定

 今回の研究では、需要側の省エネなどの「行動変容」と、供給側の「技術革新(イノベーション)」に注目し、「シナリオ1 現状延長」「シナリオ2 需要削減」「シナリオ3 技術革新」「シナリオ4 行動変容と技術革新の)両輪達成」-という四つの将来シナリオを設定し、エネルギー需給構造や経済・雇用への影響を分析した。

 その結果、シナリオ4では、2022~2050年の平均で年率0.76%の1人当たりGDP成長率を確保しつつ、最終エネルギー消費量で2013年比54%減、温室効果ガス削減量で同90%減と最も高い成果を挙げる試算になった。志田氏は「行動変容と技術革新の相乗効果が、円滑なCN移行の鍵になる」と分析している。

◆領域横断的な取り組みが重要に

 日本はCNの実現に向けて、①産業構造において製造業の比率が高い ②火力発電の比率が高い ③国内に脱炭素エネルギーが乏しい ④再エネルギーを建設する適地が少ない ⑤大規模災害が多い-など、多くの課題を抱えている。ただ、「こうした課題をクリアすれば、それは新たな事業機会や競争力となり、他国のCN達成に貢献する道筋も考えられる」という。

志田氏は、「CNの対応は、旧来の業界・官庁の縦割りの範囲で収まるものではなく、領域横断的な取り組みが不可欠であり、課題を機会に換え、日本の新たな産業競争力にしていくことが重要だ」と強調している。


【ニュースリリース】2050年カーボンニュートラルの社会・経済への影響
https://www.mri.co.jp/knowledge/insight/20220704.html

 

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