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<マーケット見通し>日経平均、長期上昇トレンドを維持=三井住友DSアセット市川氏

2022年05月26日 13時00分

市川雅浩チーフマーケットストラテジスト

 三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩チーフマーケットストラテジストは、記者勉強会を開催し、日本経済と日本株式の展望について「景気後退を回避し、日経平均株価は長期上昇トレンドを維持するだろう」と述べた。また、年末の日経平均株価は3万0800円を、円相場は1ドル=131円を、それぞれ予想した。

 市川氏は、懸念材料になっている①ウクライナ情勢と金融市場 ②米金融引き締めとインフレの行方 ③中国のロックダウン(都市封鎖)の影響-の3点を分析した上で、日本経済とマーケットの見通しを語った。主な内容は以下の通り。

◆ウクライナ情勢と世界経済

 ロシアのウクライナ侵攻を受けて原油や小麦等の供給懸念が強まり、世界的にインフレが起こった。これに対して各国中央銀行は利上げを行い、世界経済の成長ペースが減速し、株式や債券マーケットは下落した。

 ただ、世界的な金融引き締めで需要が幅広く抑制されることから、6月から12月にかけて資源価格の上昇は一服するだろう。中央銀行による引き締めは微調整され、世界経済は持ち直すと見ている。さらに来年以降は資源の需給関係が均衡し、物価が安定水準に向かうことで、金融政策は中立水準に戻り、脱ロシアの経済が常態化するだろ。

◆米国経済

 米連邦準備制度理事会(FRB)は3月、ゼロ金利政策を解除し3年ぶりに0.25%の利上げを行った。また5月には、22年ぶりに0.5%の大幅引き締めを行った。

 今後は、6月と7月と9月に0.5%ずつ、11月と12月と来年3月に0.25%ずつ、利上げが実施されると予想している。強力な資金吸収策であるバランスシート縮小が6月から速いペースで行われるため、利上げ幅を0.75%にする必要はないだろう。

 米国経済の成長ペースは、利上げによって鈍化するが、景気後退に陥ることはないと見ている。4月の米消費者物価指数(CPI)の伸び率は、前年同月比8.3%上昇と8カ月ぶりに前月より縮小した。来年7-9月期以降、2%台に戻ると予想している。

◆中国経済

 中国の新型コロナウイルスの新規感染者数は、3月から急拡大したが、足元は落ち着いてきている。この間、ロックダウンを含む「ゼロコロナ政策」を実施したため、中国経済は大きなダメージを受けた。

 ただ政策当局は、景気重視のスタンスに舵(かじ)を切っており、市レベルでの全域封鎖が行われる可能性は低下した。感染爆発が長期化しないことを前提とすれば、中国経済は、追加緩和と財政政策により景気の腰折れを回避し、年後半には持ち直していくだろう。

◆日本経済

 総務省がまとめた4月の全国消費者物価指数の上昇率は、前年同月比で2%を超えた。原材料高を製品価格に転嫁する動きが続いているため、年内は高止まりしそうだ。

 ただ、黒田東彦日銀総裁は「(原料高を要因とする)コストプッシュの物価上昇には持続性がない」と発言しており、日銀の金融政策に変更はないだろう。日本経済は1-3月期にマイナス成長になったが、コロナ禍からの経済活動の再開や、夏の参院選後に予想される第2弾の経済対策の効果で、4-6月期から持ち直しの動きを見せるだろう。

◆日本株式

 日本株が米利上げを警戒する局面は、終了したと見てよいだろう。3月期決算企業は、今期業績について増収減益を予想している。ただ、かなり控えめな数値なので、先行きの不透明要因が解消されれば、上方修正の余地は大きい。1株当たり利益(EPS)や株価収益率(PER)が上昇すれば、日経平均株価は上昇に転じ、3万円の回復を目指す動きになるだろう。日経平均株価は、2012年10月から続く長期上昇トレンドを継続中だ。

◆円相場

 円相場は、米利上げによる日米金利差の拡大を背景に1ドル=130円台に下落した。ただドル高・円安の動きは、行き過ぎていると見ており、一服しそうだ。

 

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