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弱気相場にうろたえない=「ステイ・インベスト」-UBS SuMi TRUSTの青木氏

2022年07月07日 13時00分

青木大樹・日本地域CIO(最高投資責任者)兼日本担当経済担当チーフエコノミスト

 富裕層向けにプライベートバンク事業等を展開するUBS SuMi TRUSTウェルス・マネジメントは、「前例のない時を超えて」をテーマにメディアセミナーを開催した。青木大樹・日本地域CIO(最高投資責任者)兼日本担当経済担当チーフエコノミストは、弱気相場への対応について「まずは、うろたえない。ステイ・インベスト(投資を続けること)で、しっかりと(回復局面の)上昇相場を取ることが重要だ」と強調した。主なポイントは以下の通り。

◆米国経済

 米労務省が6月10日に発表した5月の消費者物価指数(CPI)は、前年同月比8.6%増と、市場の予想を上回った。原油高に伴うガソリン価格の高騰に加えて、家計に潤沢な貯蓄があり、高所得者が高付加価値・高価格の商品を購入していることが、インフレ率の加速・高止まりに寄与している可能性がある。

 米連邦準備制度理事会(FRB)は、一時的に景気を鈍化させてでも、中長期的に「企業の倒産⇒失業率の上昇⇒消費の低迷」といった負の連鎖が起こらないように、強い決意で利上げを行っている。

 米国のCPIは9月ころまで高止まりし、ピークアウトが明確となるのは10月以降になるだろう。来年初頭にはインフレや景気後退懸念が後退し、FRBが利上げを停止する条件が整うことで、マーケットも落ち着いてくるだろう。米国の成長率については、4~6月期に2四半期連続のマイナス成長になることもあり得るが、7-9月期にはプラス成長に戻ると見ている。

 ただ、原油相場や米国の雇用情勢には注意が必要だ。さまざまな不確実性やリスクがある中で、経済の先行きについて一つのシナリオに依存するべきではないだろう。ここまで説明してきた「ソフト・ランディング(軟着率)」がメイン・シナリオで、発生確率が4割と見ている。次いで、高所得者も消費を控えることで本格的に景気が後退する「スランプ(景気低迷)」が3割、エネルギー価格のさらなる高騰などからインフレと景気後退が同時に起きる「スタグフレーション」が2割と予想している。

◆弱気相場の対応

 実際に直面していると、弱気相場は長く感じる。毎日、乱高下する相場を見ていると、気持ちが疲弊してくるだろう。

 こうした時には、歴史を振り返り、相場を長期的な視点から見ることが大切だ。第2次大戦後の米国大型株について累積リターンをグラフにすると、弱気相場はまれに生じるが、比較的早く終わる。強気相場の方が期間は長く、累積リターンも大きい。

 だから、しっかりと「ステイ・インベスト(投資を継続)」し、回復局面の上昇相場のリターンを獲得する戦略が大切だ。今回の経済・マーケット環境は、オイルショックの時に近いと考えているが、その時も底打ちをしてからの相場の回復は早かった。底が見えない状況でも、投資を続けることが大切だ。

 お客さまには弱気相場の対応として、①うろたえない ②時間を稼ぐ ③ポートフォリオを管理する ④戦術的機会にする、の四つの方針をお話している。急にプランを変更したり、売買を行って一時的な損失を永続的な損失にしたりしてはいけない。

 まずは、マーケットが回復するまでに必要になる資金を確保する。その上で、中期的に相場の回復を見込んだ投資戦略を考える。ポートフォリオをリバランス(再配分)することや、リスク資産の手持ちを増やすことができるだろう。

 当社は日ごろから、時間軸の観点を取り入れて、ポートフォリオを三つの戦略に分けて管理することを、お客さまに提案している。3~5年の「流動性戦略」、5年後~生涯の「老後戦略」、次の世代まで見据えた「資産継承戦略」だ。弱気相場にも、こうした視点で対応することが重要となる。

米国大型株の前の強気相場のピークからの累積リターン米国大型株の前の強気相場のピークからの累積リターン(クリックで表示)
 

 

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