ファンドの運営・管理会社を設立=新興・外資の参入容易に、ガバナンス強化も=日本資産運用基盤
2022年07月04日 10時00分
日本資産運用基盤グループ(JAMP)は、ファンドの運営・管理業務を行う新会社「JAMPファンド・マネジメント」を設立した。新興・外資系の運用会社が、この会社と連携して、効率的に日本の投資信託ビジネスに参入できるようにする狙い。また、運営・管理会社が運用会社をモニタリングすることで、商品のガバナンスを強化する。
記者会見した大原啓一社長は「日本の投資家が、より幅広く高品質な投資信託を利用できるようにしたい」と抱負を述べた。主な内容は以下の通り。
-金融庁「プログレスレポート」の問題意識は。
大原氏 金融庁は、2020年から毎年、「資産運用高度化プログレスレポート」を公表し、運用会社が、顧客利益を最優先に、運用力を強化するための課題を分析している。この中で、プロダクトガバナンス上の問題として、運用方針と運用実態が乖離(かいり)しているファンドがあると指摘している。
-米欧の状況は。
大原氏 欧米の資産運用業界は、ファンドを運営・管理する「ファンド・マネジメント(FM)」と、実際に株や債券などのアセットに投資する「アセット・マネジメント(AM)」、資産総額(NAV)を計算する等の計理事務などを担う「アドミニストレータ―(AD)」が、それぞれ別会社として存在している。FMは、「AMが方針通りに運用しているか」を、外部の目でモニタリングしており、プロダクトガバナンスを担保する構造になっている。
-日本の状況と課題は。
大原氏 日本の運用会社は、FMとAM、ADの三つの機能を組み入れて、一つの会社として経営されている。全て同じ社内にあるため、FM部門がAM部門をモニタリングするという機能が、構造的に欧米に比べて弱い。
金融庁の「プログレスレポート」は、好事例として、大手運用会社が社内にプロダクトガバナンス委員会を設け、社外の有識者を中心メンバーにして「ファンドが方針通りに運用されているか」をチェックしている例を紹介している。ただ、全ての運用会社がこうした対応をしているわけではない。
-日本への新規参入の状況は。
大原氏 日本ではFMやADが独立した会社として存在しないため、新興や海外のAMが新規参入しにくい。日本でファンドを設定しようとすると、自前でFMやADを準備することが必要になり、大きなコストと手間がかかるためだ。
具体的に見ると、主にAM機能を提供して投資運用等を行う「日本投資顧問業協会」の会員は毎年10社以上増えているのに対して、AMとFMの両方の機能を使ってファンドを運営する「投資信託協会」の新規会員は毎年数社にとどまっている。
-新会社の設立の考え方は。
大原氏 当社は、日本にFMを立ち上げ、世界中から集まるAMと連携することで、日本市場への参入を容易にしたいと考えている。その結果、世界中から多くのAMが日本市場に集まり、健全な競争が生まれるだろう。また、FMがAMをモニタリングすることで、個人や機関投資家にプラダクトガバナンスの効いた高品質な商品を提供できると考えている。
-新会社の事業内容は。
大原氏 新会社の「JAMPファンド・マネジメント」は、パートナーとなるAMの投資運用能力を活用しながら、ファンドの設定・運営・管理を行う。
具体的には、①AMの運用能力や事業継続性などを事前調査する ②AMにファンドの運用を委託したり、そのAMが運用する外国籍投信にファンズオブファンズ形式で投資したりする ③運用方針を順守して運用業務しているか継続的にモニタリングする-。
-これからの活動は。
大原氏 新会社は、投資運用業者として活動することから、金融商品取引業の登録を行い、2023年春を目途に事業を開始する予定だ。