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〔マーケット見通し〕米国のインフレ、緩やかに沈静化-三菱UFJ国際投信の入村氏

2022年06月23日 09時00分

三菱UFJ国際投信の入村氏

 三菱UFJ国際投信は「足元の世界経済と金融市場の動向」をテーマに記者懇談会を開催した。戦略運用部経済調査室の入村隆秀室長は、米国のインフレについて「その軌道はスムーズでなく、時間もかかるが、来年にかけて緩やかに沈静化していくのではないか」と分析。米国経済の先行きについては「メインシナリオでは1%台後半のプラス成長を維持すると予想しているが、金融当局が予想以上に追い込まれた状況で利上げを加速せざるを得ないなど厳しい要素もあり、リセッション(景気後退)のリスクは高まりつつある」と述べた。

■インフレ

 新型コロナウィルスの感染拡大でサプライチェーン(供給網)が混乱し部品供給やサービス提供が不足していたが、経済活動の再開により急速に需要が高まったことで、インフレが加速した。さらに、ロシアのウクライナ侵攻によりエネルギーや穀物など一次産品価格が急騰したことも、インフレに拍車をかけた。

 ただ、エネルギーについては、経済制裁に加わっていないインドや中国がロシア産原油を購入し中東からの輸入を減らせば、世界的に供給元と調達先の組み替えが生じるものの、需給ギャップは縮小するだろう。部品やサービスの供給不足の解消には時間を要するものの、価格の上昇が供給側の事業再開を促すだろう。さらに米国の失業給付の上乗せは終了しており、足元の物価上昇が労働者の職場復帰を後押しするだろう。

■米国経済

 5月の米消費者物価指数は、前年同月比8.6%増と前月を上回った。米連邦準備制度理事会(FRB)は、6月の連邦公開市場委員会(FOMC)で0.75%の利上げを実施した。前回のFOMCで市場に対して0.5%の利上げを示唆していたので、直前の米国での報道でマーケットが大きく動いた。

 注目すべきことは、今後の利上げの軌道が大きく引き上げられたことだ。FOMC参加者の政策金利見通し(ドットチャート)の中央値は、今年末の予想が3.25~3.5%(従来は1.75~2.0%)に引き上げられた。一方、実質GDP成長率は、今年が前期比1.7%増(同2.8%増)に、来年が同1.7%増(同2.2%増)に、それぞれ下方修正された。

 当社は「FRBはこのドットチャートに沿って年末までに3.5%までの利上げを行う」と予想している。ただ、利上げの効果は時間差を置いて経済に効いてくるので、その後は効果を見極めるためにいったん様子見に入ると見ている。来年の米国の経済成長率は、FRBが示した同1.7%増を少し下回る水準まで鈍化するのではないか。

■中国経済

 世界銀行は、中国の成長率を2021-30年で年率5.1%増、31-40年で同4.1%増、41-50年で同3.0%増と予想している。人口の高齢化とともに成長率が鈍化すると見られるためだ。さらに中期的な構造問題として、過剰な設備と民間債務の問題を抱えている。

 22年の中国経済は、コロナ感染の最悪期を脱したものの、20年のような急回復は見込めないだろう。企業の設備投資や政府のインフラ投資が伸びるものの、不動産投資は軟調だ。輸出についても、世界経済が減速傾向にある上、市民生活が正常化する中で消費内容が物からサービスへ移っていき、製品の需要は鈍化するだろう。また米金利が上昇し人民元が弱含む中で、市場金利の引き下げは難しいと見られる。このため、今年の成長率は年率3.5%増にとどまり、政府目標の同5.5%増の達成は困難だろう。

 

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